8月22日の本邦債券市場ではJGB・日本国債を売る動きが強まり、一時的ではありますが長期金利は0.66%と9年7か月ぶりの水準まで上昇する相場となっています。
日銀が7月の金融政策決定会合において基本は緩和継続としながらも、長短金利を操作するイールドカーブコントロール・通称YCCの運用を柔軟化し指し値オペの水準引き上げを決め、最大1%までを許容する旨の発表をしてから初の金利上昇で、日銀がまた指値オペを実施することで金利を抑える動きにでることになるのかに大きな注目が集まります。
このYCCの柔軟化実施以来金利の上昇は初めての事態となりますが、指値オペの実施では必ずドル円が上昇することになるので本邦財務省が行おうとしている円買い為替介入とは完全に相反する動きとなるだけに、これをどう両立させていくのかは大きな問題になりそうです。
10年ものの日本国債の利回りは、先月日銀が金利操作のより柔軟な運用を決めてからというもの明らかに上昇圧力が高まっており、日銀の金融政策を背景に市場が長期金利の上昇の余地を探る中で、アメリカの長期金利が上昇したことが影響しているのは間違いなく、ある意味市場がJGBの適正な金利水準を日銀に催促する相場になっていることも窺われます。
本来YCCの運用変更だけでもドル円の円安は阻止できるもの
日銀は金利上昇は容認するがそれは利上げではないとわかりにくい説明をしていますが、過去10年以上でゼロ金利のもとで本邦から海外にでていき、その7割以上が米国の金融市場で運用されているとされている緩和マネー530超円超が日銀の政策変更、つまり利上げの実施によって日本国内に回帰することを非常に危惧してると言われています。
とくに2024年11月の大統領選挙までは日銀の政策変更を起因そして米国市場から大量の資金が国内にもどることのないようにすることを相当強力に日銀に要請しているのは事実のようで、これが日銀の政策変更説明を酷くわかりにくいものにしている原因となっているようです。
したがってこの日銀政策の微妙な変更がゼロ金利から利上げに向かう途上で行われているものであると市場に理解させることができるならば、本来は為替介入などしなくてもYCCの運用だけで円安を阻止、かつ適正な円高水準まで相場を押し戻すことができるはずです。
当面財務省による為替介入は並行して行われる見込み
ドル円は先週146円台中盤まで上昇した後に調整段階に入ったような動きを見せ、18日の金曜日のNYタイムでは瞬間ながら145円を割り込むような動きを示現しました。
週明け多くの市場参加者が上値は重くなると見てドル円の戻り売りに参加したようですが、実際にはショートがたまり過ぎ、次々と大きなストップをつける形で146.400円レベルまで上昇する展開となっています。
明けた東京タイムではさすがに上値を試す展開にはなっていませんが、海外時間、とりわけNYタイムに米債金利が再上昇ということになれば再度147円方向に上伸する可能性も高まっています。
今週のジャクソンホールにおけるパウエルFRB議長の発言次第ではさらなる上昇も考えられ、日本の金融当局は日銀の指値オペと財務省による実弾利用の為替介入と言う2つの手段をいかに使いこなしていくのかが非常に注目される時間帯です。
ドル円の上げも下げも本邦の金融当局がかかるという不自然ですが、そうした現実があるということはしっかり認識しておく必要がありそうです。
のろのろ運転のドル円の上昇では介入機会を逃し150円到達もありうる
ここのところのドル円相場を見ていると、NYタイムに米債金利が上昇しても東京タイムでは高止まりになってロンドン勢が出てくるころにはロングの荷もたれを引き起こし低下、しかしまたNYタイムになると金利上昇から上値を目指すという50銭程度で上昇しては押し戻されまた上値を試すという全く過熱感のない動きを延々繰り返し、価格水準が上昇しても過度な相場の変動という為替介入の大義名分が発揮できない状況が続いてます。
さすがに150円を超えれば有無を言わさず介入ということになるのかも知れませんが、下手をすればなにもできないまま150円に到達して月末を迎えると言った展開も想定しておきたい状況です。
この相場、本邦勢が見ていてもなかなか理解しにくいので海外勢にとってはさらに難解な状況に陥っていることが窺われますが、日本国債金利が上昇してもドル円が円高に振れないということを考えると、逆に仕掛け的な売買が登場する可能性もあり、ここからの取引は相当な注意が必要です。