先週のドル円は、週央にかけて約1か月ぶりの高値となる157.79円まで値を戻し、157円台を維持したまま週の取引を終えています。
ここ1か月介入の話題一色だった為替相場ですが、新たなステージにシフトしつつあります。
週明けは、関係者が金融政策の情報発言を禁じられるブラックアウト期間に突入する一方で、経済指標の発表が相次ぐため、結果次第でドル円は大きく動くことが予想されます。
中でも今週は、米ISM製造業景況指数(6月3日発表)、米JOLT雇用動態調査(6月4日)、米ISM非製造業景況指数(6月5日発表)、米雇用統計(6月7日)など重要な指標発表を控えており、これらが好結果となれば、ドル円は160円まで上値を試す可能性もありそうです。
特に雇用関連の指標が市場予想を上回る結果となれば、FRBによる利下げ開始時期は後ずれとなり、米金利が上昇するとともにドル円にも再度上昇圧力が加わることが予想されます。
日足のローソク足は、21日線、50日線、90日線、200日線の上を推移しており、一目均衡表では三役好転となっていますが、日柄的には1か月近く膠着状態を続けているため、この状態が続くと一気に下落に転じるリスクもあります。
自律的に下落した場合は、5円以上急落する可能性もあるため、今週は上下双方に動いた場合を想定し注意深くトレードを行う必要がありそうです。
今回実施された為替介入の総額は9.8兆円
財務省は5月31日、4月26日から実施された今回の介入金額は9兆7885億円であったことを発表しました。
詳細については、8月末の発表を待つことになりますが、9兆7885億円という金額は月次ベースで過去最大となります。
これまでは、2022年10月の6兆3499億円が最大となっていましたが、今回の介入額は2022年にに実施された計2回の合計額となる約9.2兆円をも上回っており、今回のオペレーションに賭ける財務省の強い意気込みが窺われます。
4月末時点で政府が保有する外貨準備金は約1兆2790億ドル(約200兆円)となっており、うち直ちに介入に投入できる預金は1577億ドル、米国債などで運用される証券は9780億ドルとなっています。
介入の原資については、6月7日に発表される5月末の外貨準備高で明らかになりますが、かなりの額が介入に投入されたことは間違いありません。
ドル円が157.79円まで値を戻しているという現状に、介入の効果を疑問視する声もありますが、上値を抑えたという点では一定の効果はあったとの見方もあり、今後の動向が注目されるところです。
GPIFのドル円調達コストは100円~108円
公的年金積立金の管理や運用を行う年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用規模は約200兆円と言われています。
その調達コストは100円から108円と言われており、足元の160円で売却が行われればこの時点で凄まじい利益が舞い込んで来ることになります。
この利益は内部留保金にあたり、これをうまく利用すればドル円の上昇を防ぐ手段の一つになります。
神田財務官は、「為替介入は24時間体制で必要な時には適切な対応をする」と述べ、市場を牽制し続けています。
そのため、何の対策を打ち出さないまま6月をやり過ごすとは考えにくいため、今週中に何らかの動きが出る可能性も意識しておきたいところです。