日米の政策決定会合を通過した3月第三週でしたが、為替市場はいよいよ月末、あるいは本邦の年度末にむけて特別な動きを織り込みながら展開していく時間帯を迎えます。

既にFOMC、日銀の政策決定会合の結果を受けてこれまでと異なる相場の動きが示現しはじめていますが、週末のNY市場ではFRBが新たに下した政策決定の影響で銀行株が激しく売られるなど大きな変化が出始めています。

FRBは補完的レバレッジ比率の特例措置を3月末で終了と発表

週末相場に大きな影響を与えたのはFRBが銀行の自己資本比率を規制する、いわゆる自己資本規制比率・通称SLRの特例措置の延長を行わず予定通り3月末に終了すると発表したことです。

本来市場はFOMCの政策決定段階でこの措置の延長が発表されることを望んでいたわけですが、パウエル議長は結局言葉を濁してその発表を避けていました。

これは新型コロナ感染拡大による金融市場の流動性低下や景気悪化への危機対応として昨年4月にSLRの規制を緩和する対応をはじめたわけですがFRBは流動性の枯渇による市場の混乱は生じないとの判断からその延長を行わずに3月末で予定通りに終了と発表しました。

この規制緩和下では必要な自己資本を計算する際に、レバレッジ比率の分母から米国債と準備預金を外すことが認められていましたから、米銀は自ら資本を積み増しすることなくバランスシートを拡大することができ、注文の仲介機能やマーケットメーカー業務を担いやすい一年間となったのは間違いない状況でした。

今回の緩和措置の終了で金融機関の自己資本比率規制がもとに戻ることから金曜のNY市場では金融機関が自己資本比率を保つために、分母に来ている保有国債を売却するのではないかとの見方が広がり、ニュースのヘッドラインが踊った直後から米銀行株は軒並み売られ、平均で3%近い下げを示現したことからNYダウも大きく値を下げる結果となっています。

また実際に米債は一斉に売られる展開となり債券金利は短期から長期まで一斉に上昇する展開となっています。

米債イールドカーブ最新状況  Data FT

こうなると一旦109円前半で頭打ちになっているドル円が10年債金利の上昇を受け手いよいよ110円方向に上抜けていくことになるのかどうかに大きな注目が集ります。

ユーロドルも状況は一緒でさらにドル高が進むのかどうかがポイントとなります。

月末の特殊事情にも注意が必要

ドル円は先週段階で何度も上方向をトライしていますが、実需の売り壁があるのかなかなか109.500円を抜けることができないままの展開になっています。

テクニカル的にみますとすでに1月からの強い上昇威力は薄れてきており、一旦下値を試しそうにも見える時間帯に入っており、ここからの動き次第では上昇トレンドを終えてレンジ相場に移行しそうな雰囲気になってきています。

本邦では3月末は年度末ということでこの21日からの週は輸出企業が収益を国内に戻すレパトリが多く発生する時期ですので普通にしていてもドル円は25日前後までは円高圧力の多い展開になりがちです。

したがって債券金利の上昇による相場の上昇とレパトリによる売りがぶつかり合うような状況になりそうであることを認識しておく必要がありそうです。

これは昨年3月の暴落から反転急上昇したときでもこの期間だけは上昇が疎外される期間となっており、必ずそれなりの売りがでることを意識しておく必要があります。

ドル円4時間足

市場には米債金利がさらに上昇と一旦沈静化という2つの見方が混在

米債金利はすでにザラ場で瞬間的に10年債で1.75%を超える状況となっていますが、ここから大きな問題になりそうなのはその上昇の勢いがかなり短期的に加速するのかどうかということです。

今後緩やかな上昇を続けて2%に到達するのであればそれほど市場には大きな影響はないという見方もありますが、月末や4月に向けて一気に2%を超えるような上昇を示現した場合には想像以上に大きな影響がでそうな状況です。

上述のSLRの終了にともなって金融機関がこの月末、四半期末にむけて一気に米債を売り抜けるような動きが重なった場合には想定をはるかに超える金利上昇が示現するリスクが残されています。

一方で米債市場では債券金利は一旦落ち着いて下落に転じるという楽観論も依然として蔓延っている状況で今のところどちらが正しいのかは判断がつかないところにあります。

ただし、1980年代から延々と継続してきた米債のブルマーケットは完全にベアに転換しており、ここからはさらに下げに転じるという悲観的な見方も存在しており、どちらが現実のもにになって相場を引っ張っていくのかを見極める必要が出ていることを強く感じさせられます。

Data Bloomberg

ここから月末、本邦の年度末にむけては想定外のリバランスなども出やすくなりますので、一旦これまでの相場のトレンドが止まる可能性もありそうです。

思い込みでトレードするのではなく個別相場のプライスアクションをよく確認してトレードしていくことが重要な一週間になりそうです。