バイデン政権の誕生で民主党左派の影響もあり社会保障の充実した大きな政府ができるであろうことはある程度予想できたものでしたが、この政権は発足から半年も経たないうちに強力にベーシックインカムの仕組みに似たものを米国社会に導入しようとしているようで、果たして米国社会がここからどうなってしまうのかに多くの疑問が集まるようになりつつあります。

すでに1.9兆ドルの米国救済計画は新型コロナ対策として議会で承認を得て導入されたものですが、その一部は過度な給付金の国民への支給ということで労働市場にはこれに伴う大きな変化があらわれてきています。

働かないで給付金をもらったほうが裕福になるという事態

上のグラフは米国ペンシルバニア州における失業時の給付金の職業別の状況ですが、一部の職種については働かないで失業手当をもらったほうが可処分所得が増えるという逆転現象を起こしており、ミレニアル世代の若者を中心として労働意欲の低下と新たな求人への応募が進まない状況が現実のものになりつつあります。

5月の第1週に発表された4月分の雇用統計の数字が良くなかったのも偶然ではなく、やはり求人に対して雇用がうまく確保できない状況が各地で起こり始めているようです。

子供手当の支給はベーシックインカム志向の政策

3月に2021年に限って拡充を決めた子育て世帯に対する税額控除を使い、7月から毎月一定額を対象家庭に給付をはじめていますが、現段階では今年だけの緊急政策であるもののこれも恒常的な政策へと変換させる動きが加速化しています。

この政策により全米の3900万世帯が支給の対象となり、およそ88%の子供たちが給付金の支給を受けることになります。

6~17歳の子供一人につき年最大3000ドル、6歳未満は同3600ドルを上限としていますがこれは間違いなく子供手当となっており、本来は21年分の確定申告を終えてから支給されるものが今年は前倒し支給となるわけですから、制度上はきわめてベーシックインカムに似た構造となり低所得者層はますます国からの給付金提供に依存した生活を送ることになることが定着化しそうな状況です。

旧ソ連の社会主義化する危険性も

新型コロナを契機として米国ではさらに一部の富裕層だけが富を獲得する社会が進んでしまいましたが、こうした国が低所得者層にカネをバラまく社会主義的な政策の推進は結果的に旧ソ連のような経済を実現することになりかねず、多くの国民の労働意欲を削ぐことになる可能性も高く、最終的には労働生産性の著しい低下を招くことは間違いなさそうな状況となっています。

こうした政策はまさにMMT理論に基づくようなものということになりますが、過度なベーシックインカムの導入で本当に経済・社会が活性化することになるのかどうかはまだまだ怪しい部分が多く、米国が率先して資本主義を壊すきっかけになるのではないかといった危惧の念も市場では高まりを見せています。

純粋資本主義の中心的役割をはたしてきた米国がいち早く社会主義化の道を選択し、逆に中国が資本主義的動きを加速させることになるというのは皮肉なものですが、ここからは金融市場も大きな影響を受けることが予想されるだけにバイデン政権のここからの社会主義化の加速がどこまで進むのかは高い関心を集めることになりそうです。

経済の停滞が顕著になれば株価に影響がでることは間違いなく、米国経済が大きく衰退するようになれば米株市場もそれに準じたものへと変化する危険性は高くなりそうです。

もともと米国民が持ち続けているアメリカンドリームの世界と異なった社会に変化しようとしていることを米国民自体がどこまで許容するのかにも関心が集ります。

いまのところ直接的に米株指数にバイデン政権の政策変化が影響を及ぼすといった事態には至っていませんが、どこかで深刻な影響がでることは十分に想定できるだけに引き続き注視していくことが必要になりそうです。