前週行われたFOMCでのパウエル議長の発言を、市場はハト派寄りの発言と受け取ったことにより、11月第2週の為替相場は週明けに米債金利が大きく下落し、それに引き込まれるかのようにドル円も149円割れスレスレまで下落する展開となりました。

為替アナリストの多くは、ドル円の上昇は一旦終了しここから自律的に下値を追うことになるとの見通しを立てていましたが、週の半ばには雇用統計発表前の水準まで値を戻し、週末に向けて再度151円台後半を試す動きとなりました。

このドル円上昇の動きは、木曜日の国際通貨基金(IMF)関連の会議でパウエル議長が「必要であればさらなる利上げを行う」とのタカ派姿勢を鮮明にしたことが原因となった模様です。

この発言の内容は、2日早朝のFOMC後に行われた会見の内容と違いはないため、利上げ終了に前のめりになりすぎた市場の思惑が、一気に巻き戻されたことでこのような動きに繋がったと思われます。

1週間の値動きを振り返ると、結果的にドル円は週初から週末までコンスタントに上昇していることがわかります。

テクニカル的にも強い地合いが見られるため、財務省の介入がなければこのまま152円を超え、153円台への上伸も十分にあり得る状況となっています。

 

Data Tradingview ドル円1週間の動き 

前週末151円台後半に達したドル円がさらに上昇する可能性も

昨年、151.900円レベルで財務省による介入が入ったことは記憶に新しいところですが、2週間ほど前に神田財務官の「スタンバイOK」発言があったこともあり、財務省はそろそろこのあたりで上値を止める動きに出るのではないかという見方が強まっています。

財務省としては、昨年の高値を超える前になんとかしたいと考えるはずであるため、市場ではあえて152円台をつけたところで介入を行う可能性も指摘され始めており、週明けの相場はこの介入をめぐる神経質な展開となりそうです。

14日の火曜日には、10月の米国消費者物価指数(CPI)の発表も控えており、この結果が上昇水準を回復させることになればドル円は上昇し、逆の結果となれば自律的に下落することになりますが、14日までの介入状況によっても相場は複雑化することが予想されます。

米国消費者物価指数(CPI)は、7月に発表された6月分が一旦底を打っており、それ以降は微増もしくは横這い状況となっています。

 

Data Investing.com 米国消費者物価指数

 

Data Investing.com 米国消費者物価指数

介入のタイミングを逸すればドル円は152円方向に上伸か

先週9日、英国ファイナンシャルタイムズのインタビューに応じた植田総裁は、賃金の伸びについて「来年の春闘の結果を見て判断したい」との発言を行っていることから、イールドカーブ・コントロール(YCC)の年明け早々の廃止やマイナス金利見直しは行われないとの指摘が一部の海外金融アナリストからは上がっています。

ということは介入でしか円安を阻止する手立てがなくなるため、財務省がこの水準で介入に踏み切るのか、それとも大きな変動がないことを理由に152円超えまで先送りとなるかが、相場転換ポイントの分かれ道となりそうです。

足元で岸田政権は支持率の低下に苦しんでいるため、輸入物価を抑えるためにも円安を食い止めたいという政治的な要望を受け、財務省がどう判断するのかに注目が集まっています。

ユーロドルはドル円の動きに加え指標発表と要人発言がカギ

Data Tradingview ユーロドル1週間の動き

 

ユーロドルは、週初につけた約2か月ぶりの高値となる1.0757を頂点に反落し、1週間の取引を終えています。

週明けはドル円次第というところで、ドルの勢いがこのまま継続すれば、上昇したはずのユーロが再度 1.0500レベルまで下落する可能性もあります。

週明けは、ドイツの欧州経済センター(ZEW)により11月の景気期待指数が発表されますが、これが予想を下回った場合、相場への影響は大きくなります。

また欧州中央銀行(ECB)の要人発言も相次ぐため、一定のハト派的な発言が形成された場合、ユーロが自律的に下落する可能性もあります。

 

今月は、23日に米国の感謝祭を控えているため、実質的な取引時間は短くなります。

方向性を間違えるとリカバーができないまま、月の取引を終えることになってしまうため、いつにも増して注意深く取引を行う必要がありそうです。