3月4日に発表された2月の米国雇用統計は、非農業部門雇用者数67.8万人増と予想42.3万人増を大幅に上回りました。
また失業率は3.8%と事前予想3.9%を上回る低下となっています。

さらに労働参加率は62.3%と前回から予想外に上昇し労働者が市場に戻ってきていることを示す形となりました。
ただ平均時給のほうは前年比プラス5.1%と予想を下回る微妙な結果となっています。

しかし相場の反応はかなり鈍く、ドル円はほとんど動かずに週末に向かってドル安が大きく進み、114円台に落ち込む動きとなりました。
ユーロドルも極めて軟調で1.09を割り込む下落ぶり、当然ユーロ円、豪ドル円などはドル円、ユーロドルとほぼ同じ軌道を描いて大きく下落しています。

ただウクライナからもっとも地理的に遠い豪ドル、NZドルは過去の欧州圏の地政学リスクのケースでも見られたとおり買われる動きとなっており、通貨間でかなりコントラストのはっきりとした展開が続いています。

米株も今回の雇用統計には一切反応しておらず、市場は完全にウクライナ情勢に影響を受けてしまったようです。

パウエル議長は議会証言で3月0.25%の利上げを議会証言でコミット

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2日、米下院の金融サービス委員会の公聴会に登場したパウエル議長は、月内のFOMCで利上げを明確に示唆し0.25%に傾いているなどとかなり踏み込むような発言をしましたが、言質をとられてはいけないと判断したのか、その直後にインフレ次第では0.5%の利上げを年間複数回行うこともありうると追加発言を繰り返しました。

しかし翌3日の上院公聴会では0.25%の利上げを明確にコミットすることとなり、これが雇用統計不動の大きな要因となってしまったようです。

ただこの証言内容を細かく聴いてみると、すでにパウエル議長はインフレ要因としてロシアのウクライナ侵攻を挙げはじめており、すっかり政策変更の根底にロシアの動向があるかのようにうまく使い始めていることがわかります。
FRBにとってはまたとない言い逃れの材料がウクライナ問題になっていることがわかります。

ロシアのウクライナザボリージャ原発攻撃が市場の大きなショックに

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4日の東京タイム、欧州最大の原発であるウクライナ南部のザボリージャ原発がロシア軍の攻撃を受けたとの第一報がヘッドラインニュースで流れた途端、株価は大きく下げる形になり、ユーロはほぼ全ての通貨に対して激しく売られる展開となりました。

その後原発施設自体には影響がないことがわかり一定の買戻しが入りましたが、戦争関連の報道は二転三転と錯乱し最終的にはロシアがこの原発施設に近いところに向けてミサイルを打っていたことも判明しました。

ウクライナのチェルノブイリ発電所が事故を起こしその後多大な経済的、人的健康被害を被ったのは1986年の旧ソ連時代の事なのでプーチンも十分に原発の事故、破壊リスクは認識していたはずですが、今回なんの前触れもなく原発周辺をミサイル攻撃したことで完全に全世界を敵に回すような事態に追い込まれたことは間違いありません。

サポリージャ原発は南ウクライナに位置し、黒海を挟んでトルコまでは直線距離で400キロ足らず、欧州の主要都市までも2000キロに位置しており、まかり間違って原発が破壊され大量に放射能が洩れるようなことがあれば欧州大陸全体が滅亡に追い込まれていたはずであり、多くの人が震撼する一日となったことは間違いありません。

これまではウクライナにおける戦闘の情勢変化のヘッドラインでアルゴリズムが反応して相場が上下するといった状況がすでに1週間以上続きましたが、原発を攻撃するなどという全く想定外の動きがでてしまったことで、相場はここからどう動くのか非常に不透明感が高まることとなっています。

ロシアのデフォルトは目前だがその報復に何が飛び出すかに注目

足もとではSWIFT規制、中央銀行の外貨準備引き出し凍結などの西側諸国の制裁措置を受けてロシアルーブルは1998年以来の大暴落となり、もはやデフォルト寸前の状態に追い込まれています。
恐らく3月中には決定的な事態に陥ると思われますが、1998年のデフォルトも意外に簡単に行われていてロシアはこうしたことではへこたれない可能性もあり、むしろその後の西側諸国に対する制裁の報復措置が非常に気になります。

中央銀行の経済政策や各国の経済指標などは先行き一定の発表期日がはっきりわかっているので、その結果を受けて相場が上昇するにしても下落するにしてもある程度事前に対応ができます。

しかし今回のロシアのウクライナ侵攻とここからの結末に関しては非常に見通しがまだ不明で、しかもプーチンの挙動が極めて不可解であることから突然なにかが起きて相場が大慌てするという動きがまだ続きそうで相場に参加すること自体が非常にリスキーな時間帯となりそうです。

やりにくい相場はまだまだ継続の見込みです。