中国では引き続き恒大集団のデフォルトリスクの話が後を絶ちませんが、足もとの相場ではそれをさらに凌駕しかねない世界的なリスクになろうとしているのが電力不足の問題です。
国慶節を迎えた9月末、通常ならば中国各地ではそれを祝うための各都市のライトアップイベントなどが行われますが、今年に関してはどこの都市部でもそうしたライトアップは中止になり、事態の深刻さを物語っています。
恒大集団のデフォルトの件では中国国民が相当なダメージを受けていますが、習近平が作為的に起こしている江沢民一派の自作自演の問題なので、完全なデフォルト状態に陥ったとしても清算の落としどころはどこかで明確になる可能性がありますが、この全国的な電力不足は国民の生活だけでなく幅広い産業での製造活動に多大な影響を及ぼしかねず、世界の市場にネガティブなインパクトを及ぼすことが危惧され始めています。
電力不足は9月ごろから報道されてきましたが、冬場を迎えるにあたり中国はより深刻な状況に直面しているようで、恒大集団とは比較にならない大きなリスクに発展しています。
原因は石炭不足と環境規制とされるが本当にそうなのか
この電力不足は燃料となる石炭価格の高騰や二酸化炭素の排出量削減のための環境規制の強化が原因とされていますが、こうした材料はあらかじめ予想できるはずで、ここへきていきなり電力不足になるというのは不可解です。
すでに南部の広東省や東部の江蘇省のほか、東北部の遼寧省など、幅広い地域で今月電力の供給制限が起きていることから、民間人の住宅でも停電が発生しており、さらには企業の工場施設でもまともな生産ができない状況となっているようです。
これはアップルの製造委託施設やテスラの組み立て工場などでも発生しており、中国に製造を委託している製品ほぼすべてに影響が出始めていて、そう短期間に改善できる問題ではないという悲観的な見方が広がり始めています。
中国は昨年からオーストラリアと様々な揉め事を起こしており、現状ではまとも石炭輸入を確保できていないことが一つの原因とも見られていますが石炭価格が大幅に上昇していることから、もし手に入ってもコスト的に見合わないことを理由に電力会社が積極的な確保に動いておらず、本来こうした状況なら政権が主導的に動くことで問題を解決されるのが普通ですが、習近平政権はそこまで深く関与して状況打開に動いていないという見方も広がっています。
これが江沢民一派の粛清を狙う習近平の政治的な動きとして示現しているのだとすればかなりリスキーなので、簡単に元には戻らない可能性も高まります。
年末までに主要国の株価が10%以上下押しする材料か
この中国の製造現場での電力不足はコロナ禍からの回復期におけるサプライチェーンの混乱にさらに拍車をかけることが予想され、半導体不足でクルマが生産できない主要メーカーにさらに部品供給などで大きなダメージを与える危険性がでてきています。
9月天安門広場にブラックスワンが飛来して物議を醸しだしたのは記憶に新しいですが、今回の電力不足は先進主要国の経済にも想像を超えるダメージを与えかねず、下手をすれば年末までに日米ともに株価が10%以上下落する可能性があります。
今のところ各社でどのぐらい生産にダメージが出るのかは明確でないことからあまりリスクとして正確に掌握されておらず、足もとの株価はまだ影響を受けていませんが、ここから10月末、11月と時間を追う毎に深刻な状況に陥りかねないので、相当意識しておく必要があります。
株が下がれば当然影響を受けるのは為替なので、ドルがこれまでと異なる動きになるリスクも意識しておかなくてはなりません。
相場全体に米国FRBのテーパリング時期の問題だけが大きなテーマとなってきましたが、10月に入ってその状況にも大きな変化が訪れるかもしれません。