毎年3月は、日本の年度末と米国の四半期末が重なる時期であるため、相場に独特の動きが示現しやすくなります。

これを意識しておかないと、知らず知らずのうちに円高に巻き込まれる可能性があるため、十分な注意が必要です。

昨年11月にも発生した突然のポジション巻き戻し

昨年11月の感謝祭前に、ドル円相場で長期間にわたり溜まりに溜まった円売りポジションが一斉に巻き戻されるという事態が発生しました。

IMM(国際通貨市場)の先物ポジションを見ても、10万枚近くのドル円の円売りが一気に買い戻されており、結果的に10円の円高を示現することとなりました。

ドル円の場合、ロングポジションを保有することで応分のスワップが付与されるため、長期間にわたりロングを保有しやすくなります。

しかし投機筋は感謝祭前のこの時期に、年内の取引終了に向けロングポジションを一斉に解消したことから、自律的に円高が示現することとなりました。

こうした動きは、昨年の3月と7月にも見られましたが、特に取引の節目となる月に顕著に現れる傾向があります。

3月は、通常11月ほどの激しい変動は見られませんが、それでも昨年は3円近くの円高が発生したため、大きな変動が発生する可能性にも備えておいた方がよさそうです。

足元のIMMのポジションは、昨年の11月以上に円売りが拡大しているため、巻き戻しが半分の規模であったとしても、3円から5円程度の変動が生じる可能性があります。

株式市場のリバランスに連動する為替のリバランス

通常、機関投資家は年初や年度初めに、どの市場に何パーセントの投資を行うか、いわゆる分散投資の配分を決定して取引を開始します。

今年は、米国株と日本株が大幅に上昇し、日経平均株価については年初来20%の上昇となっていいるため、3月の四半期末や日本の年度末には、保有株を売却してポジションを調整するリバランスが発生することは間違いありません。

日本株市場において、投資の主力は主に海外投資家にあり、特にヘッジファンドは最近、積極的に日本株を購入しています。

月末に向けては一定の利益確定の動きが見られるとともに、リスクヘッジの一環としてドル円を売却する動きも出やすくなるため、日本株売りは円買いに動きやすくなります。

このリバランスは、海外投資家のように月末に行われる場合もあれば、日本の投資家のように春分の日前後に行われるケースもあります。

日本勢の株売りは為替と関係ありませんが、海外勢による日本株売りは、今後確実に円買いに繋がると考えておく必要がありそうです。

今週は、週末の金曜日にメジャーSQ(先物とオプションの清算日)が控えているため、その前後で日本株が大量に売却されるリスクが高まりそうな状況です。

日本勢のレパトリエーションは春分の日前後がピーク

近年、日本は輸出貿易立国の地位からは徐々に脱却しつつありますが、それでも輸送用機器業界の多くの企業は、年度末の3月に現地法人からの利益を国内に円転して回帰させる「レパトリエーション」を実施しています。

一部の企業では、月初から決算の準備に取りかかるところもあるようですが、ピークとなるのは通常春分の日前後であるため、今年は3月20日前後にかなりの額の資金が円に転換される可能性があります。

通常、マザーマーケットの東京市場の仲値が大規模な円転換を容易にするため、大口の取引が急増し、円高に急騰することがよく見られます。

また、海外からのレパトリエーションという観点から見ると、同様の現象がロンドン市場のフィキシング時にも起こり得るため、特にこの時期は東京市場とロンドン市場における、突然の円高には注意が必要になりそうです。

 

国内の企業や銀行などでは、決算の数字にブレが出ないよう確定後の月末にはほとんど大規模な取引を行いませんが、ドル円が決算の数字への影響から月末にかけて一時的に上昇する場合もあります。

今年は、29日が3月の取引最終日となるため、例年に比べ2〜3日程全ての動きが早まる見込みであるほか、19日の日銀政策決定会合や21日のFOMCも相場に大きな影響を与えるものと見られます。

テクニカル分析だけに頼ってトレードを行うと、ロングポジションを持っている場合は特に突然の相場変動に巻き込まれ大きな損失を被ってしまう可能性があります。

ドルストレートは特にこのような動きが顕著にあらわれますが、円高の影響を受けやすいクロス円でも同様のリスクがあるため、現在クロス円の上昇に乗っているトレーダーは特に注意が必要と言えそうです。