11月4日日本時間の午前3時にFOMCの政策決定内容が公表され、大方の予想どおりテーパリング(資産購入の減額)が正式決定となりました。

内外のメディアでは金融緩和措置が終わり新たな政策が打ち出されることになったという報道ですが、利上げは依然としてテーパリングとは別問題とパウエル議長は語っており、完全な緩和からの政策変更ということにはなっていません。

これまで米債、MBS合計で月1200億ドル買っていたものが今後米国債は月100億ドル、MBSは月50億ドルのペースで減額し、来年6月には完全終了ということになります。

ただし経済状況が大きく変動した場合には調整する可能性も示唆しています。

これが予定通り進んだ場合には来年6月にはテーパリングが完全に完了することになり、市場ではこのタイミングのあたりに利上げが行われると見始めているようです。s

CMEが開示しているFed Watchの利上げ予測では、来年6月段階ですでに市場は68%近い利上げ確率を織り込み始めており、この予想とFRBの政策実施にどれだけの差が生まれることになるのかも今後の注目材料となりそうです。

Data CME Fedwatch

パウエル議長はとにかく利上げを否定し防戦一方

Photo Fed

オンライン会見に登場したパウエル議長は、しきりに今回はテーパリングについてだけ議論して利上げについては一切語らず、テーパリングと利上げが完全に別ものであることを終始強調していました。

インフレが一時的であるという説明には記者から質問が集中していましたが防戦一方で逃げるばかりで、この議長はとにかくこの回を逃げ切り続投はないのかなと感じさせられる場面があった気がします。

米株市場はFOMCの内容全体がハト派的に見えたのかそれを好感して三指数とも上昇しており、テーパリングの大きな影響は市場には出ていません。

為替はドル安円安を示現

声明発表を受けて内容がハト派的だったことからかドル円は一旦113円台に下落しましたが、その後114円台を回復してNYタイムを終え、典型的なドル安円安状態が足もとの状況になりました。

この声明を受けて上昇したのはクロス円全般で、ドル円ではなくクロス円で勝負したトレーダーはそれなりの利益に預かったものと思われますが、ドル円で114円方向に上伸することを期待した向きは不発に終わっています。

ただFOMC以降ドル円は113円台にいきなり下落するといった動きにもなっておらず、このまま行けばどこかのタイミングでさらに上値を試すことになる可能性が高まります。

パウエルの続投はどうなるのか依然不明の状況

G20ローマ出張中にロイターのインタビューを受けたイエレン財務長官は次のFRB議長について、市場を安心させるために経験豊富で信頼できる人物を選ぶべきとの考えを示したものの、パウエル議長はこの条件を満たしているが、他の候補にも当てはまると微妙な発言をしています。

以前はパウエルをエンドースするような発言をしていたわけですが、見方によってはかなり後退したようにも見えます。

それに先立つブルームバーグとのインタビューでは、連邦準備制度の政策当局者による個人的投資を巡る問題でパウエル議長が積極的な金融取引を制限する新たな規定を発表したことから、確実に対応しはるかに厳格な基準を導入したと強く評価していますが、当の本人もインサイダーと思える株取引をしていたことには一切触れていません。

またこの間パウエルを表立って批判してきたエリザベスウォーレン議員も黙ったままで、かなり様子のおかしい状態が続いています。

FRBについては来年の利上げ時期に大きな関心が集まりそうですが、その前にパウエル議長が続投するのか終わりなのかもかなり大きな関心になりそうです。

ウォール街は80%以上の確率でパウエル続投を織り込んでいるだけに、もしここでブレーナードへと変更になれば相場への影響が気になります。