11月10日米国労働省が発表した10月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比6.2%上昇と31年ぶりの数字となり、変動の大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数でも4.6%の上昇となってドルは主要通貨に対して軒並み跳ね上がったことはこのコラムでもすでにお伝えしました。

具体的な費目でその内容を確認してみると家庭用食品が前年同月比5.4%と伸びが加速したほか、ガソリンはと49.6%上昇と飛躍的な伸びを示しており、一時的なのか継続的なのかの議論をおいておいても物価が上昇していることが伺えます。

また一旦落ち着いていた中古車が26.4%上昇、前月比で見ても2.5%上昇となっており、コロナ禍を終えてもとの生活に戻るために自家用車の確保が必須の米国社会では新車も順調な販売を記録していますが、それも手に入らないことから新車より価格の安い中古車に庶民が殺到していることが良くわかります。

需給バランスが崩れて中古車価格が暴騰し、店頭にもほとんど在庫がないというのはまさに異常事態と言える風景です。

このCPIはここまで上昇してくると本格的にインフレが到来し、しかもそれが一過性ではなく継続性を伴ったものになっているのではないかと思われますが、実はこのCPIは過去の算定から現在の算定方法は大きく塗替えられており、本当はもっと高い数字であるという指摘をする人物が現れて注目を浴びています。

ShadowStatsの創業者はFRBがCPI算定方法を改定しインフレを隠蔽と指摘

米国で経済学の学士号とダートマス大学でMBAを取得しているコンサルティングエコノミストのウォルター・J・ウィリアムズ、通称ジョン・ウィリアムズはShadowstats.comと呼ばれるサイトを運営しています。

米国政府が発表する経済統計についてクリントン時代から大恐慌まで前政権によって放棄された方法論を敢えて利用する形でマネーサプライ、失業、GDPを追跡しては改定数値を発表していますが、このジョン・ウィリアムズによれば1980年代に使用された労働統計局と同じデータ収集と計算方法論を使用すると、ヘッドラインインフレ率は今年5月分でさえ調整後インフレ率は13.5%程度であり、今回発表の年率6.2%はすでに15%に近い非常に高い水準にあると指摘しています。


それではなぜFRBがこうした改ざんに踏み切ったのかが気になりますが、米国は80年代クリントン政権が始まる前あたりからインフレを誇張していることに気づき、測定方法を見直しています。

これは単なる誇張の修正だけではなく当時の社会保障の支払いを減らすことを目的としており、社会保障の削減で財政赤字を減らそうとしたのが一番の目標であったことが暴露されているのです。

中立公正のFRBでもそんなことで政権に忖度するのかというのはかなり驚きの話ですが、政府と役人は常にこうしたデータの改ざんに近い修正は簡単にでき、都合が悪くなればいつでもこうしたアプローチをする可能性があることをあらかじめ認識しておく必要がありそうです。

そういう意味ではFRBはかなり国民と投資家にインフレについての嘘をついてきたことが浮かびあがります。

現状ではFRBパウエル議長がとにかくインフレ一過性説を随所で唱えて、なんとしても利上げを早めないように奔走しながら次の4年もFRB議長として継続することを政権に懇願しているように見えますが、これも感謝祭前にはバイデン大統領から発表があるようです。

もしブレーナードが指名された場合にはウォール街の予想は大きく覆ってドル円辺りはそれなりの売りに直面することもありそうですが、いずれにしても中間選挙を来年秋に控え支持率の低いバイデン政権は利上げして株価を下げることはないので、CPIの算定自体に手心を加える可能性はあるかもしれません。