足もとの相場は6月のFOMCでの利上げ幅が一体どうなるのかに関心が集中しており、ここからの動きは完全にその結果次第という状況が続いています。
すでに米債金利の大幅上昇を受けて、ドル円も15日早朝のNYタイムで年初来高値を更新しており、どこまで上昇していくのかに非常に注目が集まっています。

そんな中、もう一つの明確な動きとして市場が大きな関心を示しているのが、この場に及んでの日銀の国債無制限買い入れの動きです。
10年債の指値オペで13日には応札・落札額は1兆5337億円と、実に2018年7月以来過去2番目の大幅増額となっていますが、次いで14日には指し値オペでは2兆2126億円の国債を買入れ、そのほかにも臨時で長期国債や超長期国債を対象にした国債買い入れを実施したことから計3兆1629億円買入れをしており、1日の国債買い入れ額としては異次元緩和直後の2013年4月12日を上回り、最大の金額となっています。

さらに15日には、当初は残存1~10年の国債を計1兆4500億円買い入れる予定でしたが、買い入れ対象を10年超にも拡大した上で計2兆4500億円の買入れを決定しています。
もはや買入れは10年債だけに留まらず長期債の領域まで拡大して、あくまでもイールドカーブコントロールを死守する構えであることが鮮明になっている状況です。

海外投機筋は本邦財務省、日銀が米国政府から緩和継続の強い要請を受けているとみている模様

海外投機筋は日銀黒田総裁のこの確信犯的な金利上昇阻止の緩和措置の断行を、単なる日銀だけの判断ではなく、米国政府が市場に一定以上の流動性を供給し米債を購入する本邦勢の買い意欲が減退しないように日本政府に要請している結果ではないか、といった辛辣な見方を始めています。

実際ロシアはもはや外貨準備として米債を買わなくなっており、中国も大幅購入減額に踏み切っていて、FRBが無制限の緩和措置の中で一番の米国債の買い手となっていたのが現実でした。
しかし直近ではすでにQEは修了、逆にバランスシートの縮小を6月から開始しているので手持ちの米国債を売り飛ばす動きを始めており、市場に残されているのは日本政府と本邦機関投資家、金融機関だけが頼みの状態になっています。

こうなると日銀が無闇に利上げされるのは非常に大きな問題で、バイデン政権こそが日本の財務省、日銀に要請と言う名のプレッシャーをかけているという観測はまんざら否定できない状況にあります。

米系の投機筋は、日銀はこの緩和を簡単にはやめないと判断しており、それこそが対ドルでの円売りを加速させているとの見方も強まっています。

ヘッジファンドが大挙して日銀が屈するまで日本国債を売り浴びせることになるのか

かなりのヘッジファンドは日銀の頑固な、かつここへ来て大規模化する国債買い入れによる緩和措置の断行に対して、他の主要国の利上げとは真向から反する動きであるだけに、やがて日銀がこの政策を放棄せざるを得ない状況が示現するとみて、日本国債のショートを猛烈に積み上げていることが見えてきています。

実際に10年債の利回りは0.25%を一時的に超え始めており、日銀は過剰な無制限緩和でそれを死守せざるを得ない状況に陥っていることがわかります。

完全に日銀と外部の投機筋との債券金利を巡る壮絶な戦いが始まっているわけですが、日銀が敗北すれば日本国債金利は大幅に上昇することになり、90年代ジョージソロスと英国銀行の戦いでまさかの中央銀行が敗北を喫するといったものと似た状況になる可能性があります。

黒田が日銀総裁になるまでは、日銀も自身のホームページで中央銀行がコントロールできるのはあくまで短期金利だけで、長期金利は制御できないと掲載していたものを、国債の大量買い付けで完全に制御してきた状況が、投機筋が殺到して国債売り浴びせを行うことで完全に敗北する事態に追い込まれるリスクが高まっています。

現状では135円超えとなっているドル円は、ここから投機筋が大挙して日本国債売りに動くことで一気に140円、150円超といった爆発的円安に陥ることを想定しておかなくてはならない時間帯に入っているようです。
17日には奇しくも日銀政策決定会合が控えていますが、FOMCを経て驚くべき円安が示現するリスクに備える必要がありそうです。
円にとってはFOMCよりもこの国債売り浴びせがもっとも大きなイベントになってしまうのかも知れません。