Photo AP https://www.sankei.com/article/20211201-7WQ5WMRTXBJ2JGTIT5AVOKPH2A/photo/BAR6CEXIMVP7VFYCRQOPJGWKK4/

モデルナのCEOがオミクロンに対するワクチンの効能についてはっきりしないと語った報道が東京タイムに出たことから11月末、12月第一週となった今週の相場は株も為替も必要以上に大きく下げる展開となりました。

しかし今週定期的に開催される議会証言に立ったパウエルFRB議長が11月までのFOMCでの記者会見等での前言を完全に撤回し、インフレは一時的とは言えないといった証言をしたことから、相場はモデルナCEOの発言よりもさらに大きく下落を余儀なくされ、パウエルがついにタカ派に転じたのかについて非常に危惧する状況に陥りました。

果たしてパウエルの真意はどこにあるのかが大きなポイントですが、作為的に行われた発言であることは間違いなさそうです。

実際30日の議会証言の前にはその要旨がマスコミなどに事前配布されており、インフレが一時的であるという文言が抜けていたことから市場の関心が集まっていましたが、本人の口からインフレは一時的ではなくなったという大きく意味が変わった発言が飛び出したため市場の困惑は想像以上となり、今月開催のFOMCにむけて様々な憶測が飛び交いはじめています。

この半月でそんなにインフレは進行したのか?

パウエル議長といえば11月のFOMCではまだ続投が決まっていなかったこともあってか、インフレは一時的という発言を繰り返し、会見でも記者の質問にまともに答えないといった状況が見られました。

したがって今回の議会証言でもハト派的な発言に終始すると思われていましたが、実際の議会証言はいきなり前言撤回するようなタカ派的な物言いであり、意見が真逆だと批判されても仕方がなくなりました。

議長職がさらに4年確保されたことから本当の事を言い始めたのか、相場を落ち着かせるという意味で政権からそうした発言をするように支持され無理やり言わされることになったのか、真偽のほどはわかりませんが、少なくとも11月初旬から足もとに至るまでに劇的に米国のインフレが進んでしまったとは言いがたく、明らかにパウエルの物言いが変わったことは間違いありません。

株式市場は大いにアップセットすることとなり、オミクロン報道によるリスク回避をはるかに超える大きな相場の下げを示現することになりました。

2日の相場ではかなりの戻りを試す展開となったことから決定的な相場への影響はひとまず回避されていますが、ここからFRBがどうしていくつもりなのか非常に高い関心が集まっており、日本時間16日早朝4時のFOMCの結果発表とその後のパウエル会見に注目です。

パウエルプットはもう期待できないのか

米国の市場参加者がもっとも注視しているのは、コロナや他の要因でも株価が大きく下がり始めるとパウエルが金融緩和と利下げ等の対応を行ってくれるのでパウエルプットで暴落の心配なしといった浮かれた楽観的見方がおしまいになってしまうかの一点に注がれています。

ここからパウエルがタカ派に転じた場合には何があっても株が上がらなくなる可能性も高く、とくに下落局面でFRBが助け舟を出さないということがはっきりすればここからの米株の行方もかなり異なる方向に向かってしまうので、ますますパウエル発言の動向に関心が集まることになりそうです。

コロナの変異種が感染再拡大となればテーパリングの実施も後にずらされ、さらに再度緩和措置をFRBが持ち出してくるであろうことを期待してきた市場参加者にとってパウエルタカ派発言へのシフトは相当ショックなものに映っているようですが、今後FRBがこの方向転換に加速することになった場合には株価にも相当な影響が出そうで、相場はFRBの政策次第の雰囲気が漂いはじめています。