既にこのコラムではご紹介済みの通り、日銀の金融政策の修正観測が猛烈な高まりを見せ始めており、週明けはそれが一気にピークに達成しそうな勢いになってきています。
読売新聞の誤認されやすい日銀政策決定に関するヘッドラインも相場を猛烈に煽る一助となしたことは間違いありませんが、その前からすでに10年国債の利回りは昨年12月20日に日銀がイールドカーブコントロールの上限として設定しなおした0.5%を4日連続で上回る展開となっており、すでに金利上昇を制御できない状態が続くようになっています。
また当初はNYタイム中心に上昇した金利でしたが後半はとうとう東京タイムから債券売りの嵐となり、終日0.5%を上回る状況に陥っています。

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日銀としては先週の一週間まるで何事もなかったかのように振舞っていましたが、それでも単日としては過去最高の4.6兆円もの国債買入れを行い全く成果は見られず、翌日13日の東京市場では長期金利の指標となる新発10年物国債の流通利回りが一時0.545%にまで上昇する事態に追い込まれています。
これは2015年6月以来7年7か月ぶりの高水準で、日銀は16日にも臨時の国債買入れを予告していますが、指値オペに臨時の買付を断続的に行っても制御能力を失っているという厳しい見方もではじめています。

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12月20日、黒田東彦総裁は金融緩和の持続性を高めるためにYCCの上限幅を拡大したと発言をしましたが、結果的には実質利上げに追い込まれているだけという厳しい指摘が飛び交いはじめています。
さらに後任の人事もなかなか決定していないようで、黒田総裁としては本来一刻も早く退任してしまいたいのだと思われますが、最後まで責任を果たさざるを得ない時間が続いています。

YCC撤廃を検討する可能性さえ指摘する観測が飛び出している

黒田総裁としては自身が退任するまで一切なにもいじらずにこのまま逃げ切りたいところですが、日銀の金融政策の枠組み転換は必至の状況であるという見方は広範に広がりをみせており、長期金利操作の撤廃を検討する可能性が現実のものになりそうな状況になってきています。
0年債利回りが0.545%まで上昇したのは日本国債の一部を扱う日本相互証券のBroker’s Broker、通称BB取引で起きているもので、その名のとおり業者間の売買がすでに0.5%を常態的に超えてしまっています。

これは昨年12月末にも市場で指摘されましたが、日銀による市場流動性確保のための補完供給オペで10年債を借り入れ、日銀の指し値オペでは売れないというルールがあることからそれをBBに持ち込んで売却しており、結果的に日銀は発行額の100%以上を保有するという極めて奇異な状況を作り出していることがわかります。
こうした空売りを行っているファンド勢は仮にYCC撤廃で0.75%などで買い戻すことができれば十分に利ざやを確保できるので、イールドカーブコンロール修正の催促相場に参加しつつ、それが実現できたら利益にもありつけるというなかなか巧妙な取引に参加しはじめていることも窺われます。

いきなりYCC撤廃を口にすれば債券全面売り、ドル円は120円を下まわる可能性も

問題はここからYCC撤廃に日銀が動くことを決めたとしてもそれをどう市場に伝えるのかということになります。

撤廃を検討と言っただけでもJGBは短期債から長期債まで激しい売り浴びせにあうことは必至の状況で、即日YCC撤廃などと言えば相場を制御することはまったくできなくなり、ほどなくして10年債は1%金利にさえ上昇してしまう危険性にも直面しそうです。
為替のほうも状況は同様で、すでに13日のNYタイムでは127.500円レベルまでドル円も下落しているので、昨年12月20日の相場の動きと同様に7円程度の下落が現実になれば120円を下まわるという驚くべき状況に陥ることは十分にありえそうです。

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16日米国はキング牧師の記念日でお休みですが、だからこそJGBとドル円には仕掛けを行いやすい地合いとなりそうで、18日までにどれだけドル円が売込まれてしまうのか、また政策発表後にどのような相場展開となるのかが非常に注目されます。
また市場の予想に反してなにも政策変更をしなかった場合の相場の反応も相当気になるところで、これまた猛烈な売り浴びせ相場が示現することも想定しておく必要があるでしょう。

ややもすれば日銀の歴史的緩和政策崩壊を目の当りにすることにもなりかねないので、日頃にも増して慎重かつ注意深いトレードを行うことが重要な1週間となりそうです。
さすがに日銀も緩和巻き戻しといっても衝撃をできるだけ少なくする動きを模索することになりそうですが、市場との対話が必ずしも上手くないのもまた事実で、18日は相当緊張感の高いトレード時間帯となりそうな状況です。
ドル円はもとよりユーロドル、クロス円全般もこの相場の注目点に大きな影響を受けることになりますので十分にご注意ください。