ロンドン勢も復帰して事実上の年明け相場となった4日、ドル円は東京タイムから大きく上昇して2021年の最高値115.510円レベルを簡単に上昇する強い相場となりました。
さすがにすぐ116円を突破することはないと思われたロンドンタイムにドル円は上昇してストップロスを次々突破し、116.360円まで到達するという凄まじい勢いを示現しました。
こうなると次のターゲットは118円台中盤ですが、既に116円台に乗せたことでショートポジションは相当切れており、しかも市場参加者のほとんどがここからさらに上昇を見込んでいることから、果たして117円以上まで上伸できるのかどうかに関心が集まっています。
今回のドル円上昇は投機筋の仕掛け売買か
年初115円からスタートしたドル円でしたが、4日になって明らかに投機筋がショートの踏み上げで116円まで乗せるという仕掛け売買をしたことがわかります。
それに個人投資家を含めて買い向かっている向きが多いことから、この先自力で大きく117円まで上昇させることができるのかが大きな問題であり、5年ぶりの高値で実需の輸出勢もドル売り切り玉を置いてくると思われ、市場が期待するほどこのまま上昇するかはまだわかりません。
市場では本邦の個人投資家が米株に投資するためにドル買いを進めているという話も出ていますが、一定の買いが収まれば上昇が一服する可能性もあり、逆に投げがでて大きく下げる相場にも気をつける必要があります。
ドル円の歴史は政治介入の歴史
ドル円の実質実効レートはすでに300円に近いところを推移しており、ここからの円安は日本経済にとってもプラスにならない円安に入っていくことは間違いなさそうです。
これは莫大な連邦債務をかかえ利上げにも直面している米国政府にとってもドル安が強く望まれているのは間違いなく、果たして米国政府と日本政府がここからどこまでの円安を許容することになるのかも相場の行方を占う大きな材料となってきています。
ドル円が120円を超え始めれば、実質実効レートはニクソンショックがある前の固定レートである360円に極めて接近することになり、米国だけでなく日本の経済としても相当落ちぶれた状況になってしまいます。
過去の米国民主党政権の場合大統領が直接ドル安を口にすることも多く、クリントン政権時には日本に相当なプレッシャーをかけてきたという歴史が残っています。
また、リーマンショック後はオバマ大統領も自らドル安志向を口にしており、中間選挙を控えてかなり支持率を落としているバイデン政権が同じように岸田首相にドル安円高を要求してくる可能性は高く、それがいつになるのかが大きなポイントになりそうです。
人によっては125円を超えると予想する向きもいるようですが、それほどドル円は青天井の状況ではないことにも注意を払うべきでしょう。
トランプ政権の時はそれほどドル円レートについて厳しい指摘がなかったことからここまで上昇しましたが、125円から上は黒田日銀総裁自身が止めにかかったレベルで、やはり円安には限度が存在していることがわかります。
昨年のドル円の上昇率は11%で、同様の上昇が今年の相場で示現しドルベースの本邦のGDPが横這いならば2割縮減になります。
すでに1人当たりGDPは韓国、台湾に抜かれており、このままではアジア圏の他国の追い上げと追い抜きも時間の問題で、海外から日本に働きに来る労働力を確保することはほとんど期待できなくなります。
またエネルギーをはじめとする輸入物価は想像以上に上昇しそうでこれも本邦経済にとってはかなり逆風になりそうな状況です。
新年が始まったばかりで日米政府ともに円安についてコメントは出ていませんが、双方ともに何らかの発言があるとドル円はいきなり下落に転じることもあるので、1月相場は相当注意してトレードしていくことが求められます。