菅首相の訪米前段階では非常事態宣言を解除して、その代わりにまん延防止等重点措置という措置を続けてきた日本政府ですが、大阪とその周辺、並びに東京での変異種感染が収まらず、特に大阪では完全な医療崩壊寸前という厳しい状況に直面し、菅首相は25日からゴールデンウイーク明けの5月11日まで三度目にあたる非常事態宣言を発令することとなり世界的に大きな注目を浴びつつあります。
先行的にワクチン接種を実施し、経済の停滞を与儀されても厳しくロックダウンを継続実施した英国はすでに感染が収まる動きをみせており、6月には経済活動がかなり元に戻る見込みとなっていますが、日本に関してはいくつもの宣言は出すもののPCR検査はほとんど実施していません。
ワクチンの接種も先進国の中ではもっとも後塵を拝する状況で相当遅れた新興国と肩を並べるところに陥りつつあり、海外からの投資ファンド勢も思わず投資の手を緩めざるを得ない状態になっています。
今回の非常事態宣言では4月25日から5月11日までの期間東京・京都・大阪・兵庫の四都府県で実施されること発出することになりますが、昨年4月のはじめての発出段階では東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県に緊急事態宣言を発令してからさらに全国に宣言エリアを拡大したことからゴールデンウイークはほぼすべての国民が旅行も行楽地等への外出を見送り、東京の渋谷や銀座はこれまでに見たこともないようなゴーストタウンとなりました。
その結果、人と人との接触機会が大幅に削減されたことで一時的に感染者数は減少に転じることとなりましたが、今回の場合は地域限定、かつゴールデンウイーク目前の発令ということもあり、果たしてどれだけ当該地域の市民が外出等を自粛するかが大きな問題になりそうで、すでにコロナ疲れをしている多くの国民が政権のいうことを聞かないまま元通りのゴールデンウイークの過ごし方に戻ることが危惧されます。
連休明けの5月11日以降も感染拡大が止まらなければ間違いなく相場は下落
すでに主要国の金融市場では新型コロナのウイルス感染は相場へのネガティブな材料としては機能しなくなりつつありますが、日本だけは全く別物の状態でワクチンの接種も今年9月までの供給に目途がたったとはいうものの接種自体にはさらに時間がかかる見込みで、ほぼ丸腰で検査もろくにしないまま東京五輪に突入せざるを得ないという相当リスキーな状況に陥りつつあります。
世界的にも日本がここまで酷い状況にあることはあまり知られていなかったわけですが、そもそも感染者数も死者数も少ないとされてきた国内の新型コロナ感染の問題ははるかに深刻で、特に変異株の感染拡大はもはや手に負えないところに差し掛かっていることが明確になりつつあります。
当然のことながらこの緊急事態宣言の発令だけでは広域的な感染拡大を食い止められるとは思えないものがあり、連休後の5月11日段階でも感染がさらに拡大して抑止できないことがはっきりした場合、国内問題起因で株も為替も大きな影響を受ける可能性が出てきています。
日経平均はすでに4月第四週段階で大きな下落が示現しはじめており影響が出始めているとも言えますが、5月の連休明けはさらに海外からの投資ファンド勢が一斉に撤退していくことも考えられ、注意が必要になってきています。
5月17日にはIOCのバッハ会長が来日して東京五輪開催の可否を決定するものと思われますが、現段階では緊急事態宣言は五輪開催には影響を与えないといった発言をしているものの、本当に感染拡大を無視できるのかどうかにも注目が集まるところで、結局中止なり延期なりという判断が下ればさらに株価の下落に拍車をかけかねない状況です。
感染拡大からすでに1年以上経てもほとんど対策が以前と同じという状況ですが、足元の状況は我々が考えている以上に深刻なようで、ここからの投資行動には十分な注意が必要になりそうです。