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ウクライナへのロシアの侵攻が大きな地政学リスクになるということを既にお知らせしましたが、実はそれよりも大きな問題になりそうなのがカザフスタンの暴動に端を発した政変の問題で、深刻度はすでにウクライナを超えつつあります。

このカザフスタンは旧ソ連に属していた国で、ロシアの裏庭と言われるほどロシアに接する大きな国土をもった国です。

地図を確認すると実はロシアのみならず中国とも隣接しており、元々微妙な位置関係にある国ということがわかります。

そのカザフスタンにおいて、年明けの1月4日深夜に政府が燃料価格の大幅引き上げを実施したことをきっかけに大規模な抗議デモが発生し、全土で大混乱に陥る事態が発生しています。

国内でもこのニュースは一定程度流れているのでご存じの方も多いと思いますが、トカエフ大統領はCSTOと呼ばれる旧ソビエト連邦所属6か国からなる集団安全保障条約機構に部隊派遣を要請し、なんと1万5000名に及ぶ軍隊が派兵され暴動が地運圧される動きとなっています。

トカエフ大統領は91年からの独裁政権の中心的人物を完全更迭

カザフスタンはソ連が崩壊した1991年に独立を果たしました。

それ以来長くナザルバエフ前大統領の独裁政権が続き、2019年3月にようやく現職のトカエフが大統領となりましたが、実態はその後もナザルバエフによる院政が続いていました。

しかし今回の政変でナザルバエフ元大統領は国家安全保障会議の終身議長を解任させられ、また腹心のマシモフ元首相も国家反逆罪の疑いで拘束されることとなり、トカレフ大統領がロシア軍を後ろ盾にしてこれまでの独裁勢力を一斉排除する事態に進展しています。

この暴動では既に8000名の暴徒が逮捕されていますが、外人のテロリストと思しきものもかなり含まれており、カザフスタンに軍隊を派遣していち早く暴動の鎮圧に務めたロシアのプーチン大統領もこの混乱に乗じて他国から混乱の火だねを大きくした輩が存在するとの発言をしています。

天然資源豊富な国で第三国から狙われる国としても有名な存在

カザフスタンは内陸国で目立ちませんが実は相当な資源国であり、原油や天然ガスをはじめほぼありとあらゆる天然資源の宝庫で、ウラン埋蔵量も世界最大となっています。

それだけに周辺国が関心を示すのは当たり前で、上述のCSTOに加盟しているだけではなく上海協力機構・CSOのメンバーでもあることから中国の一帯一路にも参加しており、さらにイスラム教の国としてイスラム協力機構・OCIやトルコが主導するチュルク評議会のメンバーでもあるという、複数の周辺国と入り組んだ関係をもつ存在です。

ここでさらに混乱が起きることになれば相当危険な状況に陥ることも予想され、ここからの展開がどのようなものになるのかが非常に注目されます。

この暴動で拘束されたマシモフは元ソ連KGB出身で中国の武漢と北京に留学経験があり中国にも通じている人物ですが、なにより米国の現役大統領であるバイデンファミリー、ハンターバイデンと非常に密接な関係であることがまた取り沙汰されていることから話はさらに複雑化しはじめています。

西側諸国では一体どこの国がカザフスタンに仕掛けているのかはよくわかりませんが、次第によってはウクライナよりも遥かに大きな戦争の火種になりかねません。

国内ではあまり興味を持たれていませんが、為替にとっては非常に大きなリスク材料であることを認識しておきましょう。

こうした地政学リスクにロシアが絡んでくるのがキナ臭いものを感じますが、引き続きこの動向を注視すべき時間帯です。