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日本時間の3月7日深夜0時と翌8日の深夜0時から米国議会上下両院の公聴会に出席し、今後の金融政策について議員からの質問に答えました。
両日ともに名帳場の議会証言であるため、海外時間中のその発言を巡って相場が想像以上に上下動するといった激しい展開となりました。

まず初日、上院公聴会に出席したパウエル議長はブレーナード副議長が転出したこともあってか全体的にタカ派の発言を繰り返し、5週間足らず前に減速したばかりの利上げペースについて、根強いインフレを抑制するために再び加速させる必要性があるかもしれないと口火を切ったことから株式市場はそれを大きく嫌気し、NYダウを中心最終的に570ドル近い下落を喫することになりました。
前回FOMCではディスインフレのプロセスが始まったとパウエルプット派を喜ばせるような発言をしたパウエル議長でしたが、今回は一転してタカ派でターミネーションレートも現状の想定レートよりもさらに上昇させる可能性もあることを示唆しました。
これを受けて市場は3月のFOMCが0.5%の利上げになる可能性を猛然と織り込むことになり、債券金利は上昇しドル円も137円台中盤まで上昇することとなりました。

米国の金融アナリストの見方では、パウエル議長はとうとう株価重視でインフレ対策を調整していくことを断念し、国民生活に直結するところを重視してインフレ退治を行うよう方針変更したのではないかといった観測も飛び出すこととなっています。
たしかにリーマンショック以降FRBは延々と株価対策、つまり株価が下がらないように細心の注意を払いながら緩和政策を行ってきたのは事実で、これを続けていては本質的なインフレファイトを実現できないという見方が広がっているためこうした観測が飛び出し始めているもの思われます。
また、バイデン政権からもインフレ退治を今年中に完結してほしいという強い要望が出ているようで、そうしたことも背景にあってタカ派的発言が強まったことも考えられます。

行き過ぎたタカ派イメージを翌日の下院公聴会で調整する一幕も

前週末、アトランタ連銀のボスティック総裁が今年はFOMCの投票権をもっていないながらも、このまま堅調が経済指標が推移するなら利上げを調整する必要もありうるという珍しくもハト派的な発言をしたことから、相場全体としてはFRBがハト派的展開をすることを期待していただけに、7日のパウエル発言は相当市場に大きな影響を与えることとなってしまいました。
これを危惧したのか8日の下院公聴会に登場したパウエル議長はタカ派発言をトーンダウンさせ、3月会合についてまだ何も決定しておらず、データ次第の状況であることを強調するという軌道修正に務めたことから大幅に上昇したドル円は一転して136円台中盤まで押込まれるという場面もありましたが、一旦は値を戻してNYタイムの取引を終えています。

ただ、利上げが継するという観測は依然根強く、パウエルによって一旦吹き込まれたFRBのタカ派的印象の復活はそう簡単には払拭できなかったようです。

とにかく市場はFRBの利上げ早期停止を懇願する状況に

ここ10年、金融市場はとにかく問題が起きれば中央銀行がなんとかしてくれるという発想を強めており、直近ではFRB高官がハト派発言をすれば株価は盛り返しドル円は売られて債券金利は低下するものの、逆に厳しい利上げ発言が飛び出す市場の状況はほとんど変化していないのにいきなりセンチメントだけが大きく変わり、売り圧力が強まるという相場状況を延々と繰り返しています。
アルゴリズムが主体で相場の動きや要人発言に対応していることもこうした相場を示現しやすくなっていますが、日々一喜一憂して上下動を繰り返す相場状況は市場参加者を疲れさせることから、この状況が本当の利上げ停止になるまで続くのかが大きく注目されはじめています。

パウエル議長は表面上温厚そうにみえますが、過去の議会証言で民主党議員から厳しい質問を受けて激昂し、自分は共和党支持者であるなど声高に発言したこともあるぐらい結構感情的なタイプで、議会証言は想像以上に危ない部分を抱えていることがわかります。
これまでは政策的な支柱はブレーナードが務めてきただけに、パウエルがここからどうFRBを仕切っていくことになるのかについても市場の関心が集まりそうです。
週末には雇用統計、週明けには月次CPIの発表と重要経済指標が波票されますが、とにかく3月FOMCを通過するまでは落ち着かない相場が続きそうです。