2022年の年初から激しく上昇して116.350円まで上げにいったドル円ですが、その後はまさかのロングの投げが出て113.500円近辺まで下落しました。
さらに週明け戻しても今度は日銀の利上げ検討観測記事に外人投資家が惑わされることになり、結局政策決定会合で黒田総裁が利上げ議論を完全否定したことから115円超までショートカバーが出て、ショーターが焼かれてしまうという投げ踏み応酬の展開となってしまいました。
年明け1月相場が始まってまだ半月足らずですが、すでにドル円は猛烈な上下動を繰り返しており、米国が利上げだからドルが上昇するといった単純な相場ではなくなりつつあります。
為替相場は経済理論実践の場ではないので市場参加者の想定通りに動きませんが、それでもこれだけ明確に利上げが市場で織り込まれ株が嫌気して売られても、ドル円をはじめとするドルストレートが上昇しないというのは割に合いません。
インフレに比べて債券金利上昇が鈍いことが実質実効レートを下げている?
足もとの市場では米債金利は確実に上昇しており、10年債はすでに1.9%目前、2%に到達するのは時間の問題となりつつあります。
恐らくこの調子でいけば2.5%超えもそれほど遠い未来の話ではなくなるでしょう。
ただ、ドル円で見るとすでに115円にすら回帰することができなくなっており、年初の116円超の相場が嘘のような状況になってきました。
ただ物理的な米債金利の上昇は間違いないもののCPIなどの物価インフレ率はすでに7%と高く、足もとの債券金利水準の実質実効レートはこの表面数字よりはるかに下なので、これがドルがすべての通貨に対して買われない大きな理由であるとの指摘も市場からは聴こえてくる次第です。
ドルの強さを示すドルインデックスは一時期に比べれば上昇はしているものの昨年秋口の上昇水準を超えるような動きにはなっておらず、ドル円以外でも明らかにドルが買われていないことを示しています。
ドル円は債券金利上昇より米株下落に連動しはじめている
JPモルガン・ダイモンCEOなどは3月に一気に0.5bp上昇かつ年内7回利上げの可能性も口にし始めていますが市場の反応はイマイチで、為替よりも株のほうがそういった見通しに大きな影響を受けています。
ドル円については115円に復帰することもできず、26日のFOMCまではさらに下値を探る動きにでる可能性すら想定しておくべき状況でしょう。
ファンドの債券トレーダーや株式トレーダーは利上げの想定に対応した分散投資へとシフトしているようで、債券では長期債が売られて短期債が買われる動き、さらに株式市場では金利の影響を受けやすいハイテク株が総じて売り込まれているのが目につきます。
ドル円が株価の下落についていくことになった場合、長期のサポートラインである112円を抜け始めると様子のおかしな相場になることが考えられるため、ここからの動きは相当注視してトレードしていく必要がありそうです。
実際116.350円までつけた直後に113.500円まで下落というのはまったく想定できない動きだったので、勢い112円台まで下落するというのもありえない話ではないと認識しておいたほうが良いでしょう。
通常2月に入るとドル円は3月末にむけて上昇しやすくなるのでクロス円も連動しやすく、そこまで少し様子を見ながら控えめにトレードしたり、どこまで底値をつけるのかを見極めて上でトレード再開するというのもひとつの考え方になりそうです。
いずれにしても政策金利の安い通貨を売って高くなる通貨を買い持ちしていれば自動的に利益に恵まれるというような簡単な相場は為替にはないことを肝に銘じて取引していく必要があります。
年明けからのここまでの相場では本邦個人投資家も海外の投機筋も投げと踏みの応酬に巻き込まれて、それなりの損を食らった市場参加者が多かったように見えます。
今年は中央銀行の政策決定が最大の相場変動要因となるのは間違いありませんが、それでも相場は一定のトレンドを作って上昇や下落一本やりでは動かないということは意識しておかないと、余分な動きに巻き込まれて大事な資金を失うことになりかねない点に気を付けましょう。