本邦介入の司令塔 神田財務官

8月第三週、本邦はお盆シーズンまっさかりですが週明けからドル円は一気に145円を超えるところまで上伸し、いよいよ財務省の円買い介入が行われることになるのかに注目が集まりつつあります。
一番参考になるのは昨年の介入水準ということになりますが、財務省は他国に対してはあくまで高値牽制ではなくスムージングを目的にしているとしているので、単純に145円超えたから即介入と言う話にはならなさそうな状況です。
それではどこで介入を行うことになるのかを改めて考えてみることにします。

1日2円以上の上昇は極めて危険な状況


昨年の介入を見てみると1日50銭から70銭程度の上昇は暴騰とは言えないことからそのまま推移を見守ることが多かったようですが、145円を超えていきなり1日に2円以上上昇した場合、つまり147円に即座に突入するような相場だと財務省も何等かの介入の手立てを講じてくることが考えられます。
とくに150円に接近したタイミングでは相当財務省も警戒したようで、日銀黒田総裁の会見後に上昇した段階ですかさず介入を行っていたことが思い出されるところです。
今回もすでに神田財務官は145円を超えてきたことで介入の準備を始めているといった報道が海外メディアから出始めていますから、決して甘く見ることのないようにトレードすべき時間帯です。

投機筋が相手ということになるので、円売りを仕掛けてくる連中にいかに大きなダメージを与えるかも重要な問題のようで、ショートのたまり具合も相当チェックして介入に入っていることが窺われます。
本邦勢がお盆休みのこの時期は海外勢も多く夏休みをとっており、そもそも流動性が枯渇する時期のため、このタイミングでドル円が上昇した場合には財務省にとっても市場に迷惑をかけることなく楽に介入が行える可能性が高まります。
一回の介入でどれだけの資金を投入するか次第の問題もありますが、少なくとも5円近い相場の下落が見込まるので145円から上での介入ならばなんということもなく140円レベルに押し下げられることは覚悟しておくべきで、この時期にロングをもつならこまめにリカクするなりストップロスを入れておくなりといったリスク管理が重要になります。

東京の管掌時間以外でも介入は行われる

昨年の介入でびっくりしたのは東京管掌時間、つまり日本時間の午後5時以降のロンドンタイム以降でも介入が行われていたことです。
東京タイムで何も起こらなかったから一安心ということは全くなく、海外の時間帯でも大きな動きが出ると翌朝には介入などという事が起きる可能性についても考えておく必要がありそうです。
とくに海外時間は投機筋がこぞって市場に現れることから介入の危険度は高まることになります。
アジアオセアニアタイムのいきなりの介入などということも十分にあり得る状況です。
過去には米国財務省と連携が上手くいかなかったこともあって海外時間の財務省の単独介入というのは相当レアケースとして扱われていましたが、昨年の動きを見る限りそんなことはないことが見えてきます。

絶対的介入実施水準はやはり150円超の状況か

急激な相場変動を収まらせるためというのが財務省の介入に関する大義名分ですが、実際にそれ以上円安が進んでは困るという水準があるのも事実のようで、現状ではやはり150円を超えることは絶対に避けたい状況になっているようです。
現状でドル円が150円を超えると言うのは実質実効レートで考えると1980年台中盤の1ドル270円レベルに匹敵する円安水準となり、さすがに岸田政権にとっても容認できるレベルではなくなります。
したがって1日2円以上の上昇でなくても150円を超え始めますと相当介入リスクが高まることも意識しておきたいところです。

米国のお墨付きは得られているのか

日本の単独介入ということになると米国財務省の事前承認が得られているのかという問題が浮上しますが、昨年大幅に防衛予算を拡大しその殆どをバイデン政権に岸田首相が献上したことからある程度は大目に見てもらえるようになっているのは事実のようです。
ただし、インフレ対策に躍起の米国政府にとってはこの時期に闇雲にドル安が進行してしまうと輸入物価がかなり押し上げられることになるため、過度な円高にシフトすることは好まれない可能性もありそうです。
現状では米国における本邦からの輸入額はかなり限定されてきているので150円が140円になってもあまり大きな問題にはならないのかも知れませんが、ドル円水準は過去40年以上政治的な判断でその値づけがされてきたというかなりクリティカルなものとなり、米国の意向は非常重要であることも意識しておきたいところです。

いずれにせよ今年の最高値を超える動きになっているドル円ですからここからさらに上昇することあってもなんらおかしくはない状況です。
まさに財務省の介入との戦いと言う時間帯になりますが、できるだけポジション保有の時間を減らすなどしながら上手く利益を確保していきたい時間帯です。