1月の実質最終週の最大のイベントといえば27日午前4時に発表となるFOMCの政策決定と誰しもが思っていたわけですが、ここへ来て注目の的になってきているのがロシアのウクライナ侵攻実施問題です。
国内の個人投資家にとってはウクライナもカザフスタンも地政学リスクの危険度としてはしっかり認識されていませんが、欧州圏にとっては地続きのリスクの問題であり、とくに天然ガスの供給をロシアに依存している欧州諸国にとっては資源確保という安全保障上のリスクさえ絡んでくることから、非常に頭の痛い問題になりつつあります。
これまで中国の冬季五輪が終了するまでは何も起こらないだろうとかなり楽観的な見方が強かったですが、ウクライナとの国境に終結するロシア軍を見て米国バイデン大統領はウクライナ大使館の職員家族を避難させるとともに1000~5000人規模の米軍を東欧とバルト三国に展開することを検討中との報道も出始めており、さらに米国はロシアとウクライナへの渡航を禁止するなど北京五輪前に戦争がはじまりかねない状況になっています。
エネルギーのみならず食料にも深刻な影響か
こうした地政学リスクが顕在化すれば為替で激しいリスクオフが起きることは予想できますが、それ以外にもロシアからの天然ガスが供給停止となれば原油価格にも影響することになり、ウクライナは重要な穀物の収穫国でもあるので食料価格の高騰にも火がつく可能性がありそうです。
ロシアがウクライナ南部の一部を併合し、同国東部の広い範囲で紛争を起こした「分離派」を支援したのは7年程前のことですが、今回は完全に国ごと自国のものにしようとしている気配が濃厚で、ウクライナがEUに接近していることを完全に止めようとしていることがわかります。
足もとではロシアがNATOに対してウクライナの加盟を認めないよう要求しており、ウクライナ侵攻が現実のものになるのかはまだ不透明な状態です。
ウクライナ国境付近にはすでに10万人規模のロシア軍が控えているとされており、本当に武力衝突が起きるとなればかなり大きな戦争に発展することも十分に考えられるでしょう。
中国が猛反発する可能性も
市場の事前予測では少なくとも北京五輪が開催される期間中は何も起きないのではないかといった見方が強かったですが、これで開催期間中と完全にオーバーラップする形でロシアとNATO軍、ならびに米国を交えて一戦構えるような事態になれば北京五輪は完全に台無しになる可能性もあり、中国の出方にもかなり注目が集まることになりそうです。
過去のナポレオン時代の話ではありませんが厳冬期にこうしたウクライナ侵攻が行われるというのはあまり聞いたことのない話ではあるものの、天然ガスを打ち切ることでダメージを与えるのには絶好の季節でもあり、このまま深刻な状況に突き進むこともありえます。
欧州と地続きのこのエリアでの紛争問題というのは日本人には今一つ緊張感が伝わらないテールリスクのような印象がありますが、走り始めたら相当大きな問題になるのでリスクオフが一気に進むことになるかもしれません。
EU圏内ではドイツが比較的ロシアに歩み寄るような姿勢を見せていますが、それ以外の国は厳しい姿勢を崩しておらず、本格的な戦争に突入しかねないところに差し掛かっていることは注意しなければなりません。
この時期にウクライナを巡って東西諸国が本格的な戦争に陥るというのは理解に苦しむものがありますが、それぐらいクリティカルな時間帯に差し掛かっていることを認識する必要があり、FOMCの結果以外にも激しい相場かく乱材料であることは覚悟しておいた方がいいでしょう。