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財務省が10月31日に発表した9月29~10月27日の1か月における為替介入実績は6兆3499億円で、単月の円買い・ドル売り介入として過去最大を更新するものとなりました。
24年ぶりに実施した9月22日分を含めた一連の介入額は9兆1881億円で、1991年に円買い介入をしたケースに比べるとほぼ倍近い金額となったことがわかりました。

介入ごとの詳細金額は開示されていませんが、21日ロンドンフィキシング手前の11時40分ごろから翌日の明け方まで継続された介入は5.5兆円、明けて週初24日のオセアニアタイムの突然行った介入は1兆円規模であったとみられており、ステルス介入はどうやら行われなかったことが見えてきます。
全体的な金額としてはもっと大きなものだったという市場予測からすると意外に少ない金額であり、流動性の乏しい時間帯に一気に介入したことがかなり大きな下げを示現させたことが窺われます。

鈴木財務相は一定の効果を自画自賛するが市場の評価はまちまち

鈴木俊一財務相は11月1日の閣議後記者会見で、政府・日本銀行が急速な円安を阻止するために10月に実施した外国為替平衡操作いわゆる為替介入について、「一定の効果があると考えている」との認識を示しています。
しかしすでに1日の時点で148.800円レベルまで上昇しているのがドル円で、この程度の水準に留めるために9.1兆円という巨額の原資を投入して介入を行うことが本当に意味があるのかには大きな疑問が残ります。
たしかに日銀の介入により市場には疑心暗鬼が渦巻き、なかなか上値を追えなくなったことは事実ですが、急激な上昇でない場合には介入の口実が失われることになるので、ここからドル円相場がじり高で上昇した場合財務省は一体どうするのかが注目されます。

米国財務省のイエレン長官は、日本からの為替介入については聞いていないと語っていましたが、その後大きな問題になっていないところを見ると覆面介入に話を合わせただけの可能性が高まります。
しかし米国の管掌時間に介入を行うことは決して心よく思っていないのも事実で、今後の財務省の介入がどのように行われることになるのかにも関心が集まっています。

問題はFOMC以降の相場状況に対する財務省の対応

11月3日には11月のFOMCが開催され、12月以降利上げがどうなるのかについて市場では大きな関心が集まっています。
仮にパウエル議長が先行きに対してハト派的な発言を繰り出してくれば米債金利も低下し、ドル円は下落傾向になるものと思われますが、インフレの継続を危惧して強気の発言をした場合には米債金利はさらに上昇、ドル円は再度152円方向を試す動きになることから、果たして本邦財務省はどう出てくることになるのかが気になるところです。

この1か月半の動きを見ていると、1日に2円前後の急激な価格変動があった場合確かに躊躇なく介入に踏み切っていることが窺われますが、ファンダメンタルズ的に見て米国の利上げ起因でドル円が上昇するときに簡単に介入できるのかという問題も残り、なによりここからどこまで上昇するか判らないなかで延々と継続介入を行うことはできないのが実情で、場合によっては年内に160円を超える可能性すら残されている状況です。
1998年の介入でも大きな介入実施はほぼ3回程度となり、同じことが今回も行われるかは分かりませんが、ここから残された介入の回数は多いものではなさそうです。

年末にかけては実需でもドル買いが旺盛になるだけに価格は上がりがちに

例年11月から12月にかけては本邦の実需でもドル買い需要が多くなります。
とりわけ冬場に向けてのエネルギー需要が活発になる時期ではドル建ての決済も増えることから、投機でなくてもドルは上昇しがちです。

介入で価格水準が下がれば輸入勢にとっては大きな恩恵になると思われますが、ドル買い需要自体を止めることはできないので、時期的にみても介入はしにくい時間帯に入りそうです。
今回の介入原資は1ドル75円といったレベルでドル買い介入をして米債にしたものなので、単純に国家予算を投入したというよりは遠慮なく使える原資とも言えそうですが、さすがにそれも限度問題がありそうで、20兆、30兆と投入した場合に国民の批判が高まることも十分に考えられるだけにここからはかなり難しいコントロールが要求されることになりそうです。