ワシントンからの記者取材で協調介入の可能性を報道したTBSニュース

先週22日の金曜日昼過ぎ、日米の財務相会談がアメリカで行われたことを報道したTBSニュースで、さらに市場が注目していた協調介入についても議論されていたことがJNNの取材でわかったと伝えたことから、この直後から市場は身構える動きとなり128円台半ばより上で推移していたドル円は、東京タイム15時には127.731円まで下落するという弱含みの展開になりました。

市場参加者は急に日米の協調介入が行われる可能性は低いと感じていたものの、メディアの独占取材報道ということもあって、用心してドル円のロングポジションを落としたというのが正直なところだったと思われます。

米国の金融ブログサイトZeroHedgeでは鈴木財務相が協調介入を打診したもののイエレンに即座に拒否されたとされていますが、実際には30分の話で介入の話すらできなかったのではないかといった否定的な見方も出て回っていました。

そして24日にロイターが本件に関して追加の報道をしていますが、ワシントンで開いた日米財務相会談で、ドル売り/円買い介入について両財務相が協議するとともに、米国側が「前向きに検討してくれるトーンだった」とTBSが報じた件に関して、財務省幹部が帰国後匿名を条件にロイターに語ったところによれば、TBSの報道は事実に反しており当局として取材に応じた事実もないと完全否定をしています。

TBSは果たしてワシントンでどういう取材をしていたのかが問われますが、独占と称して一社だけ日米協調介入の可能性を示唆したのは大きな誤報であり、本来なら誤報として正式に謝罪すべきレベルであるとも思われます。

そもそもよほどの事がない限り米国が協調介入に参加することはありえない

過去40年近いドル円の歴史を見ると、確かに米国の都合で景気が悪くなるとドル安を強力に志向し西側諸国に連携したドル安協調介入を促すといった事態が起きたことは厳然たる事実です。
その典型が1985年のプラザ合意で、その後本邦は1998年にも単独でドル売り円買い介入をおこなっています。

したがってこの円安状況で財務省が円買いによる為替介入をする可能性は全くないとは言えませんが、米国金融当局の承認が必要なのは間違いなく、ドル円に限って本邦側の事情だけを与して、インフレにあえぐ米国がドル安のために日本の財務省とこのタイミングに協調介入に踏み切るなどということはまったくありえません。

この先リセッションが強まり米国が再度不景気に陥れば莫大な連邦債務の負担軽減のためにドル安政策を強く推し進めることはあると思われますが、それはあくまで米国サイドの都合であって、日本を救済するような目的で実施に至ることはまずないと考えるべきです。

今週は28日に向けていよいよドル買い円売り再開か

本邦財務省関係者からの発言として日米協調介入が否定されたこと、また本邦財務省による単独介入すら承認されていない可能性があることなどから、28日の日銀政策決定会合にむけてドル円はさらに一段の円安が進む可能性が高まっています。
現在のところ129.500円レベルに相当大きなノックアウトオプションもあり、連休を控えて130円から上には相当なリーブオーダーが並ぶことになると思われますが、投機筋のセンチメントを見る限り、130円はとにかくつけにいかないと気が済まないという印象はかなり強く、ゴールデンウイーク前になんとしてもつけに行くことは覚悟しなくてはならないようです。

介入ができないとなれば日銀がなにか政策変更でドル円の上値を抑えるようなものを出してくることを期待する向きもいるようですが、22日のコロンビア大学での黒田総裁の講演内容を聞いている限り、緩和措置とイールドカーブコントロールによる金利上昇の抑制を簡単に日銀がやめるとは思えません。
黒田総裁の当日の会見での政策継続の強い意志の発揮で、待ってましたとばかりに投機筋にドル円が買い上げられてしまうシナリオが今もっとも可能性の高いものになりつつあります。

テクニカル的に見るとドル円が130円を超え始めた場合には131円レベルがチャートの節目となってきており、OverBoughtとなればそれをさらに超えることも考える必要があります。
この動きは例年のシーズナルチャートとは全く別の動きになっており、それぐらい円売りのトレンドが明確に出ていることを意識しなくてはならないようです。