7月11日から来日中の米国イエレン財務長官は、12日に財務省内でおよそ1時間半に渡って鈴木俊一財務相と会談しましたが、一部の市場参加者が期待した円安に対する協調阻止行動については会話が成立しなかったようで、為替の問題について適切に協力することが共同声明に盛り込まれただけの結果となりました。

為替に関しては、「ロシアの侵略による経済的な影響が為替相場の変動を高め、経済と金融の安定に悪影響を与えうる」との内容も声明に織り込まれていますが、この部分は日本政府が頼み込んで入れた内容のようで、実際には会談で為替介入に関する議論はなかったようです。
ロイター通信などによるとイエレン氏は会談後記者団に対し、為替介入について、「まれで例外的な状況でしか正当化されない」と改めて慎重な見解を崩しておらず、基本的に日米双方で連携して為替介入を行う意思がないことを改めて確認することとなってしまったようです。
鈴木氏は会談後の記者会見で、「最近の急速な円安について憂慮し、高い緊張感を持って市場動向を注視していくとの日本の立場を説明し、ご理解いただいた」といった内容を口にしていますが、市場参加者には為替介入が今後も全くその可能性がないことを改めて認識させる会談になってしまいました。

イエレンは黒田会談では緩和継続を直に要請か

イエレン財務大臣は鈴木財務相との会談に先立ち、日銀の黒田総裁とも会談を行っていますが、その中身は一切開示されていません。
ただ、米国バイデン政権は11月に中間選挙を控えている中でインフレ対策がほとんどうまくいっておらず、ドル高は選挙まで重要な対策として維持しておきたいのは間違いない状況です。
また、日銀が主要国ではただ一行継続している金融緩和についても、世界の金融市場の流動性を確保するためにはそのまま続けることが望ましいと考えているのは間違いなく、その旨を黒田総裁に要請した可能性が高まります。

この日銀の緩和継続は米国政府から強い依頼があってやめることができないといった見方も出ていたほどなので、黒田総裁が確信犯的に緩和を継続する姿勢を一切崩さないのはそのせいなのかも知れません。

また、一部の報道に見られたように、黒田総裁を岸田政権が早期に辞任させてクビのすげかえを行うのではないかといった観測も参議院選挙での自民党の圧勝を受けてほとんど可能性がなくなったようで、黒田総裁は来年4月までの任期を全うし、それに繋がるような形で日銀の緩和措置はそこまで継続されることになると思われます。
ただし、ここまで国債市場を壊すような動きをして本当に市場が維持できるのかというのはまた別問題であり、先行きの日銀政策に相当な重しになることはもはや間違いないようです。

21日の日銀政策決定会合は一切変更なしでまたドル円上昇の可能性

こうなると気になるのが、7月20日21日に渡って開催される7月の日銀政策決定会合の結果発表です。
一部の海外ファンドなどは、日銀はイールドカーブコントロールの上限金利だけでもいじって事実上の緩和継続巻き戻しをするのではないかと見てドル円で円買いを行ってきたようですが、そうした状況が現実になる可能性はほとんどなく、変更なしを受けてまたもやドル高円安が進む可能性がありそうで、さらに注意が必要です。

すでに足もとでは137円台後半まで上昇したドル円なので、ここから140円に到達するのは決して無理な話ではなくなっており、一気に突き抜けることも想定しておきたいところです。

相場の状況を観察していると、どうやら日銀黒田総裁をはじめ日銀の要人が何か語ったという報道がでると確実にドル円は上昇しています。
137円を突き抜けたのも、まさに黒田総裁発言が起因していることは明確です。

8月に入ればさすがのドル円も例年の夏相場のように一旦下落することが予想されるだけに、残されているのはこの7月の後半の時間帯ということになります。
市場参加者の多くは、かなりいいところまで上昇したのである程度の調整局面を迎えるのではないかという見方をしていましたが、結果からいえばさらにドル円は上昇の過程にあることは注意しなくてはなりません。

ここからの7月相場はかなり難しい時間帯を通過することになり、楽観的な見方だけでトレードしていると思わぬ損に見舞われる可能性も高まります。
日ごと以上に注意深い売買を心がけることが重要です。