7月21日は東京タイムに日銀の政策決定会合があり、欧州時間にはECBの理事会の決定内容が発表されるとあって1日で二つの大きなイベントをこなすというかなり忙しい日となりました。
大きな混乱はなかったものの、相互の政策が通貨の動きに影響を与えるだけに、決してやりやすい相場ではありませんでした。
日銀政策決定会合は現状維持で変わりなし
先に発表となった日銀の政策決定会合の内容は現状維持ということで、変化のないものとなりました。
内容の発表を受けて一旦は上昇したドル円でしたが、ロンドン勢が早くも売り向う相場となり、一旦は138円割れを試すようなトリッキーな動きとなったのが印象的でした。
午後3時半からの黒田総裁の会見では、少し利上げをしただけでは円安を止めることはできないとして、今後も継続して緩和に尽力するといったいつもの発言があり、会見を終えてECBの理事会の発表までドル円はまた上昇する相場となりましたが、今回は139円台にのせることはなく、意外におとなしい展開となりました。
一部の投機筋は、今回何らかの政策変更があることを期待していたようですが、現実的なものではないことを事前に察知してあらかじめポジションを手仕舞っていたようで、大きな動きはみられませんでした。
ECBは市場の予測に反して50ベーシスポイントの利上げを決定
大きく動いたのはECB理事会の結果発表で、市場は25ベーシスポイントの利上げを織り込んでいたものの、今回は11年ぶりに利上げでいきなり50ベーシスポイントを利上げすることとなりマイナス金利は完全に解除される動きとなりました。
この上げ幅は実に2000年以来22年ぶりのものであり、とにかくインフレ懸念を払拭したいというECBの強い意向が働くものとなりました。
これを受けてユーロは対ドルで大きく上昇することとなり、逆にドル円はそれに押される形で弱含む展開となりました。
これで日銀を除く主要中銀は利上げに動き出すことになり、日銀だけが全く異なる政策を延々と継続するというかなりのコントラストが市場で見える形となりました。
ただ、EU圏のインフレはほぼ米国並みの状況なので、今回一回50ベーシスポイント利上げをしても全く追い付かないのもまた事実で、今後どれだけ早いペースで利上げが行われることになるのかに市場の関心が集まることになります。
週明けいよいよ米国FOMCが7月最大のイベントに
日欧の中央銀行政策決定会合を通過して、市場はいよいよ週明けの米国FOMCに注目が集まることになります。
市場の事前の観測では、今回は100ベーシスポイントではなく75ベーシスポイントの利上げに留まるとの見方が強く、その後は一旦利上げを停止するのではないかといった羅漢的な憶測も出回りはじめています。
しかし米国のインフレはかなり深刻で、とくにエネルギー系での価格の上昇がインフレを大きく増幅させていることは間違いなく、利上げだけで果たしてインフレを制御できるのかがかなり大きな関心事になりそうです。
相場の動きがここまで中央銀行の政策決定内容に左右されるというのもかなり珍しいですが、株も為替も中銀が値付けをして人工的に動かしているのはもはや明らかとなり、当分こうした状況は続きそうです。
7月末のFOMCを終えれば市場は本格的に夏休みとなり、相場の動きも非常に限定的なものになることが予想されます。
3月から大きく動いたドル円はここで一旦トレンド終了となる可能性も高く、8月相場が例年のような動きに回帰するのかどうかも注目されるところです。
これまでインフレが起きなかったことから、株価が低迷すればすぐに緩和措置を実施することで簡単に値を戻すことができていましたが、ここからはどの中央銀行も引き締めを行うと簡単に緩和には戻れないという大きな問題を抱えることになり、とくにインフレとリセッションが同時に到来することになると中央銀行の政策の舵取りも難しいものとなるため、毎回政策決定を巡って神経質な相場の動きに直面することになりそうです。