10月第一週、週初から米株は大きく買い戻され、米債にもかなりの資金が投入されたことから金利が低下、ドルは広範囲に多通貨に対して下落するというかなり意外な相場展開となりました。
これは月曜日に発表された米国ISM製造業景況指数が振るわなかった、またはFRBもBOEと同様に早晩利上げ幅を縮小してくるのではないかという妙な楽観論が市場を覆い始めたことに起因し、米国では中央銀行挫折期待相場が始まったとさえ報道されました。

確かにBOEは大きく政策転換しましたが、FRBが利上げを早期に中止するといった話はどこからも出ておらず、完全に市場が勝手に期待して売られ過ぎた相場を猛烈に買い戻す動きになっただけの展開でした。
これは今年7月の相場でも顕著にみられたものですが、また同じ動きが顕在化してしまいました。

FRBが利上げを留まるというBOE的挫折を期待した向きは完全に敗北

しかしこの中央銀行挫折期待相場は、7日金曜日に発表された米国雇用統計の結果で見事に粉砕されることになります。

9月の米雇用統計結果は非農業部門雇用者数が前月から26万3000人増加し、伸びは8月から鈍化したものの、市場予想の25万人増を上回ることとなりました。
失業率は3.5%と、前月から0.2%ポイント低下しています。

労働市場は引き続き過度に過熱していることから、11月のFOMCでFRBが75ベースポイントの利上げを行うことが確実になったという見方が広がりました。
さらに金利上昇によって来年の景気後退リスクが一層高まるという悲観的な見方が台頭してきたことから、米株三指数は週前半の上昇をすべて吐き出すこととなり、NYダウからNASDAQ、S&P500に至るまで大幅が下落を示現して週の取引を終えています。

結果的に週初から始まりかかった中央銀行挫折期待相場は、5営業日も持たずにおわりを迎えることとなりました。

7月にもみられたこの楽観期待相場はまたしても完全に期待を裏切られる展開となってしまいましたが、2008年のリーマンショック以来相場になにかあれば必ず中央銀行が助けてくれるという過度な市場の依存度の高さが、こうした期待相場を生み出していることがわかります。

今年の米国相場は中間選挙でも株価が上昇せず停滞する可能性大

今年、米国は中間選挙年のため毎回この時期からは株式市場は下がらずに、あるいは上昇基調で展開することが多いのですが、今回に限っては例年との勝手がかなり違うようで、選挙前にさらに下げる可能性も考えておく必要がありそうです。

今のところドル円などは完全に米国10年債利回りの動きと強い相関性をもっていますが、為替市場は完全にドル一強体制が確立してしまっており、週初一旦は大きく戻りを試したユーロやポンドも早晩ドル高に押されてもとに戻る可能性がではじめています。
ドルの強さを表すドルインデックスも112レベルまで回復していて、さらに9月につけた上値を目指す可能性があり、ドル独歩高は少なくとも年内までは続きそうな状況になってきています。

ドルインデックス Data Tradingview

ドル円は146円をいつ超えていくかに注目

ドル円は金曜の雇用統計の結果を経ても145円台には返り咲いたものの、大きく146円を乗り越えていくような勇ましい相場にはなっていません。
やはり上にいけば再度本邦・財務省日銀の介入がある可能性を市場が意識していることが原因となっているものですが、その一方で特定の為替水準で介入が実施されるというより短時間での急激な上昇をけん制するのが大きな目的であるという認識も広がりをみせています。

週あけ以降145円が定着しじり高になっていけば、146円から先をつけに行く動きが出る可能性も高まっています。

Data Tradingview

先週一週間のドル円の動きを見てみると、週初に米債金利が下がったことを受けて一旦143円台を試す場面もありましたが、下値は想像以上に底堅く後半はすでに145円台で推移する時間が長くなってきています。
この先永遠にドル円が上昇するとは思えませんが、ある程度の高値をつけてから状況が変わることになるかもしれません。
そのトレンドが明確に現れるまでは当面下げたら買うの繰り返しで少額の利益を蓄積していく手法がワークしそうな状況です。

ポンドは14日BOEの緊急国債買入れ終了後の動きがどうなるかが問題

週初大きく買い戻されたポンドは、週後半にむけてまた垂れてくるという不気味な動きになっています。
とくにポンド円は一週間で行って来いのような相場展開で、週明けBOEが緊急対策として打ち出した英国債の買入れが14日で終了したあと、債券相場がどうなるか次第でポンドにも大きな影響がでそうな状況になってきています。

このまま激しい売りの動きが収まれば取り越し苦労ということになりますが、再燃するケースに十分に用心したいところです。

Data Tradingview

ユーロは引き続きドルに対して弱含むことを予想

ユーロドルもかなり分かりにくい推移を始めています。
9/28に記録した約20年3ヵ月ぶり安値0.9535が底になって一旦は大きく反発して戻りを試す動きとなり、10/4に一時1.0000まで持ち直す展開になりましたが米国雇用統計を受けて再度0.97台前半へと下落する動きとなりました。

ここから冬を迎えるユーロ圏はエネルギー問題でインフレの加速と景気の減速が同時に到来しそうな状況で、さらにポンドが大きく動き出すとそれにも振らされることが予想されることから、決してレベル感だけで買い向かったりしないほうがいい時間帯を迎えることになりそうです。

Data Tradingview

為替相場全般を見渡してみると、ドル円は小幅なレンジ相場継続、ユーロ、ポンドなどは行って来いのような動きが明確になっており、決して取引しやすい状況ではなくなりつつあります。
上に行くか下に行くかはほとんどの個人投資家が潜在的に意識することですが、こうした相場状況では短い時間足でトレンドが明確に出ている通貨ペアだけをセレクトしてトレンドフォローでついて行くことがもっとも懸命になりそうで、自ら相場を予想することに時間をかけるのはあまり意味がないかも知れません。
9月に引き続き十分に用心したトレードが必要となる時間帯です。