2020年ごろ、新型コロナが爆発的に感染し始めたのを契機として、米国政府から支給された多額の給付金を原資として一気に株式市場に乱入してきたのが、ロビンフッダーというロビンフッドのアプリを利用して株式取引に入ってきた集団でした。
彼らは特定のSNSサイトに終結して、この銘柄を買上げようと決めると、ひとりひとりの投資額は少なくても一気にミーム株と呼ばれる低位株を買上げることに成功し、プロのファンドと対峙しても全く引けをとらない仕手戦のようなトレードを繰り広げることになりました。
銘柄選択にも大したロジックはなく、1年以上この相場を荒らしまくった姿は過去には全くないものとして市場で恐れられることとなりました。

2022年年明け米株相場暴落で追証が発生しほとんどのロビンフッダーや行方不明に

ところが今年に入ってからの米株の大幅な下落により、状況が一変しました。
多くのロビンフッダー達は証拠金に一定以上のレバレッジをかけてトレードしてきていたため、株価が大幅に下げればそれに準じて証拠金を失うことになり、追証がある米株市場では立ちどころに資金を失ったあげく、さらに残債まで食らう始末で、2022年前半には完全にロビンフッダーと呼ばれた人たちは米株市場から姿を消すこととなってしまったのです。
過去の相場でも株式市場に素人が大挙して押しかけて相場を押し上げると、最初は良くても後半の下落相場で多くの人達が押し目で買い向かう行動にでるものの、そのまま相場がさらに底抜けてほとんどの参加者が姿を消すという状況に何度も遭遇することになるので、今回も完全に例外なくそうした状況が展開されるものと思われました。

7月に入って忽然とFXの世界に現れたロビンフッダー達

ところがいなくなったかに見えたロビンフッダー達が、今度はFX市場に大挙して参入しはじめたという話題が上がっています。
FXの世界では今年3月から6月まで円安が一大テーマで、投機筋も市場に資金を投入してきたことは良く知られていますが、この7月からはドル高はむしろ対ユーロで示現する様になってきており、足もとで一旦示現したユーロの対ドルパリティの流れにもロビンフッダーが深く関わり始めていることを伺わせています。

一気に市場に流れ込んで大したロジックもないまま一方向にトレードする向きが激増するというのは、流動性を確保するという意味ではそれなりの成果を市場に与えてくれることになりますが、株から為替の世界に移動するというのはかなり唐突で、ここから為替相場がどうなっていくのかが非常に気になる状況になってきています。
今のところ彼らのターゲット通貨はユーロドルということで、実際の取引ボリュームもここのところのパリティ騒ぎの支援もあって相当に膨れ上がっているようです。

こうした新規参入者で膨れ上がる市場は必ずふるい落としが待っているもの

ただこのような素人乱入相場というのは投機筋も構えていて、どこかでとんでもないふるい落としに出ることがあるので相当な注意が必要になります。
7月最終週、米国のFOMCを通過すれば市場参加者は激減し8月は閑散相場が続くことになりますが、この時期仕掛け売買を行う向きがでてくると驚くほど相場が下落したり上昇したりすることが考えられ、具体的にどのような売買が仕掛けられることになるのかはわかりませんが、かつて経験したことのないような凄まじい相場が展開するリスクは常に考えておく必要があるでしょう。

足もとの相場は株も債券も積極的に取引する気にはならないものとなっており、市場ではドル買いだけが取引の中心になろうとしているといった指摘も増えています。
しかし、それだけにドルが大きく下落してしまうような想定外の事態に追い込まれると相場は驚くほど荒れる展開になる危険性があり、先行きを断定せずに柔軟なトレードができる体制を常に取っていくことが重要になります。

ロビンフッダーのアキレス腱は完全な証拠金取引きであるということ

金融取引の場合、現物だけで借金を全くしないのであれば相場が下落してもとにかく耐え忍ぶことでやり過ごすことができますが、ロビンフッダーのFX取引は間違いなくほぼ100%がレバレッジを利用した借金取引となるので、10倍のレバレッジをかければ含み損も10倍になり、強制決済などが進めば同時多発的に相場が下落するタイミングが生じることになります。
このあたりをFXトレーダーとなったロビンフッダー達がどの位正確に把握しているのかはわかりませんが、株の暴落を生き抜いたとはいえ為替はそれとはまた別の厳しい世界で、誰かが儲かればその分を誰かが必ず損失負担しなくてはならないというゼロサムゲームが市場に凄まじい痛手をもたらすことになるという点は相当注意しなくてはなりません。
そうしたパニック状態がこの夏に訪れないことをひたすら願いたい時間帯です。