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9月最終週は週初から英国の債券やポンドの動きに関心が集中し相場は荒れ模様の展開が続いていますが、9月28日BOEイングランド銀行が突然宗旨替えともいえるような政策変更を発表したことから、為替相場はさらに激しい上下動に晒されることになり、市場参加者は半ばパニック状態に陥る厳しい状況となりました。

BOE突然の政策変更で相場は大騒ぎに

今年10月からBOEは英国債の売却によりQTを実施することを広範に宣言してきましたが、トラス政権が1972年以来の大規模な減税・財政出動を発表した途端にポンドが急落し、英金利が連日急上昇、英国債がメルトダウンしはじめました。
そのため、一転してこのQTを1か月ほど延期することを発表し、逆に28日から10月14日まで超長期債(30年債)の購入を行うことを発表しました。

今月のMPCで決定したばかりの内容を1週間も経たないうちに180度真逆の政策変更を打ち出したことにより、市場の懸念は大幅に高まる事態となっています。
イングランド銀行のこの決定で英国債金利は急低下することとなり、一時的にせよ一定の効果がでていることは確かで、米国債にも波及して米債金利は大きく低下し逆い株価が大幅上昇する動きとなっています。

今回のBOEによる超長期債買入れの背景には、直近数千件にのぼる年金基金がマージンコールに直面している事に対しての救済措置の意味合いが強いようですが、そのやり方には市場の不信感を積み上げる結果となってしまっており、ここからのBOEの信認性というものが大きく問われることになりそうな状況です。
米国の中央銀行の長であるパウエルFRB議長は、FRBは断固としてインフレと戦いBOEの財政ファイナンスのようなことは行わないと発言し、かなり皮肉めいた発言を繰り出しています。


28日の場合、BOEが上記の発表をした途端にポンドドルだけでも200PIPS程度の瞬間上下動を示現してしまい、この時間帯にポジションを持っていた向きは買っても売っても相当な損失を受ける結果となってしまいました。
結果的には底値で買った向きが大正解と言うことになりましたが、上下動の途上では先行きをしっかり見越すことができた投資家はかなり限られており、結果投げと踏みの応酬の中で損失を拡大させてしまった向きが多かったことが予想されます。

一方英国10年債は大幅に下落したもののBOEの緊急声明で買戻しが進んでおり、非常に短期間的な視点では何とか難を逃れる動きになっています。

市場が拒絶反応を示せば中銀は引き締めからすぐにQEを余儀なくされる事例に

今回のBOEの政策変更は、市場の劇的変化に対しての機敏な判断ということができますが、政策決定から1週間も経たないうちに真逆の政策へと変更してことについては、かなり市場から足もとを見られることに陥っています。
結局中央銀行はインフレの到来で引き締めを宣言しても、市場から債券売りや通貨売りの厳しい洗礼を受ければ政策決定から1週間もしないうちにすぐにまた緩和をするものだという理解が広範囲に広がってしまった可能性があり、FRBに対しても市場が同様の期待を高める可能性が指摘され始めています。

こうなるとまたしても楽観的な相場見通しが台頭してくることになり、ここからはFRBと市場との駆け引きがさらに激しくなることを心配しなくてはならないところに入りつつあるようです。

市場の関心の中心は円からポンドへ移行か

春先から為替市場では常に円の動きが注目されてきましたが、今回の英国の政権と中央銀行の政策の食い違いによる相場の大幅下落と、修正政策発動による激しい買戻しが起きたことで、市場の関心は円からポンドへとすっかり移行した感があります。
これにより円安が一旦停止することになるのかが非常に注目されますが、為替相場は常に各通貨間の相対的な関係を示すものなので、これをもってして円安一服となるかどうかは不明で、むしろ金融市場全体にこのUK市場の混乱が拡大することのほうを危惧すべき状況のようです。

イングランド銀行のこうした政策進行の失敗を目のあたりにすると、奇しくも30年前の9月にジョージソロスとの戦いに負けて大幅なポンド安と変動相場制に移行せざるを得なかったBOEの姿が今更ながらに蘇ることになり、市場参加者の不安は当面解消されなさそうです。

9月初頭にはこんなことが起きるとは誰も予想していませんでしたが、中央銀行の政策失敗は市場に相当な影響を与えるもので、一寸先は闇であることを改めて感じさせられる月末、半期末、四半期末相場となっています。