10月22日に閉幕した中国共産党大会において、胡錦濤前総書記が途中退席を余儀なくされるという驚くべき光景が世界に配信されました。
国営新華社通信は22日夜、英語版の公式ツイッターで「胡氏は体調が優れなかった」と報じていますが、実際は明らかに権力の座から習近平により引きずり降ろされるところを世界が目の当たりにした瞬間となりました。
総書記の左隣に座っていた胡氏は当初は退席を拒んでいるように見えましたが、結果的に係員に腕をつかまれた状態で壇上から引きずりおろされることとなり、習近平に権力が集中する瞬間となったことからその映像は相当な波紋を広げることとなってしまいました。
党大会は北京の習近平総書記(国家主席)の地位と思想に忠誠を誓うスローガン「二つの確立」を盛り込んだ党規約改正案を採択して閉幕し、大成功であったかのような印象を世界に与えています。
しかし世界はそう捉えなかったようでその影響はまず金融市場に強く示現することとなりました。
習近平がこれを最初から動画として世界に配信されることを画策していたのかどうかはわかりませんが、異例の総書記3期目入りを決めた習近平は最高指導部を側近で固め、自らに完全に権力が集中したことを鮮明にすることとなりました。
金融市場はいち早くネガティブに反応
一夜明けた香港の株式市場ではこうした状況を嫌気し、中国本土銘柄からなるハンセン中国企業株(H株)指数が2008年以来の下落率となる7.3%安を記録するとともに、オフショア人民元は10年の取引開始後初めて1ドル=7.3元台に値下がりを示現することになりました。
テクノロジー大手のアリババグループやJDドットコム(京東)、テンセント・ホールディングス(騰訊)、フードデリバリーの美団はいずれも香港市場で11%以上値下がりとなり、影響の凄まじさを物語る形となっています。
また中国本土市場からは外国人投資家が逃げ出し、香港・中国の株式市場接続を介した外国勢による24日の中国株売越額は179億元(約3680億円)と、2016年以降最高の資金逃避が起こっています。
この動きは中国、香港市場だけに留まらず、24日のNY市場では米国に上場している中国株が同様に急落する事態となりました。
中国株65銘柄で構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数は前週末比14%下落し、2013年以来の安値で終了しました。
また、時価総額は約930億ドル(約13兆8600億円)消失することとなっており、相当な大きさを示現しています。
インターネット関連大手のアリババグループとJDドットコム(京東)、百度(バイドゥ)は少なくとも12%下落し、拼多多(ピンドゥオドゥオ)は25%下げているので、中国銘柄はすべからく全滅状態です。
EVメーカーの蔚来汽車(NIO)は16%、理想汽車は17%それぞれ値下がりしており、業種を問わず中国資本というだけで売りに押された格好になっています。
習近平独裁体制は中国への投資的関心を大きく阻害する可能性も
今回の習近平三期目の強固な体制は習近平に異論を唱える人物を完全に排除したことになり、もはや異論を唱える人はいなくなりました。
今後も中国の経済成長がさらに低迷すると予測する向きが非常に増えていることが気になるところです。
今後習近平の都合のいい形で中国資産のポートフォーリオが組み替えられるようなことになれば、海外の投資家はさらにそれを嫌気して中国から資金を引き出すことも考えられるため、今後の市場の動きを注視せざるを得ない状況になっています。
2008年のリーマンショック後は中国が大幅な財政出動をするなどして景気を下支えすることになったのは記憶に新しいところですが、ここからは中国経済がもはや世界をけん引しなくなる可能性が高まり、それによりリセッションの進行を早めるドライバーになりかねないものがあるため、不安は高まる一方です。
とりわけ米国株市場では相場をさらに下落させる大きな要因になりそうで、世界が中国経済に期待し成長のお裾分けを得てきた時代はすでに終わりを迎えることになるのかも知れません。