11月も後半に差し掛かり、相場は週開け一旦休戦の時間に入ろうとしています。
例年11月24日の週、米国は感謝祭を挟んでその後ブラックフライデーという一大買い物イベント時期に突入することから、儲かっている市場参加者はすでに相場に入ってこない時期になり、場の薄い時間が続きそうです。
このためこの時期のトレードには日頃に増して注意が必要になりそうで、それまで投機筋が中期的に抱えてきたポジションの手仕舞いが一斉に出ることにもかなり注意が必要な1週間です。

FRBの弱気派と強気派の綱の引き合いがドルの上下動を誘発

Photo Fed

先週11月第3週はFRB内のタカ派とハト派の発言が相次ぐこととなり、相場はそれに引きずられる形で上下動を繰り返す1週間となりました。
足もとの金融市場は米国の利上げがどうなるかだけに関心が集中し、月次のCPIがちょっと弱まっても株は暴騰、債券は買われドルはほとんど暴落的に下落する展開となっており、この影響をもろに受けたドル円はいまも21日移動平均線から5%近く離れたまま戻りを試せずに週の取引を終えています。
先週発表になった米国のPPIも同様の状況で、FRBの要人がコメントをしFedウォッチャー・ウォールストリートジャーナルのニックが不要な解説を行うと、必ずしも指標が示すインフレ低下の楽観的状況とは異なる動きを示現することも多く、方向感がつかめない時間が非常に多くなってきています。

どうもFRBの中ではパウエルと事実上影の議長と呼ばれるブレーナードとの綱引きがかなり鮮明になっているようで、これが当分相場に大きな影響を与えることになりそうです。
パウエル議長はもともと共和党政権時代トランプにアサインされ、自身も共和党支持者なのでバイデン政権との親和性はかなり低く、インフレに対しては厳しく対処する方針を持っていることからバイデン政権の意向とは必ずしも合致しない状況にあるようです。
一方ブレーナード副議長はいわば民主党の秘蔵っ子のような存在でその発想と発言は民主党政権に沿ったものとなっていることから、パウエルとブレーナードが主導権争いから結構異なるトーンの発言を繰り出すようになり、それを受けて相場も気迷い状態が継続中です。

当初市場の見立てではパウエルがどこかで勇退なり自ら辞任するなどして早期にブレーナードが議長に就任するのではないかと見られてきましたが、実際にはイエレン財務長官が早期に辞任しブレーナードはその後任に抜擢されるという見方もあり、パウエルの残留も十分にありうる話になってきています。

17日にはFRB内でもタカ派で知られるセントルイス連銀のブラード総裁がテーラールールを引き合いにしながら政策金利はまだ十分に制限的と見なされるゾーンにはないと発言し、ターミナルレートが5%から7%になる可能性は十分にあり5%から5.25%など最低水準であると断言したことから株価は大幅下落、債券金利は上昇しドルはそれについてかなり値を戻す展開となりました。
12月に入れば次期FOMCのブラックアウト期間に突入するのでFB関係者の発言は出なくなりますが、それまではこうしたけん制発言が相場をまだまだ揺らすことになりそうです。

感謝祭直後のポジションクローズによる相場下落に注意

Data Tradingview

先週5日間の相場は、先週米国PPIの結果を受けて138円割れまで下押ししたドル円は上述のようにFRB高官のけん制発言もでたことから、週末140.400円レベルまで戻る展開となりました。
1週間の下値の動きを見ると徐々にそれが堅くなってきていることは事実ですが、逆に上値もそれなりに抑えられており材料のない中で上か下かどちらかに抜けられるかどうかが注目される状況です。

ただこの時期は8月や9月からドル円を買い向かってきた投機筋が大きな保有ポジションをいきなり手仕舞うことも多く、不意の相場の下落には相当注意が必要です。
実際昨年のブラックフライデーの日にも突然ドル円相場は下落に見舞われているため、感謝祭前後は相当注意が必要です。

サッカーワールドカップの試合次第で相場に影響も注意

Photo FIFA

相場に影響を与えるのが20日から開催されるサッカーワールドカップの存在です。
米国はそれほどでもないようですが、欧州圏では試合があると平日でもトレーダーが相場そっちのけでサッカーに集中することになるため、特に英国、フランス、ドイツ、オランダ、ベルギーなどの欧州圏のサッカーの強い国のチームが出場する時間帯は相場がすかすかになるというリスクも考えておく必要がありそうです。
ワールドカップは12月中盤まで開催されるため、どこの国のチームが勝ち進むかによってはかなり長期にわたり相場に影響を及ぼすことも考えておく必要がありそうです。

既に市場は感謝祭から年末モードに突入するため基本的には大きな動きが見られない1週間となりそうですが、流動性の低いところで何か不測の事態が起きると逆に大きく相場が動くリスクも高まるので、十分注意した取引が必要になりそうな1週間です。