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国内では、能登半島沖で発生した巨大地震や羽田空港での航空機衝突事故の陰に隠れ、あまり大きく報道されていませんが、13日に投開票される台湾総統選挙まで、いよいよ残すところ1週間となりました。

中台関係は、東アジアの安全保障において非常に大きな影響を及ぼす問題であるだけに、台湾国民がどのような道を選択するのかに世界中から大きな注目が集まっています。

直近の支持率調査では、現行の蔡英文政権の後継となる与党・民進党の頼清徳氏と副総統候補の蕭美琴氏ペアが33%とリードしており、最大野党である国民党候補の侯友宜氏と趙少康氏ペアが30%とその差を詰めています。

また今回の選挙では、第三極・第二野党となる民衆党の柯文哲氏も立候補していますが、支持率は24%に留まっている状況です。

現状では、民進党が辛勝する可能性が高くなっていますが、同日に行われる立法委員(国会議員)選挙で民進党が過半数割れとなれば、2016年から続いた完全執政(総統との同時掌握)は終わりを迎えることになります。

市場の関心は中台関係に変化が訪れるかどうか

 

中台関係についてはこれまでテレビなどで何度か議論されてきていますが、与党の頼清徳候補が現状維持を打ち出す中、野党の二候補は中国との交流促進を訴えてはいるものの、新たに関係を構築するという発言は行っていません。

中国の習近平政権が行った香港民主派の弾圧や過酷なコロナ対策、それに武力による台湾への執拗な威嚇は、結果的に台湾の反発を強めることになったため、中台関係で現状維持を明確に打ち出す民進党の支持率が依然高いのが実状です。

民進党の頼清徳候補が総統となれば、たとえ議席数を減らすことになっても、台湾の対中関係の立ち位置は大きく変わらないのではないかとの見方が強まっています。

ただ選挙は水物ですから、国民党もしくは民衆党に支持が集まる可能性も否定できない状況であるため、13日の開票結果が気になるところです。

現状では、第三極・民衆党の柯文哲候補が当選する可能性は低いものと見られますが、立法院(国会)の選挙においては、民進党に不満を持つ若者の支持が民衆党に流れる可能性もあるため、若年層の票が選挙のカギを握るものと見られています。

台湾の対中戦略が変更となった場合もっとも深刻な影響を受けるのが日本

 

現状を見る限り、新しい政権が対中戦略を劇的に変更させることは考えにくい状況ですが、万が一、台湾有事ともなれば日本が大きな影響を受けることは間違いありません。

当然、金融市場にも大きな影響が及ぶことは避けられないため、台湾の対中戦略は日本にとっても大きな問題となっています。

岸田政権は、バイデン大統領の言うことならば何でも二つ返事で聞き入れ、防衛予算の倍増など戦後最大の対米従属戦略に打って出ていますが、台湾の立ち位置が変わった場合、日本は本当に中国と戦争状態になれるのかという根本的な問題があります。

これまで為替市場におけるリスクオフともなれば、ドル円の場合、円高にシフトするという場面が多く見られましたが、最近では必ずしも円買いに走るとは限らず、日本の地政学リスクが高まっても円買いが示現しない可能性もあります。

米国は、ブリンケン国務長官が訪中時に「ひとつの中国(台湾を独立国としては認めない)」という発言を公然と行う一方で、ペロシ前下院議長が台湾をサプライズ訪問するという、二枚舌外交としか思えない動きが顕在化しています。

この現状を踏まえ、相場が今後そのように動いていくかをしっかりと見極める必要がありそうです。