11月の米国感謝祭前からイレギュラーな手仕舞い売りがでて為替市場ではドルが売られる展開となりましたが、11月最終週そして12月の第一週でもあった先週はさらに事前に予測できない展開が続くこととなりました。
先週の一連の動きはプロが見ても理解しにくいものがあり、そこに投機筋などの手仕舞い売りも重なって結果的に想像以上に相場は傷んでしまったようです。
これが週開けから月末に向けてどうなっていくのかが非常に注目されるところとなっています。

依然強いパウエルピボット期待での相場展開

Photo Reuters

米国債券市場は月末ぎりぎりの11月30日のパウエルFRB議長の講演における発言を受けて大幅上昇となりました。
当然米株三指数も大きく上昇することとなりましたが、パウエル議長自身はそう新しいことを口にしたわけではなく、なぜここまで相場が回復するのかを怪しがる向きが多かったことも事実で、依然市場はパウエルピボット期待が強いことを印象付ける状況となりました。

パウエル発言の要旨としては、利上げペースの減速が理にかなうということがまず全面に出て、利上げペース鈍化は早ければ12月の会合の可能性を示唆したことが大きな原動力になってしまったようです。
ただ、同時に政策金利については9月時点のFRB当局者の予想を幾分上回る必要がある公算が大きい模様とも発言しており、一回の利上げ率が低減してもまだ利上げ自体は続くことを示唆している中で市場が良いとこどりをしている気配も強くなっています。

こうした都合のいいところだけピックアップして相場が動くというのは今年7月位から続いているもので、その後利上げが強まることが経済市場などから推測されるたびに相場は下落に転じるという実に単純な動きを繰り返して年末までやってきています。
ここからFOMCの結果発表までは2週間弱の時間が残されていますが、月次CPIの発表などでまた同じ動きが繰り返されることが危惧されます。

ここ1年から1年半位の相場では新しくもないニュースに対して市場が激しく反応することがありますが、市場ではそれはポジションが傾き過ぎていることに起因した買戻しが理由なのではないかという見方も広がっています。
ヘッジファンドの米国債ショートポジションは数年ぶりの大きさだったことに加え、月末のリバランスも伴って一方向に傾きすぎたポジションの修正が大きな反対売買に繋がっているだけで、ここから株式や債券相場が著しく上昇するわけではないという予測も高まりをみせています。

為替におけるドルの激しい売りもファンドの手仕舞い売り起因の可能性

株式、債券市場のみなならずこの11月末から12月初旬相場ではドルの手仕舞い売りが驚くほど出ることとなりました。
11月全体としては確かに13.4円以上の下落となりましたが、このパウエル講演以降だけでも5.5円以上という凄まじい下落を果たすこととなってしまいました。
パウエル発言だけでここまで下落することは考えられないことから、結局こうした発言機会に乗じて投機筋がかなり大きなタマの手仕舞い売りを仕掛けた可能性が高まります。

Data Tradingview

昨年もブラックフライデーの11月25日の東京タイムにドル円売りの大玉が仲値に飛び出して一瞬にして相場が下落したことがありましたが、今年はそれよりも遅くに手仕舞い売りがでているようで12月に入ってもその動きは続いています。
2日の雇用統計では11月米雇用統計と非農業部門雇用者数変化は予想を上回り、平均時給も予想を上回る伸びになるなど強い結果となったことからドル円は135.97円まで急上昇していますが、この動きは長くは続かず結局雇用統計発表直前の水準にまで全値戻しして週の取引を終えています。

先週の動きだけ見るとテクニカル的には明らかにドル高が終わりを迎えており、週開けは130円レベルまで下押ししてもなんらおかしくないところにいるように見えますが、果たして投機筋の手仕舞い売りが完全終了した場合ここからさらにドルが売られるのかが大きなポイントになりそうです。

ユーロドルは一転して上昇の動きに

Data Tradingview

ドル円の下落とは一転して上昇に転じているのがユーロドルで、12月に入ってからすでに1.05台まで値を戻す動きとなっています。
こちらも月末からのドルの手仕舞い売りの影響を受けているものと思われますが、一定の売り玉がすべて解消した後に果たして上昇が続くのかがかなり注目されます。

年明け2023年1月にはクロアチアがユーロ利用を開始するため、ご祝儀を含めて年末に向けてユーロがさらに上昇することは十分に考えられますが、ここから年末までリニアに上昇するかどうかは不明で、買い向かうのならばやはり押し目を待つ必要を感じさせられます。

儲かっている主要ファンド勢はすでにクリスマス休暇入りか

今年の12月相場は米国FOMCが日本時間の12月15日午前4時発表となることから第三週末までめいっぱいワークすると見られていましたが、実際には先週末段階でそれなりに儲かっているファンド勢はほとんど休みに入っているようで、ここから投機筋の手仕舞い売りが終わりを迎えてもそれほど大きな動きが戻ってくることはない可能性も高まります。
相場に本格的な流れが出始めるのはクリスマス意向になることも十分に考えられるので、ここから3週間あまりについては無理せず様子を見る時間に充てることも必要になりそうです。
激動の動きがでるとすれば年末ぎりぎりから年明けになる可能性が高いと思われます。