2023年の金融市場を占う意味で非常に注目すべきもう一つのポイントして挙げられるのが、金相場の動向です。

FXのトレーダーの中にはかなり積極的にドル建ての金先物の価格推移をチェックしている方もいらっしゃいますが、このドル建て金先物はドル円と完全に逆相関の動きをするのでFXトレード視点で関心を持たれている方も多く、海外FXの場合高いレバレッジを利用して少ない資金でのトレードに専念される方もいらっしゃることと思われます。

そんな金の取引に大きな異変が起きようとしているのです。

中国とロシアの積極的な金購入が市場に変化をもたらす

金市場でここ数か月大きく状況が変化しはじめているのが中国とロシアの金購入の動きで、まず中国は完全に外貨準備でドル買いから金買いにシフトしはじめています。
ウクライナ戦争で激しい西側諸国からの制裁を受けているロシアも同様で、ややもすれば基軸通貨としての米ドルをぶち壊さんばかりの動きにではじめている状況です。

このドル建ての金価格というのは、長らく米国や英国の中央銀行が市場に介入し価格の上限を押さえ込む動きとしてきたとされており、実際双方の銀行経験者でその業務に直接携わってきたという人物の証言も出てきているため、マニピュレーターとして主要中銀が相場に関わってきたのは事実だと思われます。
しかし上述のように中国やロシアが外貨準備の枠からドルを排除し、金の現物を購入してあたかも金本位制復活を目指すような動きを始めていることは過去の相場とは全く異なるものがあり、来年はさらに上昇することを予想する向きも増え始めています。

Data Tradingview

最近の金相場の動きを見ると、2020年7月に非常に価格が上昇し2034ドルレベルまで上昇したのは記憶に新しいところですが、その後はレンジ相場でヨコ展開しており今年の3月に2000ドルを超えそうになったものの、見事に上値を抑えられて沈んでしまい上昇しそうな気配はありますが、実際には鳴かず飛ばずの時間に入っています。
これが来年は大きく上昇する可能性が出てきています。

サクソバンクは毎年、来年の大胆予想を発表していますが、彼らはインフレが世界的に続くことから3000ドルまで上昇する可能性を指摘しています。
そこまで上昇するのかはわかりませんが、少なくとも2割や3割はなんなく上昇することは十分にありえます。
そうでなくてもインフレが進行しはじめており、世界的に戦時経済のような様相が強まっているため、金に対する需要がさらに強まるのはおかしなことではなく、果たしてどこまで上昇していくのかが大きな関心事になりそうです。

特に中国は完全にドルの世界における基軸通貨の座を追い落とそうとしており、金買いをさらに強めることは避けられそうもなく、金価格にその影響がでるのはもはや明白です。

ドルベースの金先物が上昇するということはドル円が下落することを示唆

こうなると気になるのがドル建ての金とドル円の逆相関の関係にあるドル円の動きで、仮にドル建ての金が2500ドルあたりまで上昇した場合にはドル円は相当価格を下落させるリスクがある点には十分な注意が必要です。
具体的にいくら下がるのかは正直なところはっきりはしませんが、足もとの水準である133円レベルから120円割れになる世界になりそうで、来年はまず春先に向けて金価格が上昇した場合ドル円は思わぬ下落に見舞われることも視野に入れておく必要があります。

為替だけに注目していると意外に気がつかない視点ですが、来年は金の価格推移も忘れずにチェックしていくことが求められることになるのではないでしょうか。
ドルや円といった通貨は既に金本位制からはずれ、国の意思でいくらでも刷ってバラまくことが出来ますが、中国やロシアが金本位制に回帰するような動きになればその価値は自ずと下落することになりそうで、この領域での中国やロシアの戦略履行がどこまで進むのかについて相場に非常に大きな影響を与えることになりそうです。