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日銀は前回の政策決定会合時に緩和措置を継続するために施行するとした共通担保資金供給オペを1月23日に5年もの国債で実施しました。この共通担保資金供給オペというのは、日銀がゼロ金利で満期まで資金を貸し付けることで購入者は額面さえ割れることがなければ確実に金利分の利益を享受できるという仕組みで、平たく言えば日銀の代わりにカネを無利息で貸し付けてあげるから満期まで国債を保有すべきというものになります。
正確には民間の金融機関が様々な形態の受信取引に共通し使用できる日銀適格担保(手形、CP、社債、国債など) を日本銀行にあらかじめ根担保として差し出し、日本銀行がこれを裏付けとして、手形買入オペを行うことをいい公開市場操作の手法の1つとして、前々から存在していますが、国債の拡販のために利用するというのは今回が初めての施策となっています。

確かになんのリスクもなく日銀から無利息のカネを借りてJGBを買うので本邦の金融機関や機関投資家にとってはかなりありがたい仕組みとなり、案の定予定額1兆円に対して応札額は3兆1290億円、1兆3億円が落札され、応札倍率は3.1倍となったようです。
日銀はこれに気を良くして10年債などにも同様の共通担保資金供給オペを実施してくるものと思われますが、カネを貸し付けるだけで外部の金融機関等に自分たちの代わりに国債を買わせて満期まで保有させるというのは確かに苦肉の緩和継続策として評価できるかもしれませんが、冷静に考えれば相当常軌を逸した政策で中央銀行がそんなことまでしなくてはならないのかという考えに至ります。
これを受けて5年国債利回りは間違いなく低下をはじめており、一旦は作戦成功と言える状況になっています。

Data FT

果たしてこれがいつまで続けられることになるのかが大きな問題

どの年月の国債発行に共通担保資金供給オペを適用しても、国債金利が上昇して価格が額面を割り込むということがなければまだまだ継続してこうした政策を実施することはできますが、金利がまたしても上昇するような局目では明らかに応札は減るものと思われ、この手のオペを無尽蔵に実施できるとは到底思えないことからどこかでいきなり入札限界が訪れる可能性もありそうで、ここからの施策の継続に市場の注目が集まることになりそうです。

公表された日銀政策決定会合議事要旨では一時中断されていた事実も判明

ところで23日に公表された12月20日の日銀政策決定会合議事要旨によりますと、会合では多くの政策委員から日銀が大量の国債を買い入れる事によって「価格形成に歪みが生じている」「債権市場の機能度が低下している」との指摘があったということです。
その後、委員たちは「金融緩和の効果の波及を阻害するおそれがある」との見方で一致し、政策修正が行われたという経緯が示されています。

ただ、問題はそこからで、12月の会合では政府出席者からの申し出で会合が一時中断し、再開後内閣府の出席者から「政策の趣旨について、対外的に丁寧に説明することが重要だ」という指摘が出されたということで明らかに政府、政権が日銀会合に口を挟む場面があったことは大きな問題になりそうです。
日銀の政策決定会議が政府側の横やりで中断するなどということはこれまでの会合では一切見られなかっただけに日銀の中立性が今後どのように担保されるのかは岸田政権にとって非常に大きな問題になることが予想されるところです。

岸田訪米時に米国イエレン財務長官から利上げに釘をさされた可能性も

イエレン長官は連邦債務の上限問題を回避するために四方八方を走り回って対策に務めたようですが、同時に今後中国に訪問することも表明しています。
これは米国債を買わなくなっている中国にもっと購入して、また保有米国債を売らないでとお願いに行くのが主たる目的であり、米国債の買い手不在が顕在化している中にあって米国財務省としては恥も外聞もなく中国にアプローチせざるを得ない状況であることがわかります。

米国財務省は日本に対しても同様の姿勢を見せているはずで、実際日本政府は年末に向けて米国債を買い増しして対応していますが、岸田欧米時の1月13日にイエレンから簡単に日銀に利上げをさせて過去10年大量に世界に出回った本邦の資金をレパトリさせないようにしろと釘を指されたのではないかといった憶測が流れはじめています。

本邦の金融機関や機関投資家が購入した米国債の保有をやめてその資金を日本に回帰させるレパトリエーションが一斉に行われるようなことがあれば米国政府にとっては一大事となるので、日銀はこれからも緩和を続けて世界市場に流動性を供給するATMとして機能していろと言われた可能性は十分にありそうです。
こうなると岸田首相も次の日銀総裁も黒田総裁の政策を継承できる人物を新総裁に指名せざるを得ない状況に追い込まれかねず、日銀の人事、政策を巡ってはなにかと米国からの横やりが出てくる中で前に進めていく難しさを伴うことになりそうです。