バークシャーハザウェイは2月25日2022年度の決算発表を公開し、同時にバフェットからの手紙と呼ばれる年次書簡も投資家に公開しています。
詳細はこちらからお読みいただければと思いますが、昨年度のバークシャーの投資成果がどうだったのか、オーバービューをこのコラムでご紹介したいと思います。
通期の最終損益は220億ドルの赤字に転落
米国の会計基準では保有する上場株の評価損益を最終損益に反映する必要があることが決算の特徴となっていますが、バークシャーの場合保有主力株で有名なアップル(AAPL)をはじめとする株価が下落したことから、最終的には220億ドルの赤字に転落し2021年度の908億ドルの黒字とは大きく異なる結果となってしまいました。
米株相場の下落によりバークシャーが保有する上場株の評価額は3087億ドルと、2021年末時点に比べて419億ドル減少することとなりやはり相場の下落はそれなりの影響を与えたことがわかります。
通期の営業利益は過去最高に跳ね上る
ただ、営業利益で見ると通期では308億ドルに達しています。
保有株価は散々でしたが、インフレの上昇やウクライナ戦争などによるサプライチェーンの混乱があったにも関わらず、保有するコングロマリットの数十の事業がかなり上手く機能したようで、308億ドルの利益を生み出したといいます。
バフェット氏は年次書簡でも昨年度は同社にとっていい年であったと述べています。
非常に興味深いのは、市場が脱石油などを打ち出していたのにも関わらず、オクシデンタル・ペトロリアム(OXY)の株式21.4%を取得したことから持ち分法の利益を計上できたことで、このあたりの投資着眼点は流石としかいいようのないものとなっています。
TSMC株売却も大きな話題に
バークシャーは昨年第四四半期に台湾のTSMC株をほぼ9割近く売却し市場では大変な話題になりました。
新たに雇い入れているファンドマネージャーの判断も働いているようですが、この領域にそれなりのリスクを感じていることも考えられ、どういう論理が働いているのかには依然関心が集まっています。
はっきりとした理由がよくわからないだけに憶測の出やすい話になっていますが、バークシャーのリスク回避視点からすると何かひっかかるものがあるのかも知れません。
バフェットというと長期投資の神様のように思われがちですが、実は短期で株を手放すことは多く、周りの人間が思っている以上に短期で保有株は相当変化させていることが窺われます。
たしかにコカ・コーラやアップルなどの保有で長期保有投資のイメージが高くなっていますが、実際は大きく異なる点もよく理解する必要があります。
手元キャッシュは1286億ドルと巨額
ウォーレンバフェットは相場が大暴落すると市場に現れ、焼け野原の相場でタダ同然のような株を買っては長期保有で莫大な利益を収めるという独特の投資手法を持っていることで知られます。
そのためにはここ一番のときにいかに現金を持ちあわせているかが大きなポイントになりますが、2022年度末のバークシャーの手元キャッシュは1286億ドルで、自社株買いなどを行ったことから前期の1467億ドルからはさすがに減少したものの、依然会社が始まって以来9番目の大きな現金を保有していることがわかっており、この先の相場の暴落に依然として備えていることも見えてきます。
1286億ドルといえば日本円にして17.3兆円を超える金額なのでそれはもう巨額であり、こうした資金をかかえてまさかの時の暴落に備えているというので恐れ入る存在です。
相場の先行きが不安定でよくわからないという混沌とした状況で、92才になるバフェットが市場でまだまだ注目される存在であるということはある意味驚きでもありますが、それだけ金融市場で生き残ることが相当難しく多くのアナリストがこのバフェットからの年次書簡、通称バフェットからの手紙の中身を詳しく分析しています。
その年次書簡でも明確には答えを書いてはいませんが、やはり相場が劇的な変化を起こす可能性は考えているようで、引き続きこの稀代の投資の達人の相場視点からは目が離せません。