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バイデン大統領のキャピタルゲイン課税は富裕層を広範にターゲットにしたもののようで、10年間で日本円にして8.6兆円にもおよぶ税務調査の増員を考えていることが伝わりはじめています。

年間にして8600億円の費用をかけてでも120兆円を超えるとされる税金を獲得できるわけですから相当必死なようで、過剰な緩和措置で資金が大量に流れ込んだ株式市場での利益から税金を徴収することで債務を減らしていくというかなりやり口が現実のものになろうとしています。

今回のキャピタルゲイン課税でターゲットになるのは年収100万ドル以上の層ということですから日本円なら1.1億円以上の高額所得層を対象にしており、例え実施が決まってもそれほど大きな混乱は起こらないものと思われます。

民主党は大統領選挙時からこうした政策を掲げていましたからいまさら驚く話しではないと思われますが、株式市場はアルゴリズムが反応したのか一定の下落をもってこの政策を受け止めたものの、足もとでは回復を遂げている状況です。

そんな中で次にバイデン政権が繰り出してくるものとして注目されるのが為替のドル安政策です。

ドル安政策は歴代米国政権の定番的存在

バイデン政権は立ち上がり時期からすでに450億ドルもの資金を使って国民にバラまいていますが、それと並行してすぐに課税案を持ち出してきまして、しかも資金が向かった株式市場から利益を得た者を対象にして課税を強化するというのはリーズナブルな政策となっていることがわかります。

ただこの政権による政策は増税だけではなく、もっと歴代政権でも伝統的に行われてきたものが実施される可能性が高まります。

それがドル安政策で、過去40年ほどの米国政権は米国の景気が悪化し債務が増えるたびにドルを意図的に安くするという定番政策を行なっています。

債務が増えた場合、米国は必ずといっていいほどドル安にすることでそのボリュームを消す作業をしており、足もとの非常に膨らんだ連邦債務を解消する意味でもドル安政策の実施は欠かせないものとなっています。

1985年のプラザ合意はその典型的な政策であり、ここからは貿易赤字が大きくなる中国人民元、日本円に対してこうしたドル安政策を持ち出してくるのは時間の問題のようにもみえる状況です。

イエレン財務長官は就任時にはドルレートは市場に任せるといったことを言っていますが、増税案がこのように早く登場することをみますと、米国が主体的に取り組むドル安政策が現実のものになるのにはそう長い時間がかかるとは思えないところに来ている状況です。

ドル円では14円以上のドル安が必要か

現状におけるドル円の実質実効レートは円がドルに対してほぼ14円程度は確実に安く推移していると言われていますので、米国のドル安政策が現実のものになれば少なくとも1ドル93円から94円位までドル安円高へと調整してもおかしくはない状況です。

実際、第二次安倍政権のスタート時にはその位のレートで推移していたわけですから、こちらもそれほど驚くべきものではなく、ごく近い将来政治的にドル円が円高方向に押し戻されることは想定しておかなくてはならない状況にあるようです。

ドル円相場の歴史はまさに日米の政治に翻弄されてきた為替の歴史でもありますから、為替のトレードを行っている本邦の個人投資家は今のうちから覚悟しておかなくてはならないものがあります。

テクニカル的には上にも下にも自在に動き、上昇方向は青天井のように思われがちなドル円ですが、実際はそれほど上値に自在性がないのが現実であり、ドル相場はあくまで市場に任せるなどと言っていたイエレン財務長官がドル安方向に舵を切ることになるのかが気になるところです。

今年のうちにこうした話しが出てくるのかどうかは不明ですが、増税の件が一定の決着を見た場合、次に為替を弄り始めるのはほぼ間違いないのではないでしょうか。