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先週、このコラムではいち早くシルバーゲート銀行の経営危機をご紹介しましたが、先週末には親会社であるシルバーゲート・キャピタルが事業縮小を行う一環として正式に清算することを発表し、最悪の事態に発展してしまいました。
それは、カリフォルニア州を拠点とする銀行持ち株会社SVBファイナンシャル・グループ傘下のシリコンバレー銀行の破綻でした。

この2つの銀行の破綻と清算はなんの因果関係もありませんが、破綻に至る経緯としてはかなり似たものがあることがわかってきています。

シルバーゲートとSVB破綻に至る意外な共通点とは

ウォールストリートジャーナルは立て続けに破綻、清算となった2つの米国の銀行について共通点を2点指摘しています。

まず一つ目の共通点としてはコロナ禍で活況を示したものの、FRBによる急ピッチの利上げで業績が大きく低迷した業界を主な取引先としていた点だとされています。
SVBはその名のとおりシリコンバレーのスタートアップ企業との取引が非常に多く、一説によれば実にその7割近くがSBVの取引先であるとさえ言われています。
しかしこうしたスタートアップ企業の場合、ユニコーンとして幸運にもIPOを果たすことができた所でさえコロナ禍が一服してインフレが拡大しFRBが猛烈に短期間で利上げを行ってインフレファイトを始めたことや、QTの継続実施で市場から資金が減少したことなどを背景にこれまで低利で借りていた資金の借り換えが上手くできなくなったり、飛ぶように売れていたジャンク債の発行も覚束なくなるなど資金繰りの苦しいところが増えていたのが実情のようでした。

一方仮想通貨業界にいち早く特化する形で決済システムを提供してきたシルバーゲート銀行も急成長の優良な仮想通貨取引所を得意先としてきましたが、FTXの詐欺・破綻事件をきっかけに大手の取引所が急激な経営不安に陥ることとなり、レンディングビジネスもステーキングもすべて破算になりかねない状況に直面していたことが見えてきます。
したがって経営不安からの取り付け騒ぎで資金の引き揚げがあったことは事実ですが、実態としてはそれ以前から取引先からの資金の引き揚げが進んでいたことが窺われます。

また二点目に挙げられる共通点としては、コロナ禍で顧客からの預金が流入する中、どちらも運用責任者に大した知見がなく多くの資金を米長期債や住宅ローン担保証券(MBS)などの有価証券に投資してしまったことだとされています。
バイデン政権のカネの過剰なバラまきは結果的に驚くほどのインフレを市場にもたらすこととなり、FRBは躍起になってそのインフレと戦う羽目になったことから急激が利上げを実現し、それを受けて国債をはじめとする債券価格は大きく下落し預金者への支払いに必要な資金をすぐに調達することが難しくなるほどの含み損を抱えたという点でも、この二行に酷似した状況となっているようです。

問題はほかの銀行に破綻が飛び火するかどうか

市場では投資家が相次ぐ二行の米国の銀行の破綻と清算に直面して、他の金融機関に波及しないのかどうかを非常に気にし始めています。
実際2008年頃のリーマンブラザーズ破綻前を思い起こしてみると、簡単に破綻することはないとされていたリーマンがいきなり破綻となった経験もあるだけに、昔からの投資経験のある市場参加者が疑心暗鬼になるのは当たり前です。
ただ金利の急激な上昇が悪影響を及ぼしている企業は多くなっており、それが金融機関にどれだけの影響を与えることになるのかについては精査する必要がありそうです。

この金融機関の突然の破綻話のおかげでFRBは利上げを抑える方向に動くのではないかといった楽観的な見方も出始めていますが、果たしてパウエルがそうした腰砕けの決断をするのかどうかが注目されるところとなってきています。
イエレン財務長官は今回の破綻劇が金融市場全般に広がる可能性は極めて低いとの見解を示していますが、この人物は2008年サンフランシスコ地区連銀の総裁だったときも米国経済は底堅く成長すると予測し、その直後にリーマンの破綻に直面しているため、その見立てがどれぐらい正しいかなどについては全くあてにならないのが実情で、ここから市場が実際にどうなるのかをチェックしていくしか対応方法がないと思われます。

国内でも本邦金融機関は日米債券買いで結構な含み損をかかえている

これが国内の金融機関に及ぼす影響ということになるとさらにその危険性は低減することになりそうです。
ただ国内のメガバンク、地銀等は長年ゼロ金利時代に日本国債を買入れては日銀の口座に預け入れた付利を稼いでいたものの、ここから植田新総裁のもとで日銀が利上げにシフトするようなことになれば国債の大幅元本割れに直面するリスクもありそうです。
さすがにそれだけで経営危機に陥るようなことはないものの、SVBが直面した債券含み損の問題と同様のリスクを抱えていることだけはしっかり認識しておく必要がありそうです。

長年低金利が続いたことから、それがほとんど当たり前のこととして市場では認識されてきましたが、実は大変な地殻変動が起きていることだけは理解しておかなくてはなりません。
今回のインフレの到来は少なからずバイデン政権の過剰なバラまき政策と、それをフォローするかのようなFRBの無制限緩和を起点をして発生している問題だけに、金融当局が果たしてどのような対応をしていくのかにも大きな関心が集まります。