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相場ウイークリーでも既に触れていますが、4月27日、28日と日銀植田新総裁体制の元で初めての政策決定会合が開催される運びとなっています。
市場では政策変更期待からドル円が売られる展開が強まりそうで、本邦勢と海外勢の認識の凄まじい違いが政策決定を前にして顕在化しはじめています。
国会での事前証言や就任記者会見でも当面政策変更がない旨は伝わっているにも関わらず、他の主要国の金融政策決定会合でも様々な見方がでることは珍しくありませんが、ここまで国内と海外で見方が異なる状況が示現するのは相当珍しいと言えます。

一体どうしてここまでのギャップがでてしまうのか?それはYCCという政策自体に大きな原因があることが見えてきます。
イールドカーブコントロールといえば中央銀行の業界では確立した理論のように聴こえますが、実はこれを行っているのは日本だけで中央銀行に授けられた伝統的な政策ではありません。
さらに学者である植田氏がどこまでそれを肯定し、守り抜けるかも大きな注目点となってきています。

本邦勢は全く予想していないYCCの早期終焉

28日に日銀の政策決定会合の結果発表があることは国内でもしっかり周知されていますが、プロのアナリストから個人投資家に至るまでこの会合で突然イールドカーブコントロールを撤廃するとか上限を引き上げるといったことが決定されると思っている向きは全く存在しないのが現状です。
日銀が28日に公表する経済・物価情勢の展望・通称展望リポートの中で、新たに示す2025年度の物価上昇率見通しについて、前年度比1%台後半を軸に検討に入ることは既にメディアでも報道されていますが、植田氏は人心を掌握するのにもそれなりの時間がかかると思われ、政権への根回しの経験なども持ち合わせていないため、その状況下でいきなり日銀に乗り込んで政策変更を断行するというのはほとんどありえないというコンセンサスが確立されています。
こうしたセンチメントは日本人しか理解できないものかもしれませんが、何か具体的な変更がでるとしても6月以降、下手をすれば年内は今のまま様子見の状態が続くことを予見する人さえ登場しており、岸田政権とのアコードの見直しすら行わないとしているので、植田氏がドラスティックな人物でないことだけは行きわたっているのが現状です。

YCCは持続不可能という認識が極めて強い海外勢

ただ海外勢は投資銀行部門のアナリストからはじまってヘッジファンドのマネージャーに至るまでかなり広範に日銀のイールドカーブコントロールはその終わりが近いと引き続き想定しており、会合が近づくたびに円が買われるという不思議な状況が続いています。
とくに学者出身でMIT学派にも所属すると言われている植田日銀新総裁はどれだけ説明を尽くしても日銀が長期金利の上限を自己設定しそれを制御し続けることは不可能なためごく近い将来に修正を余儀なくされると考えているようで、実際に日銀が長期金利を未来永劫に制御できる可能性は日々低くなっているのが実情です。

また現状の上限設定である0.5%を慢性的に超え始めることになれば日銀はさらに上限を引き上げるかYCC自体を廃止せざるを得なくなり、多くの海外勢がその時期は決して遠い未来ではないと確信していることが窺われます。
それぐらい中銀が金利をコントロール下に収めることは難しくありえないことだという認識が海外勢に広がっていることには改めて驚かされるものがあります。
多くの海外金融機関アナリストは日銀がYCCを全廃することになれば少なくとも10%、あるいはもっと円高がいきなり進行すると予測しはじめており、110円方向に大きく動く可能性を見ている向きが実に多いことには驚かされます。

さすがに4月の決定会合では何事も起こらずにドル円は買い戻されることになると思われますが、6月の政策決定会合でも同様に円高が進む可能性は高そうで、気づいたら10年債金利が上限0.5%をあっさり超える状況に陥るといったまさかの状態も想定しておかなくてはならないようです。
ここからは常に日銀会合の動きも注視していくことがドル円取引に重要な時間帯になりそうな状況が続きます。