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今週開かれるFOMCを前に、市場では利上げの一旦停止が利上げ終了に繋がるのか、もしくはインフレ対策により利上げ継続となるのかに大きな注目が集まっています。

インフレファイトを基本的な役割とするFRBは、インフレ沈静化のためであれば利上げも厭わないという姿勢を示していますが、足元では米国連邦債務が雪だるま式に膨れ上がっている状態であるため、本来ならば早い段階で利上げから利下げに転じることを考えなくてはならないほど状況は差し迫っています。

パウエル議長は以前から、米国政府が抱える莫大な債務の利子負担を考えるのはイエレン財務大臣の仕事であり、FRBが責任を負う領域ではないとしていますが、事態は一刻を争う状況であるため、FRBを含め米国財務省が一体となりこの危機に対応して行かなくてはならない時期にきています。

 

先ごろ発表された米国7-9月期GDPは、年率ベースで4.9%と一見好調な数字を示していますが、実際にはウクライナへの多額な資金の拠出などにより政府の財政支出がGDPに寄与した可能性が高いと見られています。

見かけのGDPは増えても、国家財政は悪化し金利が上昇すれば経済が逆に悪化する「クラウディングアウト」を生む可能性が極めて高くなります。
GDPの好結果を受けてもドル円が上昇しない背景には、こうした状況を織り込みはじめた市場心理があり米国全体が債務の拡大を危惧していることがわかります。

 

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イエレン財務長官は、米国はウクライナとイスラエルの二正面作戦に対応できるという姿勢を見せていますが、すでに他国の戦争に加担できるほど莫大な支出に耐えられる国ではなくなっているという現実がちらつきはじめています。

足元では米国債を大量保有する米銀が多額の含み損を抱えていることが大きな問題となっていますが、ここから先は中堅から新興企業の資金繰りにも悪い影響が及んでいく可能性があります。

金利上昇のネガティブな影響がすべて示現するまでにはタイムラグがあるため、景気への影響は今後ますます深刻化していくことが予想されます。

米国政府が年間負担する国債金利はすでに6000億ドル

つい1年ほど前までほとんどゼロだった米債利回りが、FRBによる積極的なインフレファイトの結果すでに5%を上回っており、発行済み国債に対する利払いもそれにつれて巨額になっている状況です。

コロナ禍の低金利時代に年間3800億ドル程度だった米国の債務金利負担は、すでに6000億ドル(日本円にして90兆円)と、この短期間で実に1.6倍近くにまで膨れ上がっています。

今後低金利の償還国債から新規発行国債に借り換えが進んでも、既存の債務だけで年間1兆ドル(日本円にして150兆円)の金利負担になると言われており、事態は予想以上に深刻であることがわかります。

このような金利上昇はさらなる自律的な金利上昇を引き起こすため、悪循環が繰り返される危険性もあります。

その一方で米債の買い手は年々減少していることも米国が直面する問題となっていますが、その原因の一つに中国やロシアが外貨準備での米債の購入を激減させていることが挙げられています。

33兆ドル超えの債務を保有するのは史上初のことであるため、米国債の格付けは今後さらに下落するリスクにも注意が必要です。

FRBは米国の債務を救うため早晩利下げを余儀なくされる

米債の金利負担に関しては、FRBが利上げを打ち止めするとともに利下げに転じればリスクを各段に減少させることができるのは言うまでもありません。

ただインフレが完全に制圧できていない状況下で、利下げだけを先行してしまうと、インフレがさらに悪化する可能性もあります。

タイミングを見誤れば金融市場全般にも悪影響を及ぼしかねないため、米国政府からの要請であっても、FRBは慎重に利下げと緩和再開を行う時期を見極める必要がありそうです。

 

低金利デフレ時代では、MMT理論(現代貨幣理論)がワークし債務の拡大など全く心配する必要はないという考え方が世に広まりました。

しかしひとたびインフレが顕在化すると、状況は一変し金利負担を意識して利下げと金融緩和に逆戻りしようとしてもなかなかそうはいきません。

個人投資家も、米国の債務状況を気にしながら投資を行わなくてはならない時代が到来したようです。