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金融市場ではその発言や一挙手一投足を巡って大きく注目されるFRBパウエル議長ですが、そのパウエル議長がウクライナのゼレンスキー大統領を語るロシアのコメディアン2人組の偽電話に引っ掛かり直接ビデオ通話を行っていたことが暴露され大きな話題になっています。

パウエルに偽ゼレンスキーでアプローチしたのはロシアのコメディアン2人組で、「ボバンとレクサス」ことウラジーミル・クズネツォフとアレクセイ・ストリャロフです。
彼らは他人になりすまして著名人へイタズラ電話を掛け、その内容をインターネットに投稿する活動で知られています。

2014年に結成したこの2人組は過去にも相当ないたずら電話に成功しており、ジョージアの政治家であるミヘイル・サアカシュヴィリを名乗ってモルドバ大統領のニコラエ・ティモフティに電話を掛けたのを皮切りに、相当数の有名人や政治家にいたずら電話をかけてまんまと成功を収めています。
2019年にはフランスのマクロンにも偽ゼレンスキーを名乗っていたずら電話に成功しており、いたずらコメディアンといっても相当な技量の持ち主のようで、今回のパウエルへのアプローチも難なくこなしたことがわかります。
これまでにこの2人組の偽電話に騙されたのはわかっているだけでもポーランドのドゥダ大統領やドイツのメルケル元首相、英国のジョンソン元首相、米国のジョージ・W・ブッシュ元大統領に、直近ではECBのラガルド総裁もに偽電話の餌食になっていたようで驚きは止まりません。
ロイターには上のような写真が掲載されていますが、ビデオ会議なのでゼレンスキーお得意の軍事シャツを着用してひげを伸ばしたことでまんまと騙すことが出来たのかも知れません。

しかし主要国の要人がここまで脇が甘く相手を確認しなくても通話に応じるというのは驚きですが、電話番号は通常わからないはずなので電話が直接かかってくるだけで騙されてしまうのかも知れまぜん。
それにしても安全保障上は相当なリスクであり、ひとりふたりならまだしも相当数の要人がこの二人組に騙されるという状況はさすがに看過できないものを感じさせられます。

FRB議長はウクライナの大統領と一体何を話したのかが大問題

話はパウエル議長の件に戻りますが、イエレン財務長官がバイデン大統領の電撃ウクライナ訪問の後に同じくウクライナを訪問しゼレンスキーと会談を行ったのは有名な話なので、イエレンのところに電話がかかってくるのは腑に落ちる話といえます。
しかしFRB議長のところにビデオ電話がかかってきて一体何を話したのかは非常に気になるところです。
金融当局の長であるパウエルはウクライナの大統領とそんなに気安く話をすることが出来る仲なのかというのは最大の疑問となり、FRBは機密情報については議論していないとしていますが、実態は全くわかりません。

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冒頭にも書きましたがFRB議長というのは金融政策の決定に関して重大な権限を有しているのでセキュリティには人一倍気を遣う必要があるはずですが、今回いとも簡単に通話に応じたことは危機管理能力の低下を指摘されても仕方ない状況で、そもそもゼレンスキーと話をする必要があるのかという根本的な問題も問われます。
言ってみればウクライナと言う国は米国とはそういう関係にあるのだと言われてしまえばそれまでですが、通話が実施されたこと自体相当な驚きで、米国のインフレ動向やFRBの金融政策、ロシア中央銀行など幅広いテーマについて語ったと言うので呆れてものが言えない状況です。

ウクライナの現政権は2014年に米国の仕掛けで樹立した傀儡政権であるという見方があるだけに、米国の属国感は人一倍強いのかも知れませんが、日本の岸田首相がいきなりパウエルに電話をしてきたら同様に通話に応じたのかを考えると違和感はたっぷりで、金融政策について話をしたかどうかは相当疑問視されており、これだけとってみても米国がどういう国なのかが改めて考えさせられます。
パウエルは共和党員で、バイデン政権下でFRB議長を務めてはいるものの政権べったりという立場ではないはずなので、それでもゼレンスキーから電話となるとなんの疑いもなく応じる状況には相当呆れるものを感じます。

ボバンとレクサスの偽物技術はヤラセやドッキリお笑いなどという次元を完全に卓越していることがわかります。
英語が話せない岸田首相は当面心配はなさそうですが、バイデンを語って電話がかかってきたら舞い上がって本当のことを次々喋ってしまうのではないかということも危惧されます。
語学ができないというのは本邦にとってはかなり重要な安全保障上のメリットなのかもしれません。