このコラムでもすでにご紹介してきましたが、イエレン財務長官がデフォルトになればとんでもない悲劇が到来すると広範にそのリスクを訴えてきた米国の債務上限問題がいよいよ佳境に向い始めており、これまで関心のなかった市場参加者も万が一のときのために備える動きをとりはじめています。

バイデン大統領はすでにマッカーシー下院議長らと債務上限問題について話し合いをしていますが、今のところ協議は平行線で広島サミット後に協議を継続することで一致しています。
ただ共和党側はただ単に上限上昇を承認するだけではなく大きな予算削減を要求しているため、バイデン政権としては全く飲めない内容で、果たしてどこで折り合いをつけることになるのかが注目されています。

現在の債務の上限は31兆3800億ドル余りで20年前の7兆3800億ドル余りと比べて4倍以上となり、共和党のいうように政策実施予算を縮減することは急務の状態で、バイデン政権がこれをどこまで納得するかが大きな焦点になろうとしています。

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国債の償還支払いに影響がでれば格下げにもつながるクリティカルな状況

この債務上限が確定してしまうとあらゆる政府支出の支払いが滞ることになるため各所で影響がでることになりますが、なかでも最大の問題になるのは償還となる米国債の支払いが不能になることでこの部分だけとってもデフォルトは確実です。
金融市場が大騒ぎになることは当然の成り行きですが、これを見て格付け会社がどう判断するのかが最大の問題になりそうで、万が一格下げという事態になると米国債は売られることになり、米国企業が発行する社債の格付けにも微妙な影響が及ぶリスクが高まります。
ローン金利なども上昇する上に何より米株が大幅下落を余儀なくされそうで、民間金融機関アナリストの予想では45%程度の下落が現実になりそうな気配があります。

足元で問題になっている米地銀の破綻についてもデフォルトはかなり大きな影響を与えることになりそうで、ひとたびデフォルトとなれば相当ネガティブな影響が市場に顕在化することになるのは避けられない状況です。
株が半値近くなるとなれば2008年のリーマンショック時の相場暴落の初動を超えることにもなりかねず、金融機関はようやく危機対応の動きを取り始めています。

すでに米株も米債にも影響がではじめている

イエレン財務長官が示唆している債務上限の期限は6月1日なのでまだ時間は残されていますが、状況を先取りする金融市場では米株の上値が重くなり出し、シーズナルサイクルで見ても上昇がおぼつかない時期になっていることからまだ大きな動きではありませんが下落が始まっていることを感じさせられます。
また債券市場ではNYタイムになるとすかさず米債金利が上昇する動きとなっており、金利は高止まりを見せているのが実情です。
これで本当にデフォルトの可能性が高まると言う報道が出ればさらに上昇するのは必至で、ここからの二週間あまりは特に注意しなくてはならない時間帯に入ります。

為替では米債金利が上昇していることを後ろ盾にドルも再上昇の過程にあり、こちらもデフォルト決定となれば本来ならそんな通貨は買えないはずなのに金利に連動して不本意ながらドル高に走るリスクが高まります。
米国議会はほぼ例年この債務上限問題で揉めてきていますが、結局のところ人為的な要因でデフォルトを引き起こしては有権者の心象を激しく害することになるというものから最終段階では止む無く合意に至っており、多くの米国民はまた起きるだけとかなり楽観視しているのが実情です。
ただ早くからイエレンが警鐘を鳴らしているように、今回の民主党バイデン政権と共和党の主張は過去にない位の対立を見せていることから政治的にデフォルトに陥る危険性があるのは事実で、ここから6月までのNYタイムの報道次第では市場がそれを先取する形で相場を崩していくというまさかの事態が起こり売ることを覚悟しておく必要がありそうです。

現状の相場はFRBの利上げの先行き見通しや地銀の破綻問題などの情報と債務上限問題が綱の引き合いをしていますが、22日週以降は市場が債務上限問題で一色になる可能性もあり予断を許さない状況です。
まずはバイデン、マッカーシー下院議長の会談がどうなるのかに関心が集まりますが、これがまたしても決裂することになると相場は前倒しで荒れることになるためトレードでの保有ポジション等もなにがあってもいいように閉じておく、全体量を減らしておくといった準備が重要になりそうです。