足元のドル円相場は市場を突き動かす不測の材料が目白押しで日替わり、あるいは時間替わりで相場が上下動するという状況が延々と続いています。
市場に飛び出すインフレ指標にFRB要人発言、銀行破綻リスクと債務上限報道にアルゴリズムがいち早く反応するため、毎回その度にそれまでの相場の流れを完全否定するような動きが示現することから、下手をすれば買ってやられ売ってやられという状況に巻き込まれかねないのが現実です。

本来こうしたよくわからない相場状況では手を出さずに方向がはっきりするまで見守るというのが一番間違いないトレード戦略になりますが、何もしないのでは全く利益にありつけずに6月のFOMCまで待つことになるためそうは行きません。
それではどう対応するのがいいのでしょうか。
今回は最良の投資戦略について考えてみたいと思います。

1日の相場を3つのゾーンに分けて別々の取引をしてみることを考える

1日自在に取引ができる専業トレーダーの場合、ドル円取引では24時間を大きく分けて3つの取引ゾーンとして考えることが重要になります。
まずは午前8時から午後3時過ぎまでのアジア・東京タイムゾーンで、その後午後3時から夜9時までのロンドンタイムゾーン、そして午後9時から朝5時までのNYタイムゾーンとはっきり切り分けて取引することが始めの一歩となります。
朝の5時から8時までは事実上オセアニアタイムとなりますが、この時間帯はスプレッドも幅広くまともな取引ができないので、完全にオフトレード時間帯としておきたいところです。

東京タイムゾーンは実需とシンガポール勢の動きに注意しながらトレード

東京タイムゾーンはドル円のマザーマーケットなので実需の動きも活発となり、9時55分の仲値時には輸出の売りも輸入の買いも出てくることになるため欧州やNYタイムとは全くことなる動きが見られることになります。
シンガポール勢はとかく売りからこの相場に入ってくるためその動きを見極めることが大切ですが、下落の流れがでているのであればそれについてトレンドフォローで売買することが肝要になります。
しかし午後3時を過ぎますと相場の状況が一変するので、まずはここまでに作っておいたポジションはリカクするなりしてクリアな状態で次を迎えることが重要です。

ロンドン勢はアジア東京勢を利するような動きは絶対しないのが特徴

午後3時から夜9時までのロンドンタイムゾーンでは、その名の通りロンドン勢が市場に大挙して参入することになります。
彼らはアジア勢、東京勢の保有ポジションを実によく観察しているので、相場がショートに傾き過ぎてくれば無理やり買い上げてショートカバーを誘発する動きをしてからおもむろに自分たちもショートにするといった凄まじく怖いトレードをしかけてきます。
また、ロングがたまり過ぎてこれ以上上がらないとみれば逆に猛烈な売り浴びせをしてくるため、凄まじいロングリクイデーションが発生することになります。

ロンドン勢は総じてやり方が悪く、特にそのまま東京タイムに形成された方向を継続してトレードしてさらに利がのるように振舞うことは滅多にありません。
このやり方には相当注意が必要で、NYタイムに様々な指標が出る前だからこそできる独特のトレードとなっていることは十分に意識しておきたいところです。

NYタイムゾーンは指標と要人発言の嵐

そしてやってくる午後9時から朝5時までのNYタイムゾーンは経済指標やFRB要人発言、直近では米国の債務上限問題に関する報道や地銀の破綻に絡む報道などが随時市場に登場してくることになるので、当然のことながらロンドンタイムでの取引ポジはできるだけこの相場が始まる前にスクエアにしておくことが必要になります。
経済指標は発表時間が決まっているためまずそれに注意する必要がありますが、それ以外の報道はやはりNYの現地時間の昼間に多くヘッドラインが流れるので、ここから6月のFOMCまでの期間は細心の注意を払う必要がでてくることになります。

また指標と相場状況がコンフリクトを起こして思わぬ方向に相場が走ることもありますので、こちらも要注意です。
たとえば15日に発表になった5月のニューヨーク連銀製造業景況指数は約3年ぶりの大幅低下となりドル円も大きく売り込まれることになりましたが、その一方で投機筋が日本円にして65兆円という凄まじい先物の売りをしている米債の利回りは10年債でも3.5%を割り込むことがなく、結局2時間もしないうちに135.710円まで下落したドル円は136円台に回復してNYタイムを終えています。
したがってNYタイムはそれまでの相場とは異なる動きになることとかなり覚悟して臨むことが大切で、ここでご紹介したように同じドル円でも別物相場として考えていることが求められます。

Data Tradingview

足元のドル円相場は実にその動きに影響を与える指標や報道、要人発言が多く、迂闊にポジション抱えていると大損を食らいかねない状況です。
利益がでれば利食い千人力とばかりしっかりリカクしてゾーンごとに別の相場として認識しながら前に進んでいくことが必須となります。
東京タイムからNYタイムまで同じポジションをもち続けるのは相当難しい時間帯になっており、少なくとも6月FOMCまではこうした用心深いトレードを続けていかなくてはならないようです。