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本邦のゴールデンウイーク終了以降、日経平均株価はみるみる上昇しており5月19日のザラ場では一時3万900円台に上昇することとなりました。
これは1990年8月以来実に33年ぶりの高値となっており、相場はまだ終息する気配がないことからさらに時間をかけて上昇することも想定される状況となってきています。

米株の不安定さを嫌気して分散投資として日本株に資金投入してきた海外勢

米株に方向感がなく様々なリスクに見舞われ始めている中で、これまでもっとも相関性の高かった日経平均株価が突然レンジブレークから上昇をはじめたことには幾つかの理由があるようです。

まず米株に比べて上昇の伸びしろが残されている日本株に分散投資の視点から大量に海外投資家の資金が流れ込んだのが上昇の起点となっており、それまで高値でショートにしてきた一部の海外ヘッジファンドと個人投資家が上昇に耐えられなくなって大量に買戻しをはかったことも相場の急激な上昇につながったとみられています。

ドル建てベースでの日経平均推移

上のチャートでも分かる通り、ドル建ての日経平均も過去3か月の推移では円安進行のお陰もあって3月末から徐々に上昇してきており、一段と投資のしやすい地合いが続いていることも上昇を加速させているようです。
米国FRBの利上げ停止および早期の利下げ転換の実施は米株市場では多くの市場参加者が望んでいる状況ですが、利上げは停止されたとしても利下げにシフトするまでには市場の期待以上の時間がかかることが現実になってきていることも日経平均への資金投入の追い風となっているようです。

バブル期につけた3万8000円台を34年近く超えられずに今日に至っているので、どこかでこの水準を回復することになるのは十分に考えられる状況ですが、ここから一気に4万円に到達するとは考えにくく、この相場がどこまで続くのか、あるいは3万円台が定着するのかどうかに大きな注目が集まります。

ドル円の円安が日経平均の上昇をもたらし、それがまたドル円上昇の好循環に

足元の日経平均の上昇はまずドル円の円安がそれを強くサポートすることになっているようですが、株価の上昇につれて海外投資家がヘッジで売っていたドル円を買戻していることからドル円は上昇を続けており、日経平均とドル円はあたかも正相関があるかのような動きをしています。
まさに好循環でのドル高円安相場という状況で、2013年アベノミクスが始まった当初株価の上昇とリニアにシンクロしながらドル円が大幅上昇した時期を彷彿とさせるものがあります。

外人投資家は大型株と半導体中心の買いで、全銘柄ベースでは半数が下落

日経平均の指数だけ見ているとすでに1500円以上も値上がりし爆上げ相場が続いているように見えますが、実は東証の株全体を見渡してみると半数以上が下落しており、マザーズも指数ベースで下落しているので全ての株が一気に買い上げられているわけではないようです。
個別株を買い向かう本邦の個人投資家も必ずしもこの大相場で利益を確保できているわけではないようで、指数は33年ぶりに上昇となっても株で儲かるわけではないという実にパラドキシカルな状況に直面しています。

とくに海外投資家は指数取引に加え、国内大型株と半導体を中心に買いを入れているので結果として日経平均だけが大幅上昇するようになっているのが実情で、米国の債務上限問題などが再浮上して米株が大きく下げるような局面に見舞われた場合、同様に下落していくリスクは依然として残る状況です。

なにより過熱感が凄まじく、一部のオシレータ系のテクニカル指標では完全に買いあがり過ぎが示現しているため、ここから近いうちに一旦終息の売りが出る可能性は高く、果たして押し目が3万円台で維持できるのかが大きな注目点になりそうです。
過去のケースから見ても一回のトレンド相場で5000円、6000円といった上昇が示現するのは極めて稀なため、3万1000円前後でピークを迎える可能性はあらかじめ想定しておきたいところです。

米国大手証券もせいぜいあげて3万円と見ていた模様

米国証券大手は日経平均のオプション取引のポジションをもっていますが、3万円が上昇限界と見込んでいたようで3万1000円に相場が近づいたことから売りの買い戻しを進めている状況です。
ただそれでも一旦は3万1000円レベルが上昇限界と見ている向きが多く、ここからは一旦押し目を作ることは想定しておきたいところです。

2021年の3万円台乗せ相場の場合、上昇から下落に転じたことで日経平均はあえなく2万円台に逆戻りを果たしているので、景気が特段良くもなく企業業績もそこそこという相場環境ではまたお馴染みの行って来い相場になるリスクは残ります。
過去20年のシーズナルサイクルから見ても夏場に向けては一方的に上がるトレンド相場は形成しにくいのが実情で、本質的な上昇トレンドを確立できるのかが5月後半から6月にかけての市場の大きな関心となりそうです。