5月第3週、135円を挟むような展開をつづけてきたドル円は一気に136円から上方向を目座すことになり、週末にはすでに138円台後半まで達しながら一旦下落して139円台後半で週の取引を終えています。
ただ、その強さは顕在でさらに上を目指す可能性は一段と高まりつつあります。

昨年154円を見ている市場参加者にとってはここで140円超となってもそれほど驚くべきものではありませんが、その上昇スピードが早すぎるだけに調整が出ることもあり得そうで、シンガポール勢、ロンドン勢などは売りにまわる時間も増えているため、取引タイミングによってはかならずしもロングがワークしない難しい時間帯にさしかかっていることを感じさせられます。
したがって疑心暗鬼の相場はまだまだ続きそうな状況になってきています。

ドル円の買い要因は米国時間に上がる米債金利と日本株買いのためのドル買い需要

Data Tradingview

現在のドル円の上昇要因は複合的な材料が絡み合っていることがわかります。
まずFRBが一旦停止するかと思われた利上げがその後のインフレ指標の悪化により、6月以降もまだ利上げは継続するのではないかといった悲観的な見通しが急激に強まることとなり、先週のドル円が上昇する大きな要因となったようです。
またNYタイムになるとこの利上げ予測に起因しているのか確実に米債金利も上昇する様になっており、瞬間的に米10年債利回りは3.7%をタッチする場面もみられるほどでした。

一週間の米10年債の利回りチャートを見ますと完全に右肩上がりをしめしており、これが強いドル円のドル買い要素となっているのは間違いありません。
またここへ来て日本株、とくに日経平均株価が大幅に上昇していることもドル円のヘッジ売り外しに動くことから結果的にドル高円安を示現することとなっており、ドル円が上昇、株価の割安感で日経平均も上昇し、それに起因してドル円がさらに買われるという好循環をもたらしていることが見えてきます。

パウエル議長発言と債務上限問題再燃で上値は一旦抑えられた状態に

5月19日、ワシントンでの講演に登場したパウエルFRB議長は6月の会合で、物価の上昇を抑えるための金利の引き上げを停止する可能性を口にしたことから、138円台を突き抜けそうになっていたドル円は一旦137円台に大幅に下落することとなりました。
パウエル議長はこの講演の中で、先月からアメリカで銀行の破たんが相次いだことなどにより金融市場の環境が引き締め的になっていると指摘し、物価の上昇を抑えるために続けてきた金利の引き上げを停止する可能性があることを明確に示唆することとなりました。

我々の目標達成のため、それほど政策金利を引き上げなくてもよいかもしれないといった議長発言はすかさずニュースのヘッドラインとして流れたことからドル円はいきなり上値を抑えられ逆に売込まれる状況になっており、果たして週明けこの相場がどう反応することになるのかが注目されます。

Data Tradingview

ただパウエル議長は言質をとられないためにどの程度の追加の金融引き締めが必要かはまだ決めていないとも述べ、ここから発表される経済指標を見て判断するといった発言もすかさずだしていますので、まだまだ指標で上下動する相場は続きそうな状況です。
パウエル議長の週末の一連の発言を受けてFedWatchの利上げ確率は大きく下げていますが、本当に6月FOMCがこのようになるのかどうかは依然として指標次第なので、まだまだその動きに変化がでることも想定しておいた方が良いでしょう。

また順調に交渉が進んでいるといった報道がでていた米国の債務上限問題は19日にも行われましたが、与野党の隔たりが埋まらず、共和党の担当者は途中一時退席したなどというニュースのヘッドラインが出る度に株は下落する形となり、ドル円にも影響を与えています。
バイデン大統領は引き続き楽観的な見通しを口にしていますが、米国財務省が議会による上限の引き上げがなければ6月1日にも資金繰りに行き詰まり、国債の利払いが難しくなるとした見通しはまだ生きており、10日も時間がなくなってきていることからこの材料でも相場は下落リスクを高めることになりそうです。

Data CME

テクニカル的にはドル円140円が射程圏内に

テクニカル的にはすでに139円手前まで上げてきているドル円がさらに上を狙う可能性は高い状態ですが、流石にペースが早いのとロングが荷もたれしやすい時間帯となることも考えられるため、デイトレでも相当慎重なポジション作りが必要になりそうです。

Data Tradingview

ユーロドルもドル主導で下落の相場状況か

一方ユーロドルは4月以降1.11000超えのトライをすでに3度行っていますがどれも失敗に終わっており、逆にドルが強含み始めていることから1.0760という安値をつける展開となっています。
足元では一目均衡表転換線、基準線、21日移動平均線、90日移動平均線、ボリンジャーミッドバンド、雲上下限といったテクニカルポイントをどれも下抜けるというかなり珍しい状況になっているので、よほど特別なことがないかぎりドル高方向に下落していくことが予想されます。
本来はもっと強い上昇展開を期待しましたが、先週一週間で見てもだらだら下落する相場が続いており、ユーロ高方向への展開はまたお預けになりそうな気配です。