FRBは昨年から、インフレは一時的との見方を変え急激に利上げを続けてきましたが、これにより金融市場では大きな問題が顕在化し始めています。

ほぼゼロだった金利が5%越えまで上昇したことにより、まずは不動産関連の市場で不都合な影響が出始めています。

米国住宅ローン担保証券(MBS)は大幅下落、米30年物固定住宅ローン金利は8%超に

影響が顕著になっているのは住宅ローン担保証券(MBS)の市場で、金利は大幅に上昇しその価格は大きく下落し始めています。

米30年物固定住宅ローン金利が2007年以来の高水準となる中でのMBSのスプレッド拡大は、長期利回りの安定化を期待し購入した投資家に打撃を与えています。

1%金利が上がっただけで額面が30%程下落するというのは日常茶飯事で、低金利の時に良かれと思って購入した投資家たちの悲鳴が聴こえてきそうな状況です。

 

 

特に米30年物固定住宅ローン金利は過去23年間、つまり今世紀に入ってから最高値となる8%越えの水準に達しており、同証券の購入者が抱える含み損は相当な額に膨れ上がっているとみられます。

2023年後半から2024年にかけて金利が下がると期待されていた2%や2.5%のクーポンモーゲージ債の価値も下落している状況です。

今年4月に発生した米国地銀の破綻は記憶に新しいところですが、このMBSはゼロ金利の時に投資先に迷った米国の銀行が大量に購入しているため、更なる連鎖破綻が発生するリスクもあります。

米国でも額面から3割以上の含み損が出た場合は、決算報告に開示する必要があるため、今後新たな損失が明るみに出てくる可能性もあります。

額面が半分程度に下落した米30年債も

債券金利の上昇と価格の大幅下落はMBSに限った話ではなく、米30年債のような長期債も今年に入ってから金利上昇に歯止めがかからない状況となっています。

 

米30年債金利は過去5年で最高水準に

 

2020年頃に購入した30年債は、金利の上昇により額面がすでに半分ほどに下落しており、満期保有なら問題はありませんが、それを担保に資金を引き出すことは非常に難しい状況となっています。

担保として差し出している証券の金額が激減すれば、追証を求められる可能性があり、米国金融市場では多額のマージンコール発生を懸念する声が上がっています。

2008年に破綻したリーマンブラザーズは、担保として活用していた資産が減少したものの、追加担保の差し入れを行うことができずお取り潰しに合っているだけに、マージンコールへの警戒感はひとしおです。

イスラエル情勢の影響により米債利回りは総じて下落傾向に

米10年債一か月の推移

先週末に発表された9月の雇用統計では、米国非農業部門雇用者数(NFP)が市場予測をはるかに上回り33万人超を記録したことから、市場では年内の追加利上げを織り込み米債金利は上昇、ドル円も上方向に動くこととなりました。

しかし7日に、突然ハマスがイスラエルに対し攻撃を開始し事実上の戦争状態に陥ってからは、FRB高官から利上げ終了を示唆するハト派的な発言が相次ぎ、米債金利は下落傾向にあります。

ここ最近、短期間で大胆な宗旨替えが進んでおり、ここからイスラエルの戦争状態が本格化すればドル買いや米債買いが進むことが予想され、結果的にドル円はさらに下落する可能性もあります。

米債金利が利下げに踏み切らないまでも低下気味に推移すれば、市場のマージンコール対策としてワークすることになるのでしょう。

しかしこのイスラエルとハマスの対立に、イランと米国、アラブ諸国がどこまで関与してくるかによっては大規模な戦争に発展する可能性もあるため、今後の米債金利と為替相場の動向には予断を許さない状況が続いています。

いずれにせよゼロ金利の時代とは明らかに状態が異なり、市場にさらなる悪影響が及ぶ可能性もあるため、いつも以上に慎重にトレードを行う必要があります。

150円目前のドル円もこれまで本邦金融当局の介入が最大のテーマとなっていましたが、ここへ来てセンチメントが大きく変わり始めている点にも注意が必要です。