新型コロナの流行からすでに3年の歳月が過ぎ去ろうとしていますが、初期に都市部でロックダウンを繰り広げた中国は今も相変わらずいきなり都市封鎖をするという手法でゼロコロナ対策を実施しており、さらなる都市部のロックダウンが市民の猛烈な反発を受ける状況になっています。

日本でもですが3年という期間を経てどこの国でもほとんどの国民は新型コロナ感染の問題に飽き飽きしており、感染当初の時期のように緊張感をもってコロナに対応することができなくなっています。
それは中国でも同様の状況ですが、足もとの上海では4月に急増した際の感染者数を簡単に上回る状況ですでに中国全土で感染が再拡大する悪化の事態に陥っており、複数の主要都市で再度ロックダウンによるゼロコロナ対策が施行されています。
その封鎖都市は中国全土の20%を超える状況のようで国民の不満は過去にないほど高まりを見せています。

新型コロナ対策に関しては西側の主要国はとうとうワクチン接種のみを選択するだけで国によってはもはやマスクもせずに元の社会に戻ったかのような状態ですが、感染者が激減することはなく、いわゆるウィズコロナの状況を継続せざるをえないところにあります。
しかし中国は依然として西側諸国が開発したワクチンの導入を拒んでいるのが理由なのか、感染者数は全く減る見込みがないまま推移しています。
中国政府は自国開発のワクチンと都市封鎖による感染の押さえ込みにいまさらながら躍起になっており、これが国民から猛烈な反発を受ける要因になっています。

フォックスコン河南省iPhone工場では大規模な抗議行動も発生

米アップルのスマートフォンiPhoneの組み立てで有名な中国河南省鄭州市にある台湾・鴻海科技集団(フォックスコン)の工場では、今年10月末に新型コロナの感染拡大で従業員が不足する事態に陥りましたがその数は充足しておらず、既存の労働者らが待遇改善を求めて抗議デモを起こす状況になっており警察当局との激しい衝突も報道されています。
この抗議活動のため11月のiPhoneの生産台数は予定の3割減少する可能性も出ており影響は世界に広がりを見せ始めています。

これは米国をはじめとして西側諸国には広範なニュース映像として流れたことから中国国内でゼロコロナ対策が全くうまくいっていないことを知らしめる結果となっており、それがまた習近平の怒りを買う状況になっているようです。
今のところクローズアップされているのはこのフォックスコンだけに見えますが、他の地域でも同様の問題が起きている可能性は高そうで、引き続き事態の推移を細かく見守る必要がでてきています。
北京や上海でも相当異例の抗議デモが連日繰り広げられているようです。

Photo FNNプライムオンライン

中国経済の減速はすでに免れない状況に

こうした今更ながらの中国全土のロックダウンにより中国経済は減速し、今年第4四半期と通年の同国の成長率は3%を下まわるという観測もではじめており、今年のGDP目標値の5.5%には遠く及ばない可能性が出始めています。
どれだけ国民の反発を招こうとも強引に都市封鎖を実行して当初から想定されてきたゼロコロナ政策を断行することになると思われますが、既にこの影響は金融市場にも色濃く表れはじめており、ここからのトレードには相当注意が必要になってきています。

とくに中国起因でサプライチェーンが再度崩壊するようなことになれば世界経済にも大きな影響を与えることになり、足もとではそれを誰も織り込んでいないことが非常に危惧される状況となってきています。
西側諸国にとっては実に余分なリスク要因が顕在化しつつあるわけですが、もはやそれをスルーするわけにはいかないところまで事態が悪化しつつあるようです。

リスクオフ、原油安、資源通貨安で円高が進む可能性も

金融市場では中国経済の減速懸念から原油安が既にはじまっており、中国株の下落に相関する形で豪ドルなどの資源国通貨も下落しはじめています。
また、なによりリスクオフが進んでいることからドル買い、円買いも始まっており、これまでの米国FRBの利上でだけが材料ではなくなりつつある点がトレードの難しさを増しています。

3年前の新型コロナ感染では当初中国全土で感染が広がっても米国などはどこ吹く風の状態で、自国で感染者が爆発的に発生したことをきっかけにして2020年3月に相場が大暴落に陥ったことは記憶に新しいところですが、今回の中国によるゼロコロナ政策断行が世界の金融市場にどこまで影響を及ぼすことになるのかがここからの大きな関心事になりそうです。
世界的に急激に景気減速が加速した場合、FRBがここからの利上げを一体どうするのかについても大きな影響がでるだけに非常に重要な局面を迎えていることがわかります。

すでに都市封鎖というやり方では感染者を完全に封じ込めることができないのは中国共産党もわかっているはずですが、どうしてそれを貫こうとするのかは不明で、このままこうした政策を続けていくと習近平と国民の深刻な対立につながるリスクも高まりそうで、今後の動きから目が離せません。