3月第二週は、日銀現役審議委員の発言を受け国内外の通信社が3月の日銀会合でのマイナス金利解除の現実性が高まったと報じたことで、為替相場は一変し急激な円高相場となりました。

これにより、日銀政策に関する国内投資家と海外投資家のセンチメントには、大きな乖離が生じていることが改めて浮き彫りとなりました。

昨年末から年明けにかけて植田総裁や内田副総裁、そして高田審議委員や中川審議委員などの面々が、国会や講演、メディアの記者会見で積極的に発言を行ったことにより、日銀がマイナス金利の解除だけは早期に行い、その後は緩和政策を維持していくという意向が伝わったようです。

これにより、マイナス金利の緩和は0.1%の利上げに留まり、社会的影響はそれほど大きくはないという認識が定着しました。

実際に植田総裁は、年初の1月の政策決定会合で、マイナス金利の解除だけは実施する意向であったと報じられていますが、能登半島大地震の影響もあり実施は3月以降にずれ込む結果となっています。

3月は日本国内の年度末決算期にも当たるため、春闘の結果が明確になる4月の会合でのマイナス金利解除が、より可能性が高いと見込まれていました。

しかし、高田審議委員や中川審議委員の発言を受け、3月にもマイナス金利を解除するのではないかとの情報が広まり始め、ロイターもそれを支持するかのように「日銀マイナス金利解除支持に広がり、昨年上回る賃上げ期待」というヘッドラインを配信したことで、一気に円高が加速する展開となりました。

さらに、8日には日本の時事通信社がロンドンタイムに「国債購入、規模明示へ YCC撤廃、新「量的」枠組み―円滑な緩和正常化で・日銀検討」という観測報道を行いました。

この報道により、同日のニューヨークタイムでは、月に一度の重要な雇用統計発表があったにもかかわらず、ドル円相場は一時146円台中盤まで押し下げられるという急激な変動が見られました。

実際の日銀会合では、一人の審議委員がマイナス金利解除を提案しても、審議委員5名の賛成が得られなければ実施には至りません。

しかし直近では、1名の審議委員が提案したのを皮切りに、それに賛成する向きが増加しているとの報道もあるため、19日に行われる会合に大きな注目が集まっています。

日銀現役関係者の発言は、そのトーンに強弱はあるものの、異なる内容が公言されたわけではありませんが、海外投資家には日銀によるマイナス金利解除が3月に確定したものと受け止められました。

一部の調査によると、ほぼ8割の海外投資家が日銀による本格的な緩和解除が3月からスタートするとの見方を強めているという情報もあります。

3月の会合で海外勢の期待を裏切る結果となれば円安が急激に進行するリスクも

今回の日銀によるこうしたコミュニケーションは、関係者のリークから醸成されている部分も多いため、市場に対し意図的に行われているであろうことは間違いありません。

しかし、ここまで日本勢の解釈と海外勢の織り込み内容に乖離が出ている状況は異常であるため、3月の会合で海外勢の期待を裏切るような結果となった場合は、円安が急激に進行するリスクが高まります。

まず、3月にマイナス金利の解除が見送りとなれば、激しい円買いの巻き戻しから、ドル円は150円レベルまで戻ることが予想されます。

仮にマイナス金利の解除が実施されても、国債の買い入れはYCCを撤廃しても継続される見通しであり、今年の利上げに関しては当分様子見が続くとみられます。

緩和巻き戻しの期待からかけ離れた政策が具体的に発表されれば、失望感から円安が再度進行する可能性が高まります。

週明けのドル円はさらなる円高を目指すか

先週一週間のドル円の動き

 

先週、146円台中盤まで下落したドル円は、週明けも日銀のマイナス金利解除への期待からさらに下落することが予想され、場合によっては145円割れ近くまで進み、19日の日銀会合に臨むことが予想されます。

現状は147円の水準でも、日本勢にとっては相当な円高感がありますが、日銀会合までにはまだ一週間以上の時間が残されているため、その間にオーバーシュート気味に円高が進行する可能性もあるため十分な警戒が必要です。

どの水準で日銀会合を迎えるかにもよりますが、市場の期待と大幅な乖離が生じれば、短期間で約3円ほどの巻き戻しが生じ、それに追随する参加者も増える可能性があります。

年度末には円高が進みやすい傾向があるため、その中で相場が逆行する材料が示現した場合、先行きを予測することは非常に困難になります。

したがって、今週はいつも以上に注意深く相場動向を見極めていく必要がありそうです。

ユーロドルはドル安の影響により上昇相場を引き継ぐか

先週一週間のユーロドルの動き

 

ユーロドルはドル安となれば確実に上昇するため、ドル円のような複雑な要因を考慮する必要は少なく、先行きは予測しやすくなります。

先週は、週の後半に向けて上昇トレンドが続いており、週明けもこの流れを受け継ぐかどうかを意識したトレードを心がけたいところです。

週を通しては、下値が1.0800レベル、上値は1.1050辺りまでの上昇が考えられるため、上昇トレンドに追随する姿勢が重要です。

日米における株式の高騰に隠れて久しく動きの乏しかった為替相場ですが、日銀会合の観測をきっかけに突然激しく変動するリスクが高まっています。

相場が上昇するにしろ下落するにしろ、追随するしかない状況にあるため、リアルな相場の動きをしっかりと把握することが大切な一週間となりそうです。