8日、AI関連市場を単独で牽引してきた米半導体メーカー NVIDIA の株が、7営業日ぶりに反落しました。

大幅に上昇した後、一時的な調整が入ることは、2000年のITバブル崩壊以来、何度も見られた光景であり、企業の成長速度と株価は必ずしもシンクロするとは限らないため、株式相場全体の地合いが悪化すれば一時的に下落することはよくある話です。

ただ、現在のNVIDIA株は池の中で大きなクジラが回遊しているような、時価総額の観点から見ても突出した存在と言えます。

それだけに、わずかな異変の発生により膨大な影響が生じる可能性はこれまでも危惧されてきましたが、足元ではその異変が現実のものとなりつつあります。

7営業日ぶりに反落したNVIDIA株は、ここ9カ月で最大となる5.6%の下落を記録しており、この1日だけでも、市場では約1300億ドル(日本円にして約19兆1200億円)の時価総額が一気に消失したことになります。

NVIDIAの時価総額は、今年に入ってから1兆ドル(日本円にして147兆円)以上増加しているため、仮にこれが全値戻しということになれば、東証プライムの時価総額の20%が吹き飛ぶことになり、株価指標にも非常に大きな影響が及ぶ可能性があります。

NVIDIA株の反転により、株価指標も当然悪化することが予想されますが、現時点ではアップルやアルファベットなど主要株にまで下落が波及するには至っておらず、これから月末に向けての市場動向が注目されています。

 

Data KOBEISSILETTER

相場下落はまだ序の口、懸念される市場全体への影響

5.6%の下落はあくまで終値であり、前週には1日で5%以上上昇した日もあったことを考えると、1日の下落幅としてはそれほど驚くべきものではありません。

しかし、実際にはザラ場で瞬間的に10%以上下落することになっているため、市場参加者は気が気ではない状況が続く展開となりました。

相場の下落は、後で振り返ると心配は稀有に終わることが多くありますが、巨大銘柄の大幅な下落は、今後相場に更に大きな影響を与える可能性があります。

 

 

NVIDIAにおける今回の下落は、1年間の上昇を振り返ってみると微々たるものです。

しかしながら、今後更に何らかの決定的なマイナス要因が発生すれば、今回の比ではない規模の下落が発生することが予想されます。

AI関連銘柄が将来的に高い需要を受けることは間違いなく、市場はその需要が売上や収益に反映されるのはこれからであると見られますが、過度に楽観視もしていられない状況になりつつあります。

ここからは、これまでに示現しなかった相場状況に直面することも想定しつつ取引を行う必要がありそうです。

IT株は企業の成長度合いとは無関係に市場状況に大きく左右されやすい存在

2000年のITバブル崩壊時にも見られたように、IT企業というのは成長の度合いこそ図られるものの、株価はそれとは独立し市場状況に大きく左右され、下落するという状況がよくあります。

このような状況では、株式指標に組み込まれていること自体が大きなリスクとなるため、米国の主要金融機関も現在の状況がバブルなのか、それとも異なる何かなのかについて議論を開始している状況です。

池にクジラを放し飼いにしているような状況は、思わぬ暴落を引き起こしやすくなりますが、そもそも短期間にこれほどの巨大な時価総額を軽々と生み出す企業が生まれることは、誰も全く想像をしていませんでした。

膨れ上がった時価総額が自然に消滅すれば、これまでにない程の相場暴落に直面する可能性もあります。

巨大株の暴落や株価指数の急落に備え、株式分割を迅速に実施するなど、様々なリスク管理を導入することが求められますが、仮に時価総額大手のマイクロソフト、アップル、NVIDIAが揃って大幅な下落に見舞われた場合は、2008年のリーマンショックの全米不動産バブル崩壊を超える相場下落に直面するリスクも考えられます。

さらに皮肉なことに、数値とテキストのみで判断するAI実装のアルゴリズムが、このような相場下落に極めて敏感に反応し、暴落を加速させる可能性もあります。

株式指数をベースとした取引は、過去20年で驚くほど増加しており、その成長率は多くのヘッジファンドにとって基本的な利益のベンチマークとして認識されています。

そのため、時価総額が膨れ上がったガリバー企業が他の一般的な企業と同じ相場にリストされることは、相場の上昇局面では新高値を達成しやすくなりますが、下落局面ではあまりにも不自然であり、特に株式指数に過大な影響を与える可能性が懸念されます。

巨額のAI関連企業の時価総額株価の下落はまだ始まったばかりであり、現在のところ実体経済への大きな影響は見られません。

しかし、将来的には予期せぬ事態が発生する可能性もあるため、それに備えて注意深く取引を行っていく必要がありそうです。