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11月の米大統領選に向けた共和党の候補者選びで15州・1地域の予備選などが集中する「スーパーチューズデー」の投票が行われ、トランプ前大統領が14州で勝利するという圧倒的優位な結果となりました。

これによりトランプ氏の勝利が確定したわけではありませんが、党内の競争相手が消滅したことから、バイデン大統領対トランプ前大統領の決戦対決となる可能性が濃厚になりました。

一方のバイデン大統領は、一般教書演説を行っていますが、その内容は比較的控えめであり、演説自体にもよどんだ雰囲気が漂っており、支持率の低さを物語る状況となりました。

市場では「もしトラ(もしもトランプ氏が大統領に返り咲いたら)」が、「ほぼトラ」になったと見る向きも増えており、トランプ大統領復活の可能性が高まりつつあります。

トランプ前大統領は現在、自身が1947年生まれであることにちなんで「アジェンダ47」と題した政権公約集を公表しています。

アジェンダ47では、具体的な事象に対する行動が挙げられているため、トランプ前大統領が実際に政界に返り咲いた際の行く末が、徐々に見え始める状況となっています。

アジェンダ47についてはトランプ氏の公式サイトをご参照ください。

バイデン政権の政策を根底から覆す3つの公約

トランプ大統領選の公約は、バイデン政権が過去4年間に実施した政策を根底から覆すことになると考えられます。

具体的な詳細はまだ明らかにされていませんが、大まかな方向性としては次のような内容が示されています。

 

  • ウクライナ戦争の終結

トランプ氏が再当選した場合、最も期待されるのがウクライナ戦争の終結です。

対立する国に対しては攻撃的な姿勢を見せるトランプ氏ですが、前回の大統領任期中に米国は一度も戦争に加担していません。

そもそも戦争嫌いであるため、バイデン政権が裏で糸を引いたとされるウクライナ戦争も、即座に終結する可能性が高いと見られています。

先日、2014年のウクライナ革命以来、裏で画策してきた人物として知られるビクトリア・ヌーランド国務次官補の辞任が発表されました。

これにより、バイデン政権下でのウクライナに対するアプローチが見直され、ロシアとの関係性にも大きな変化が訪れるのではないかとの見方が強まっています。

ヌーランド氏は役人でありながら、2014年にウクライナで発生した革命で、当時大統領であったのヴィクトル・ヤヌコーヴィチ氏が失脚しロシアへ亡命した後、米国寄りの傀儡政権の樹立や臨時大統領の選出を完全に仕切った人物であるとされています。

彼女は、2019年のゼレンスキー大統領の就任にも関与したと言われています。

2014年のクーデターに米国が関与していたことは、当時の大統領であったバラク・オバマ氏も公言している事実です。

親米政権の樹立はまさに米国の差し金であり、表立って活動する諜報部員ではなく、国務省の役人がこの大役を担ったことも興味深い点です。

ヌーランド氏はこの10年余りで、日本円にして約30兆円の国費をウクライナに投入したとされており、その資金の使い道については現在国務省やCIAが調査中と見られています。

これが大問題へと発展すれば、バイデン政権にとってもかなり大きなダメージとなることは間違いありません。

トランプ氏は、再びNATOへの拠出を停止し脱退する意向も口にしているため、トランプ氏の再任は欧州圏にとって重要な問題となることは間違いなく、ロシアと西側諸国の関係にも変化をもたらすことが予想されます。

 

  • 自動車、エネルギー産業の保護

バイデン政権が誕生してからというもの、グリーンエネルギー政策と称して、特に電気自動車(EV)の普及推進や、よりクリーンなエネルギー採用へのシフトが進められてきました。

しかし、実のところ成果はそれほどあがっておらず、EVに関しては膨大な補助金の投入が普及を後押ししているに過ぎない状況となっています。

トランプ氏は、自国の産業保護主義を再び推進したい意向であり、特に自動車産業や国内エネルギー産業に再び焦点を当てる政策を実施することが予想されています。

 

  • 自国産業を守る関税の復活

ほとんどの外国製品を対象とした「普遍的基本関税」の導入や、中国に対する最恵国待遇の撤廃など、トランプ政権に実施されていた関税政策も再び実施されることが予想されます。

バイデン政権下で対中関係が悪化する中、関税による対立が再び激化するかどうかは不透明な状況ですが、かつてのトランプ政権が復活することは間違いない状況です。

強い米国でもプラザ合意2.0のようなドル安政策へのシフトも

米国にとって34兆ドルにも膨れ上がった連邦債務は、頭の痛い問題となっています。

景気が悪化した途端にドル安に政策転換するのが米国の伝統的な政策と考えれば、トランプ氏は1985年に実施されたプラザ合意の焼き直し版である「プラザ合意2.0」を持ち出し、一転してドル安政策が採用される可能性もあります。

発行される国債の相当部分が、海外の投資家や周辺国に売却されており、ドル安政策は事実上借金を減額する効果をもたらすため、トランプ氏就任後にリセッションが強まれば、この政策が実施される可能性は高まります

現時点では、トランプ氏の再選が確定したとまでは言えない状況ですが、スーパーチューズデーの結果から、市場ではトランプ氏再選の可能性は非常に高いとの見方が強まっています。

そのため、トランプ氏の今後の発言は今まで以上に大きな影響力を持つことになりそうです。