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米国大統領選の統一候補は、民主党がバイデン大統領、共和党はトランプ前大統領でほぼ確定したようで、市場では早くも、「もしトラ」から「ほぼトラ」や当確実の「確トラ」がささやかれ始めています。

国賓扱いで訪米し議会演説を行いすっかりご満悦の岸田首相と、市場との間には大きな認識のずれが生じ始めています。

一方で自民党の麻生副総理は、「確トラ」への備えからか、ニューヨークを訪れ、現地でトランプ前大統領と会談する方向で調整を進めています。

 

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訪米から帰国後、国会で「確トラ」について問われた岸田首相は、「日米同盟の重要性は民主党、共和党を問わず共通の認識が存在しており、大統領選の結果が影響を及ぼすことはない」との発言を行いました。

しかし今回の大統領選で、バイデン大統領が敗北を喫した場合、これまで米国に言われるがままに行動してきた日本は、悪化したロシアや中国との関係を今後どう修正していくのかが課題となりそうです。

岸田首相は、国内での支持率がどれだけ低迷しても、バイデン政権の支えがあれば政権を続けられると楽観視しているようですが、その梯子を外されたとなれば、政権の存続も危うい状態となりそうです。

トランプ氏が返り咲けばウクライナ戦争は終結、イスラエルとの関係性にも変化が現れるか

トランプ前大統領と言えば、現在複数の訴訟を抱えており、日本ではカネさえ積まれれば某宗教団体の祝賀ビデオにも出演するなど、無節操な振舞いをする人物として有名です。

ただその一方で、戦争嫌いとしても知られており、実際に前回の在任期間中にはどこの国とも戦争をしませんでした。

それだけに、トランプ大統領が返り咲けば、ウクライナとイスラエルに対する対応にも大きな変化が現れるのではないかとの見方が強まっています。

ウクライナ敗戦で戦争を終結させる可能性も

まずウクライナ情勢に関しては、トランプ大統領が再選すればウクライナへの支援は全面的に打ち切られることはほぼ間違いありません。

それだけに留まらず、ウクライナの領土を割譲しその一部をロシアに提供するというオペレーションを行い、無理やり戦争を終焉させるつもりのようです。

そうなればウクライナも、2014年に民主党政権下で擁立された米国寄りの傀儡政権も終了となり、ウクライナの情勢は大きく変わることが予想されます。

ただ、岸田政権はこうした事態を全く想定しておらず、バイデン大統領に言われるがまま資金提供を行い、戦後の復興に関する会議体まで立ち上げている状況です。

下手をすれば、ウクライナの一部がロシアの領土として復興することを援助するといった奇妙な行動をも起こしかねません。

最も懸念されるのは、世界各国が米国に言われるがままに融資した資金の債務保証(借金が返済できなくなった場合に我が国が肩代わりすること)を行う立場となることです。

ウクライナが敗戦に近づけば、ロシアが資金を持つことになり、日本がその借金を肩代わりするという最悪のシナリオが展開される可能性さえもあります。

米国がNATOを脱退すれば西側の安全保障構造は崩壊か

本来、極東に存在する日本は、西側諸国の安全保障に積極的に関わる必要はないはずですが、この4年の間、日本は米国の属国状態となっているのが現状です。

しかし、トランプ前大統領が大統領に返り咲いた場合、米国はNATOから脱退する可能性も出始めており、寄らば大樹の影とばかり米国に便乗してきた日本が、突然大樹を失いNATOとの関係を模索せざるを得ない状況に陥ることが考えられます。

米国がいたからこそ強化することができていた関係性を、米国抜きで成立させることが大きな課題となり、やり方次第では西側諸国からの信用を失うことにもなりかねません。

米国に追随しイスラエルを支持した日本は国際社会で孤立する可能性も

寄らば大樹の影という視点で、もう一つ大きな問題となっているのがイスラエル情勢です。

ここのところイスラエルのネタニアフ首相は、長年支援を受けてきた米国の言うことに聞く耳をもたず、この状況に業を煮やしたバイデン大統領は、イスラエルをいなす動きに終始し始めています。

イスラエルの右派のパレスチナに対する攻撃行動は、全く擁護・容認などできるものではありませんが、日本政府は米国の意向に従い、イスラエルが報復攻撃を受ければイランを批難する姿勢を続けています。

しかしトランプ政権が再始動すれば、米国はイスラエルの支持を取りやめイスラエルを切り離す行動に出る可能性もあります。

そうなった場合、虎の威を借る狐である日本は、反米国際社会の中でどのような立場に置かれるのかが心配されるところです。

 

戦後日本は、ロシアや中東諸国に対し戦争に加わらないという独特の立ち位置を形成し、良好な外交関係を構築していた時代もありました。

しかし、とりわけ安倍政権から岸田政権に移行する際は、米国の外交政策をそのまま丸呑みし、米国が批判すれば日本もそれに追随してきたため、バイデン大統領が敗北となれば、日本が国際社会から孤立する可能性は高まります。

そうなれば、ウクライナやロシアとの向き合い方や、イランを始めとする中東諸国との関係性も見直す必要がありそうです。

金融市場や実体経済にも大きな影響が及ぶことは必至となるため、今後の岸田政権の対応が注目されます。