金融市場はすでに米国FRBがいつテーパリングに乗り出すのかが最大のテーマになりつつあり、良好な経済指標がでるたびにテーパリングが早まるという観測がメディアで語られるようになっています。
しかし現実には今日、明日ですぐにテーパリングが始まるなどという兆候は全く見られず、こうした憶測を思わせること自体が短期投機筋の戦略なのではないかと思うぐらい相場の様子はおかしくなりはじめています。
また各国中銀の政策方向のコントラストでその国の通貨が売られたり買われたりする状況になっており、政策金利自体で相場が動くということがなくなりつつあることも非常に奇異に感じられるものがあります。
ただ相場がすでにその方向で動くようになっているため無視することは出来ず、この中銀間のコントラストを重視し取引きすることがが必要になってきています。
伝統的な手法で利上げが進みそうなのがRBNZ
主要国の中ではカナダが既に利上げに踏み切っているのはご案内の通りですが、アングロサクソン系の国は比較的伝統的な政策手法をいち早く持ち出してくることから英国、オーストラリア、ニュージーランドなどが利上げに手をかけるのではないかと注目されてきました。
しかし英国中銀はメンバーの入れ替えでかなりハト派色が強まり、足元ではポンド売りの材料になってきていますので注目されるのはむしろ住宅価格が飛びぬけて上昇しているニュージーランドの利上げということになりそうです。
ニュージーランドの場合、このまま放置しておくと住宅が高くなりすぎて自国民が全く住めなくなるといったかなり深刻な事態に追い込まれているようで、大英帝国系の国の中ではもっとも利上げが先に行われることが予測されています。
オーストラリアも似たような状況ではあるようですが、深刻なのはやはりニュージーランドということで7月についてはこの通貨の動向に注目したいところです。
米国は本当に早期テーパリング実施するかどうかかなり不明な状況
米国経済はコロナからの回復もあり人件費ひとつとってもコストプッシュインフレになりかねない状況で、市場では明日にでもテーパリングがはじまるかのような動きになっています。
しかし現実にはホワイトハウスは大規模な政府予算を執行させることを含めてFRBが緩和をやめて利上げする方向に動くことを簡単に認めるつもりはないようで、2022年以降も任期を伸ばせるかどうかの瀬戸際にあるパウエルFRB議長も政権と著しく親和性の欠けるような政策を簡単には出してこないという見方も強まっています。
ただ早期テーパリングや利上げはもはや規定路線であるかのように扱われはじめていますので、この政策とのコントラストがある中銀をかかえる通貨はどうしても売られやすい状況になりそうで、実際の金利の推移とはまったくかけ離れてこうした動きが顕在化することには注意が必要になってきているようです。
その一方で利上げを行わなわないといった事実が判明した場合には激しく売込まれることになるのは明白で、各国の債券金利よりもあくまで政策意向に注目していくことが肝要になりそうです。
実際、米ドルはこれまで10年債利回りとの正の相関が強かったものの、足元では5年債や2年債の利回りを非常に意識するようになっていますし、こうした金利が下げても必ずしもドルは売られないという特殊な時間帯に突入しています。
こうした動きはどんなに不可解であると思っても相場に参加するものが殆どそう思い込んでいるうちは簡単には解消しないのが現実で、おかしいと思っても受け入れざるを得ない状況が続きます。
リアルな金利差が通貨ペアの動きに全くワークしないというのも違和感のある話ですが、中央銀行バブルの最終局面である今の相場にはこうした歪みもでるということは理解しなくてはならないのかも知れません。